2019-12-19

日本人の右傾化はどこまで進むのか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)



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日本人の右傾化はどこまで進むのか

PRESIDENT 2014年5月19日号

山本 一郎投資家・作家

8割は中国に対して「親しみを感じない」

右傾化、してますか?


「右傾化している」とメディアで評論される機会が増えたのは間違いありませんが、一人ひとりを指差して「あなた、右傾化していますね?」と問われれば、「いいえ、私は違いますよ」と答える人は多いでしょう。

例えば、2014年2月の都知事選。巷では、その経歴や発言内容から「ネトウヨ(ネット右翼)候補」と揶揄されもした元航空自衛隊幕僚長の田母神俊雄氏が、61万票を獲得し4位となりました。出口調査では若い世代からの得票が多かったことから、「若い世代の右傾化が深刻だ」という一見もっともらしい選挙分析が出ました。実際には20代、30代の投票率は低く、彼らの得票を最も集めたのは当選した舛添要一氏であり、むしろ全体の傾向としては「田母神氏の主張した過激な極右的政策は必ずしも国民に浸透しておらず、当落線上ですらない61万票程度しか確保できなかった」という内容になるはずなのですが。

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中国・韓国に「親しみを感じない」という人が増えている

しかし、日本の社会風土に閉鎖的な側面を感じるという論調は、理解もできます。政府は少子高齢化による労働力不足への対策として、かねてより移民政策を検討していますが、04年の内閣府の世論調査では「(外国人労働者の)受入れについて積極的に考えていく」と回答したのは全体の15%程度でした(※1)。アジア圏においては、2013年11月に内閣府が発表した調査で、中国に対して「親しみを感じない」とする層はついに80%を突破。韓国に対しても58%と6割に迫る勢いです。

対中国、対韓国の感情悪化が、右傾化という印象に結びついているとも言えます。また、脱米・親中韓という左派的な傾向があった民主党政権が成果を出せずに瓦解したことにより、その反動として、自民党・安倍晋三政権のやや右派的な言動に期待が集まって、いまなお50%後半の支持率を集めていることが、「日本社会が右寄りに舵を切っている」という議論が持て囃される背景となっています。

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それでも、より右派としての姿勢を前面に出した田母神氏が支持を広げられず完敗したことを考えると、それは大げさな「右傾化」というよりは、もっと現実的な「保守的態度の浸透」と呼んだほうが、実態を正確に表しているのではないかと考えられます。

本来、本当に我が国が右傾化、民族主義化しているのだとするならば、日本人の自主独立を模索して反米的な言動も同時に高まり、また国内で頻発していた在日韓国人バッシングに対する支持がもっと広がっていてもおかしくありません。が、実態はアメリカに対して親しみを感じる日本人は依然として8割を超え、「在特会」のように民族差別的な言動を行う団体への支持率はほぼゼロで誤差の範囲内です。日本国内で中国大使館や韓国大使館に対して大きなデモが張られたことはありません。こうした事実を、海外のナショナリズムの問題と比較すると違った光景が見えてきます。

今年3月に台湾で発生した学生のデモは、まさに大規模な右傾化です。中国との貿易協定締結の強行に反発する台湾の若者たちが、次々とデモに身を投じました。彼らは動画サイトなどを通じて、一連の密室協定は台湾を中国に同化させ、チベットや新疆(しんきょう)ウイグル自治区のような中国の外縁の一部に組み込まれかねないものだと主張。メディアの推計では35万~40万人、学生らの発表では50万人が総統府前に集まり、一時は日本での国会議事堂にあたる立法院までもが占拠されました。

こうしたナショナリズム的な右傾化の動きは各国に見られ、その背景には移民政策の失敗や地政学的なジレンマがあります。ドイツでは2010年、メルケル首相が「多文化主義は完全に失敗した」という演説を行い、トルコからの移民の制限を決めました(※2)。デンマークでは12年に、反イスラムの大規模デモが暴徒化し、警官隊と衝突。スウェーデンでは外国人排斥を訴える極右集団とそれに反対するグループの間で緊張が高まり、たびたび負傷者や逮捕者が出ています。右傾化による同胞意識が具体的なデモを呼び、社会に混乱が発生するというのは、いまや世界的なトレンドになっています。


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それでも、より右派としての姿勢を前面に出した田母神氏が支持を広げられず完敗したことを考えると、それは大げさな「右傾化」というよりは、もっと現実的な「保守的態度の浸透」と呼んだほうが、実態を正確に表しているのではないかと考えられます。

本来、本当に我が国が右傾化、民族主義化しているのだとするならば、日本人の自主独立を模索して反米的な言動も同時に高まり、また国内で頻発していた在日韓国人バッシングに対する支持がもっと広がっていてもおかしくありません。が、実態はアメリカに対して親しみを感じる日本人は依然として8割を超え、「在特会」のように民族差別的な言動を行う団体への支持率はほぼゼロで誤差の範囲内です。日本国内で中国大使館や韓国大使館に対して大きなデモが張られたことはありません。こうした事実を、海外のナショナリズムの問題と比較すると違った光景が見えてきます。

今年3月に台湾で発生した学生のデモは、まさに大規模な右傾化です。中国との貿易協定締結の強行に反発する台湾の若者たちが、次々とデモに身を投じました。彼らは動画サイトなどを通じて、一連の密室協定は台湾を中国に同化させ、チベットや新疆(しんきょう)ウイグル自治区のような中国の外縁の一部に組み込まれかねないものだと主張。メディアの推計では35万~40万人、学生らの発表では50万人が総統府前に集まり、一時は日本での国会議事堂にあたる立法院までもが占拠されました。

こうしたナショナリズム的な右傾化の動きは各国に見られ、その背景には移民政策の失敗や地政学的なジレンマがあります。ドイツでは2010年、メルケル首相が「多文化主義は完全に失敗した」という演説を行い、トルコからの移民の制限を決めました(※2)。デンマークでは12年に、反イスラムの大規模デモが暴徒化し、警官隊と衝突。スウェーデンでは外国人排斥を訴える極右集団とそれに反対するグループの間で緊張が高まり、たびたび負傷者や逮捕者が出ています。右傾化による同胞意識が具体的なデモを呼び、社会に混乱が発生するというのは、いまや世界的なトレンドになっています。



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