2018-02-01
伊藤亜人 (著) 北朝鮮人民の生活--脱北者の手記から読み解
北朝鮮人民の生活--脱北者の手記から読み解く実相 (日本語) Hardcover – May 12, 2017
by 伊藤亜人 (著)
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内容紹介
ニュースには現れない北朝鮮の「見えない人びと」はいったいどのように暮らしているか。
その疑問に果敢に挑んだのが50年近く韓国研究に打ち込む文化人類学者。
フィールドワークが出来ない北朝鮮で人類学的研究をするために取った方法は、脱北者に自らの「北」での経験を綴らせた手記をフィールドノートの代わりにすること。その数は450編に及んだ。
国際政治で話題に上がる割に内部の状況が分からない北朝鮮社会は、社会主義公式体制を維持するために膨大な非公式経済によって支えられている実態を確かな情報に基づいて解明する。
内容(「BOOK」データベースより)
「生き永らえる奴が英雄だ」危機にさらされながらも生き抜く、民衆の実像99編の手記を収録。
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5.0 out of 5 starsさすが伊藤先生。北朝鮮人民の手記99篇をまとめた力作
October 15, 2017
著者は文化人類学者で、東大名誉教授。元々韓国の珍島などの研究で有名だが、現在は脱北者の手記を活用した北朝鮮社会における民衆の生活実態について研究している。
本書は、過去3年間にわたって手記の書き方の指導から始めて収集した450篇近くの脱北者の手記から、99篇の手記を収録している。脱北者は概ね年長者が多く、主に咸鏡北道出身者が多いという。
内容は、全12章で、住民と社会統合(成分や障碍者の扱い方)、社会主義化、組織生活(家庭、党、社会主義労働青年同盟)、少年団、女性同盟、人民班)、産業政策、共同農場、食料や住宅の供給体制と収買事業、自力更生と副業、私用耕作地、市場(チャンマダン)、タノモシ(頼母子)、盗みについての11章と、終章として北朝鮮社会の特異性と普遍性を簡単にまとめている。
脱北者の手記というと、個人の手記は色々なものがあるが、民衆生活を焦点としてこれだけの量を集めたものは日本語ではなかなかないのではと思う。複数人を対象にした調査だと、Haggard and NolandのWitness to Transformationが有名だが、同書が脱北者に対するサーベイという定量調査を行ったのに対し、本書は個別の手記という定性的な記述で実態を明らかにしようとした点で注目される。
イデオロギー色は特になく、手記が冷静にまとめられている点も好印象。
個人的には、自力更生と副業、市場、日本語に由来するタノモシあたりの章が、何としてでも生き残ろうとする北朝鮮住民の生の生活をよく伝えていてとても興味深かった。
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4.0 out of 5 stars文化人類学者の視点からの北朝鮮分析
August 1, 2017
脱北者たちの手記などを通じての北朝鮮分析。著者は文化人類学者。その視点から北朝鮮の人民の生活を分析検証。
新聞記者やジャーナリストたちが「招待」されたり、表面上の観察をしただけで、「地上の楽園」と報じたことがかつてあったが、その実態は恐るべき「地上の地獄」?
例えば、平壌は特別な空間とされていて、北朝鮮を訪問する人は平壌を見て評価するので、平壌には精神的にも肉体的にも元気な人だけが住むようにしなくてはならないという独裁者の方針から、平壌市内には障害者が住むことができなくなり、家族の中に一人でも障害者がいれば原則として家族全員が地方に追放されるという。おやおや…。恐ろしい反福祉国家があったものだ。しかし、かえって、平壌に住むより追放された田舎のほうが心身ともに楽になれたりもするという。
人生、万事塞翁が馬、禍福はあざなえる縄の如し……ということか。生きている限りは、まぁ幸せになりうる…。
とはいえ、北朝鮮や中国という「ビッグブラザー」が君臨する「地」に生まれなくてよかったとは思う。
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