2025-10-15

朝鮮籍とは何か トランスナショナルの視点から/李里花/編著 本・コミック : オンライン書店e-hon

朝鮮籍とは何か トランスナショナルの視点から/李里花/編著 本・コミック : オンライン書店e-hon



朝鮮籍とは何か――トランスナショナルの視点から Tankobon Softcover – February 1, 2021
by 李 里花 (Author, Editor)
4.6 4.6 out of 5 stars (24)

朝鮮籍とは、植民地期朝鮮から日本に「移住した」朝鮮人とその子孫を分類するために、戦後の日本で創り出されたカテゴリーである。本書は、朝鮮籍をめぐる歴史的変遷をたどりながら、朝鮮籍の人が直面したリアリティにも焦点を当てることで、その実像に迫ろうとするものである。

○目次

序文 なぜ朝鮮籍なのか (李里花)

第1章 朝鮮籍在日朝鮮人の「国籍」とは――?法学の観点から (髙希麗)
1 はじめに
2 日本における外国人としての在日朝鮮人――朝鮮籍のはじまり
3 朝鮮半島における在外(海外)同胞としての在日朝鮮人――国民の範囲
4 国籍未確認としての朝鮮籍者――国民国家の狭間で
5 おわりに――こぼれ落ちる存在への並走

コラム1 分断と統一――朝鮮籍から見えるもの (郭辰雄)

第2章 朝鮮籍の制度的存続と処遇問題――日本政府による韓国の限定承認と在日朝鮮人問題への適用 (崔紗華)
1 はじめに
2 前史――朝鮮籍の誕生と日本国籍の喪失
3 日本政府の限定承認論と朝鮮籍の制度的存続
4 日本政府の限定承認論と在日朝鮮人の処遇問題
6 おわりに

コラム2 元プロサッカー選手・安英学氏インタビュー (李晋煥)

第3章日本政府による「朝鮮」籍コリアンの排除――2000 年代のバックラッシュのなかで (ハン・トンヒョン)
1 はじめに
2 在留外国人統計における「朝鮮・韓国」の分離
3 海外渡航に際して「誓約書」を強要
4 韓国渡航をめぐる「みなし再入国」運用の混乱
5 分離集計のその先と朝鮮学校の処遇
6 おわりに

コラム3 「思想としての朝鮮籍」を追って (中村一成)

第4章 韓国入国問題を通して見る朝鮮籍者の政治的多様性の看過 (金雄基)
1 はじめに
2 日本における朝鮮籍者をめぐる処遇の歴史的変遷
3 南北朝鮮との関係性によって明らかになる朝鮮籍者の政治的多様性
4 韓国は朝鮮籍者をどのように処遇してきたのか 5 「非北」朝鮮籍者による韓国社会に対する政治的主張
6 結論

コラム4 海外の「無国籍」コリアン (李里花)

第5章 済州島、三河島、そして朝鮮籍 (文京洙)
1 一世と二世
2 三河島の済州人――泉靖一の調査から
3 「朝鮮籍」を生きて
4 「韓国籍」へ

コラム5 国連と無国籍の解消――# I Belong キャンペーンを通して (秋山肇)

第6章 なぜ無国籍の「朝鮮」籍を生きるのか? (丁章)

コラム6 国籍の無い、国籍を超えた社会へ (陳天璽)

第7章 グローバル時代の朝鮮籍――インタビューからみるアイデンティティ諸相 (李里花)
1 はじめに
2 グローバル化、ヘイト、そして韓流
3 インタビューからみる朝鮮籍のアイデンティティ諸相
4 おわりに

あとがき (李里花)


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Print length

248 pages
Language

Japanese















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Product description

About the Author
○編著者紹介
李里花(リ・リカ)
中央大学准教授。社会学博士。専門は、歴史社会学、移民研究、環太平洋地域研究。東京都立国際高等学校、中央大学総合政策学部卒業後、一橋大学大学院社会学研究科修士課程・博士課程修了。博士課程在学中に、ハワイ大学大学院に留学し、その後ハワイ大学コリアン研究センター客員研究員、韓国高麗大学アジア問題研究所コリアンディアスポラセンター客員研究員を歴任。現在日本移民学会理事・事務局長。主な研究に、『〈国がない〉ディアスポラの歴史:戦前のハワイにおけるコリア系移民のナショナリズムとアイデンティティ1903-1945』(かんよう出版、2015 年)、「하와이한인 이민 여성의 근대화와 문화(ハワイにおけるコリア系移民女性の近代化と文化)」(김효남 역)김성은 외 지음『한국 근대 여성의 미주 지역 이주 및 유학』韓国学中央研究院出版部(韓国)2019 年(119-146)、「Stateless Identityof Korean Diaspora: The Second Generations in prewar Hawai'i and postwarJapan」『Japanese Journal of Policy and Culture』(28) 2020 年(55-69)、「今なぜ〈トランスナショナル〉なのか――日本における移民研究を考える」『移民研究年報』(26), 2020 年(3-8) 等がある。自身は朝鮮籍ではなく、在日コリアンの母とコリアン・アメリカンの父の間で日米を往来しながら育った。最近は「自国民/外国人」の枠組みを超える研究や活動に取り 組んでいる。詳しくはhttps://yab.yomiuri.co.jp/adv/chuo/research/20200123.php。

○執筆者紹介
髙希麗(コウ・ヒリョ)
公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所研究員。専門は憲法であり、国籍や国民概念について日本、韓国、ドイツ(EU)などを対象に研究している。

崔紗華(チェ・サファ)
同志社大学社会学部教育文化学科助教。専門は国際関係史、人の移動。

ハン・トンヒョン(韓東賢)
日本映画大学准教授。専攻は社会学、専門はナショナリズムとエスニシティ、マイノリティ・マジョリティの関係やアイデンティティ、差別の問題など。

金雄基(キム・ウンギ)
韓国翰林大学校日本学研究所 HK 教授。専門は東アジア政治史、近年の研究テーマは韓国の在外同胞としての在日コリアン。

文京洙(ムン・ギョンス)
立命館大学名誉教授。現在、「済州島四・三事件を考える会」会員、在日総合誌『抗路』編集委員、『済州日報』論説委員。

丁章(チョン・ヂャン)
在日サラム(コリアン)三世。無国籍(朝鮮籍)。詩人。在日総合誌『抗路』編集委員(1 号~ 6 号)。無国籍ネットワーク運営委員。

郭辰雄(カク・チヌン)
特定非営利活動法人コリアNGOセンター代表理事。

李晋煥(リ・ジナン)
株式会社明石書店に勤務。

中村一成(なかむら・いるそん)
ジャーナリスト。主なテーマは在日朝鮮人や移住労働者など、非・国民を取り巻く人権問題や死刑など。2000 年代以降は中東に赴き、パレスチナ難民との出会いも重ねてきた。映画評も執筆する。

秋山肇(あきやま・はじめ)
筑波大学人文社会系助教。専門は、憲法、国際法、国際政治、国際機構論、平和研究。国籍・無国籍の研究を通して、国家と人間の関係性について分析している。

陳天璽(チェン・ティェンシ/ちん・てんじ )
早稲田大学国際学術院教授、無国籍ネットワーク代表理事。移民、無国籍者に注目した研究に従事。



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About this itemSimilarFrom the AuthorReviews朝鮮籍とは何か――トランスナショナルの視点から

Product Details
Publisher ‏ : ‎ 明石書店 (February 1, 2021)
Publication date ‏ : ‎ February 1, 2021
Language ‏ : ‎ Japanese
Tankobon Softcover ‏ : ‎ 248 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 4750350796
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4750350790
Dimensions ‏ : ‎ 5.08 x 0.71 x 7.4 inches
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4.6 4.6 out of 5 stars (24)




朝鮮籍とは何か トランスナショナルの視点から李里花/編著

出版社名 明石書店
出版年月 2021年1月
ISBNコード 978-4-7503-5079-0
(4-7503-5079-6)
税込価格 2,640円
頁数・縦 246P 19cm








商品内容

要旨

日本の植民地支配と戦後の外国人政策、朝鮮半島の南北分断のはざまに置かれ、無「国籍」を強いられた世界に3万人しかいない人びと…。
目次

序文 なぜ朝鮮籍なのか
第1章 朝鮮籍在日朝鮮人の「国籍」とは?―法学の観点から
第2章 朝鮮籍の制度的存続と処遇問題―日本政府による韓国の限定承認と在日朝鮮人問題への適用
第3章 日本政府による「朝鮮」籍コリアンの排除―2000年代のバックラッシュのなかで
第4章 韓国入国問題を通して見る朝鮮籍者の政治的多様性の看過
第5章 済州島、三河島、そして朝鮮籍
第6章 なぜ無国籍の「朝鮮」籍を生きるのか?
第7章 グローバル時代の朝鮮籍―インタビューからみるアイデンティティ諸相
===


Product description

About the Author

○編著者紹介
李里花(リ・リカ)
中央大学准教授。社会学博士。専門は、歴史社会学、移民研究、環太平洋地域研究。東京都立国際高等学校、中央大学総合政策学部卒業後、一橋大学大学院社会学研究科修士課程・博士課程修了。博士課程在学中に、ハワイ大学大学院に留学し、その後ハワイ大学コリアン研究センター客員研究員、韓国高麗大学アジア問題研究所コリアンディアスポラセンター客員研究員を歴任。現在日本移民学会理事・事務局長。主な研究に、『〈国がない〉ディアスポラの歴史:戦前のハワイにおけるコリア系移民のナショナリズムとアイデンティティ1903-1945』(かんよう出版、2015 年)、「하와이한인 이민 여성의 근대화와 문화(ハワイにおけるコリア系移民女性の近代化と文化)」(김효남 역)김성은 외 지음『한국 근대 여성의 미주 지역 이주 및 유학』韓国学中央研究院出版部(韓国)2019 年(119-146)、「Stateless Identityof Korean Diaspora: The Second Generations in prewar Hawai'i and postwarJapan」『Japanese Journal of Policy and Culture』(28) 2020 年(55-69)、「今なぜ〈トランスナショナル〉なのか――日本における移民研究を考える」『移民研究年報』(26), 2020 年(3-8) 等がある。自身は朝鮮籍ではなく、在日コリアンの母とコリアン・アメリカンの父の間で日米を往来しながら育った。最近は「自国民/外国人」の枠組みを超える研究や活動に取り 組んでいる。詳しくはhttps://yab.yomiuri.co.jp/adv/chuo/research/20200123.php。

○執筆者紹介
髙希麗(コウ・ヒリョ)
公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所研究員。専門は憲法であり、国籍や国民概念について日本、韓国、ドイツ(EU)などを対象に研究している。

崔紗華(チェ・サファ)
同志社大学社会学部教育文化学科助教。専門は国際関係史、人の移動。

ハン・トンヒョン(韓東賢)
日本映画大学准教授。専攻は社会学、専門はナショナリズムとエスニシティ、マイノリティ・マジョリティの関係やアイデンティティ、差別の問題など。

金雄基(キム・ウンギ)
韓国翰林大学校日本学研究所 HK 教授。専門は東アジア政治史、近年の研究テーマは韓国の在外同胞としての在日コリアン。

文京洙(ムン・ギョンス)
立命館大学名誉教授。現在、「済州島四・三事件を考える会」会員、在日総合誌『抗路』編集委員、『済州日報』論説委員。

丁章(チョン・ヂャン)
在日サラム(コリアン)三世。無国籍(朝鮮籍)。詩人。在日総合誌『抗路』編集委員(1 号~ 6 号)。無国籍ネットワーク運営委員。

郭辰雄(カク・チヌン)
特定非営利活動法人コリアNGOセンター代表理事。

李晋煥(リ・ジナン)
株式会社明石書店に勤務。

中村一成(なかむら・いるそん)
ジャーナリスト。主なテーマは在日朝鮮人や移住労働者など、非・国民を取り巻く人権問題や死刑など。2000 年代以降は中東に赴き、パレスチナ難民との出会いも重ねてきた。映画評も執筆する。

秋山肇(あきやま・はじめ)
筑波大学人文社会系助教。専門は、憲法、国際法、国際政治、国際機構論、平和研究。国籍・無国籍の研究を通して、国家と人間の関係性について分析している。

陳天璽(チェン・ティェンシ/ちん・てんじ )
早稲田大学国際学術院教授、無国籍ネットワーク代表理事。移民、無国籍者に注目した研究に従事。

Product Details


==
From Japan

5.0 out of 5 stars 良書
Reviewed in Japan on April 8, 2021
Format: Tankobon Softcover
様々な視点から朝鮮籍を語っている。
非常に分かりやすい。
7 people found this helpful

==


==
2021.02.10
「無国籍」となった「朝鮮籍」の実像に迫る 『朝鮮籍とは何か』
記事:明石書店

 朝鮮籍とは、植民地期朝鮮から日本に「移住した」朝鮮人とその子孫を分類するために、戦後の日本で創り出されたカテゴリーである。朝鮮民主主義人民共和国の国籍を意味するかのように使われることがあるが、これはまちがいである。本書『朝鮮籍とは何か』は、朝鮮籍をめぐる歴史的変遷をたどりながら、朝鮮籍の人が直面したリアリティにも焦点を当てることで、その実像に迫ろうとするものである。(文:李里花・中央大学総合政策学部准教授)
書籍情報はこちら

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朝鮮籍とは何か
 帝国の時代に朝鮮半島から日本に移り住み、「日本帝国臣民」と暮らしていた朝鮮人とその子孫(以下、在日コリアンという)は、1947年の外国人登録令の下で「外国人」に登録するよう通達され、そこで「国籍および出身地」を示す欄に「朝鮮」と記載されることになった。これは「朝鮮」が出身であることを示すものであって、国籍を意味するものではなかった。その後サンフランシスコ講和条約(1952年)によって、国籍選択権のないまま「外国人」になると、在日コリアンはどの国家にも帰属しない「朝鮮籍」という「籍」をもった人びとになった。すなわち戦後の在日コリアンは「日本帝国臣民」から「外国人」へと転じていくが、そこでどの国家にも帰属しない「事実上の無国籍」や「国籍未確認者」と言われる人びとになったのである。

70年以上続いてきた朝鮮籍
 朝鮮籍の人は、1947年の外国人登録制度の下で約59万人存在したが、2019年末には約2万8975 人となった。現在は在日コリアンの多くが大韓民国や日本国の国籍を取得している。日本には韓国国籍者が45万1千人暮らしている(うち特別永住者は約28万5千人、「在留外国人統計2019年」より)。日本国籍を取得する人の数も、毎年数千人に上る。さらに朝鮮籍の人の中には、朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という)の国籍やパスポートを取得している人もいる。ただ日本政府は大韓民国を朝鮮半島における唯一合法政府とし、「北朝鮮」を「未承認国家」としているため、「北朝鮮」の国籍やパスポートを取得したとしても、それが日本で認められることはない。詳細は本書に譲りたいと思うが、こうした国籍をめぐる状況のみならず、日本の外国人政策や朝鮮半島情勢の中で朝鮮籍は国家にとって「都合がいい」ように解釈され、二転三転してきた。さらに2000年代に高まった「北朝鮮嫌悪」とヘイトスピーチは誤解や偏見を生むものとなり、朝鮮籍の人にステレオタイプされた「まなざし」を向けるものとなった。


トランスナショナルの視点から
 このような事情から、本書は朝鮮籍をめぐる日本の状況のみならず、朝鮮半島情勢やその背景にある国際関係、グローバル化による影響にも注目しながら、朝鮮籍を紐解くものである。さらに国家(ナショナル)や国家間関係(インターナショナル)の次元にも焦点を当てるが、複数の国家に跨る人や社会の次元(トランスナショナル)から朝鮮籍を生きる人のリアリティにも光を当て、朝鮮籍の実像を描き出そうとするものである。

『朝鮮籍とは何か』目次
『朝鮮籍とは何か』目次
なぜ朝鮮籍に注目するのか
 それでは3万人に満たない、マイノリティのなかのマイノリティとなった朝鮮籍に、なぜ注目するのか。

 まず、朝鮮籍についてこれまであまり語られることはなかったことがあげられる。2000年代になって研究論文がいくつか発表されるようになったものの、一般的な書籍としては中村一成氏の『思想としての朝鮮籍』が先駆的な本として存在するだけであった。朝鮮籍をめぐる状況は複雑で、制度的な問題を孕むだけでなく、近年のヘイトスピーチの高まりとともに偏見や誤解が蔓延し、理解を深めることが容易ではなくなっている現実がある。こうした状況の中で朝鮮籍を語ることが難しく、朝鮮籍について語られない傾向さえある。

 しかし朝鮮籍の人が切り開いてきた世界をみてみると、国家や帰属について新しい見方を提示してくれる。朝鮮籍の人は、国家への帰属意識をもたないわけではない。むしろ多様であり、朝鮮籍の中には、国家を跨いで活躍の場を広げていく人もいれば、日本国内にとどまる人、その中で民族的アイデンティティを強めていく人もいれば、民族的アイデンティティと切り離したところに自分の存在を置こうとする人もいる。あるいは地球人としての生き方を求める人もいれば、ローカルの地域社会に寄り添って生きる人もいる。そのあり様は多様であるが、いずれも国家への帰属を中心軸にしていく中では見ることができない姿である。

 さらに朝鮮籍が映し出す世界は、国家への帰属や国籍が当然のように付与されていない世界であり、そうした人たちに向けられる「まなざし」がいかなるものなのか、国籍をもつ側の考えを浮き彫りにする。特に朝鮮籍は、国籍のない人の不自由さを強いるグローバル社会の仕組みを浮き彫りにしてくれるが、一方でグローバル化の流れの中で台頭した自国中心的な勢力がヘイトの矛先を国民国家の枠組みから零れ落ちる朝鮮籍のような立場にある人びとに向けることを容認する今の世界のあり様を投影してくれる。

 この世界の流れを肌で感じてきた朝鮮籍の人は、目の前に突きつけられた閉塞感をどう突破しているのか、そしてこれからのグローバル時代をいかに生きようとし、そこでどのような国家との関係を構築しようとしているのか、朝鮮籍はグローバル時代の新たな生き方についても多くの示唆を与えてくれる。国籍がない人も、国籍がある人も、誰もが自由で平等となるためにはどう世界を構築したらいいのか、本書がその一助となることを期待している。

この本の編著者で、この記事を書いた人
李里花(り・りか)
中央大学総合政策学部准教授。社会学博士。専門は、歴史社会学、移民研究、環太平洋地域研究。東京都立国際高等学校、中央大学総合政策学部卒業後、一橋大学大学院社会学研究科修士課程・博士課程修了。博士課程在学中に、ハワイ大学大学院に留学し、その後ハワイ大学コリアン研究センター客員研究員、韓国高麗大学アジア問題研究所コリアンディアスポラセンター客員研究員を歴任。現在日本移民学会理事・事務局長。

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