2016-04-07

結婚の条件 (朝日文庫 お 26-3)

結婚の条件 (朝日文庫 お 26-3)
5つ星のうち5.0召しませ毒林檎。ただし起きる時は自力で。
投稿者るおまる2003年12月16日
形式: 単行本
おいしい林檎畑に紛れ込んだ、強烈な毒林檎。
そんな印象を受けました。
たとえば結婚について。小倉氏は女性の考える結婚とその女性の所属する
階層は関係がある、と断言します。階層を統計に持ち込むことは
日本ではタブーに近いのでこれは勇気のある提言だと言えるでしょう。
「高卒女性が求める結婚=生存」「短大卒の女性が求める結婚=依存」
「大卒女性の求める結婚=自己保存」。この分類を、我意を得たりと
ほくそえむか、憤慨して見るかは個人の置かれている状況によって
大きく変わりそうです。
後半の「だめんずうぉ~か~」の章は、個人的に頷くところが
とても多くありました。「だめんず」の作者くらたまが抱えているルサンチマン
(と言ってはいけないのかもしれませんが)を的確に指摘しています。
その冷静(冷徹)なつっこみは、もしかしたら読む人にも痛みを与えるかもしれません。
第二次世界大戦敗戦国の父親と娘の関係と非婚率を考える章も
とても考えさせられました。結婚の問題はよく母と娘の関係で語られて
しまいますが、本当は父親のもつ思想の存在がとても大きいのだと思います。
などなど、いろんなことを考え、笑いながら読んで
ハっとしてグっとして、夜眠るとき思い出して眠れなくなりました。
毒は確実に私の中に回っています。
ちなみに表紙のスタイリッシュなイラストを描いているのは
あの壮大な結婚&階層社会ファンタジー漫画
「白鳥麗子でございます」の作者、鈴木由美子さんです。
それを思い出して眺めると、とても意味のある表紙だと思います。
この本は3次元の書店では、ラブリーな恋愛エッセイの
コーナーに置かれているようです。
自己啓発&慰安的なタイトルと赤やピンク色のカバーの本
がひしめいているコーナーのことです。
恋のガイドブックを求めるフワフワ気分で
「あらかわいい表紙。「結婚の条件」だなんて、
私の悩んでいることだわ。きっと適齢期の女性を
励ましてくれるスイートな恋愛エッセイね」とかなんとか思ってこの本を
手に取った人は、一読して即死するんじゃないでしょうか。それが心配です。
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5つ星のうち5.0今読むと少し古いけれど
投稿者pommier_pommeベスト1000レビュアー2010年5月6日
形式: 単行本
本書で示されているとおり、この激動の時代をを生きる男女の結婚観が、大きく食い違っていることは、きっと今も変わらない現実だと感じます。
何年も前に作者が予言した結婚難+就職難の時代は、その勢いを止めず、現実のものとなっているのではないでしょうか。
勝ち負けの差が激しいこの時代、互いに、より幸せになりたいと願う者たちが、限られた大きさのパイをめぐって画策を繰り広げる。
女は、男の結婚観を聞いてその幼さに辟易とする。
男は、女の結婚観を聞いてピリピリした苛立ちと不安を感じる。

男女の、自分本位な結婚観は交差するどころか、離れるばかりだという作者の分析は、鋭く、滑稽で、的を得ているように感じました。

女性の間には、いくつもの溝があります。

結婚しているか、していないか。
仕事をしているか、していないか。
子供がいるか、いないか。

他人のことなど、気にしなければいいのに、同族は集まり、状況が変われば互いにどこか馴染めなくなる。
そんな女性たちを、ハッキリと斬って分けた作者の弁は、痛快でした。

個人的感想で、これを言えばおしまいかもしれませんが、
人と比べて自分の幸せを勝ち負けではかったりすることは、結局、どの経済的階層にあったとしても、本当の幸せではないんじゃないか、と思いました。
自分を客観的に見る能力を身につけ、心理的にしっかりと自立していさえすれば、結婚、仕事、育児していようがいまいが、「幸せ」だし「勝ち」なんじゃないかとこの本を読んで至極シンプルな思いを抱きました。
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5つ星のうち4.0たしかにこれじゃあ結婚しないわなぁ
投稿者Amazon CustomerVINEメンバー2005年3月22日
形式: 単行本
30代、40代での独身、ひいては、非婚も珍しくなくなった現代。大多数の人が「いい人がいたらすぐにでも結婚したい!」と思っているのに何故結婚できないのか?これは、少子高齢化を加速させる社会問題であると同時に、30代独身男の自分にとっても切実なテーマです。
本書を読んで、男と女それぞれが「提供できるもの」と「相手に求めるもの」がこんなにも違っているのか!とちょっとショックを受けました。
「結婚とはカオとカネの等価交換」というのは、藤田徳人氏の「恋愛科学」などでも言われていますが、男も女も、ついつい自分の持っているもの以上のものを相手に求めてしまいますよね。気持ちの問題だけに「足るを知れ!」というのも難しいですし。
また、男は女に「家庭的で、賢く、美人」であることを、女は男に「経済的な強さ(=カネ)とまじめさ(=浮気しない)とやさしさ(=家事手伝ってくれる)を求めている、というのでは、現実を考えると確かに折り合わないですね。男としてはせっせと仕事をして、ステイタス上げるしかないですね。(忙しいと出会いもなくなるし、その上、家事までやれないとというと、結構きついです)
なんともならない現実を知るにはよい一冊でした。
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5つ星のうち5.0冷徹な分析、ただし殺伐とはしていない
投稿者casanegraVINEメンバー2004年12月7日
形式: 単行本
これは本当に面白かったです。分析に関してはかなり冷徹な部類だと思
いました。女性の最終学歴である程度の傾向が見えてくるとの事で、そ
のレベルに応じて「生存・依存・保存」とランク付けしています。概ね
「高卒・短大卒・4大卒」です。また、結婚とはカネ(男性側)とカオ
(女性側)の交換であるとシュートな見解も提示しています。
無論人間なのだから、愛情などの感情も重要な決定要素になると思うの
ですが、その感情も環境に規定される可能性を無視できません。その意
味において、この分析手法に私は反対するつもりはありません。実は卒
論で読んだ資料で、19世紀の中南米で親の学歴が高いほど、子供の学
歴も高く、収入も高くなる傾向にあるというデータがありました。なの
で、学歴というアプローチは決して新しいわけではなく、実績のあるも
のです。
従来型のフェミニストに対する批判もするどい。子供を産んでも育児休
業を取って、職場に復帰すべきという女性の弁護士・高級官僚・学者に
対して、「自分が『経済特区』にいるということに、なぜ気づかないの
であろうか?」と切り込みます。
この本がシュートで殺伐としたものでない理由は、多彩な面白い表現が
随所に見られるからでしょう。例えば「腰掛け総合職」という章での表
現「日本中の父親が梅宮辰夫化している現在、労働からの逃避は避けら
れないと考えなければなるまい。猫をカスタード・クリームの中で溺死
させるという殺し方もあるということだ」など。
何はともあれ、社会分析の見本として読み応え十分です。
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5つ星のうち4.0戦後に大量生産された「お嬢様」の帰結
投稿者Amazon Customer2013年11月11日
形式: Kindle版|Amazonで購入
現代の結婚問題についてキレのある指摘が随所に見られ、非常に読み応えのある本だった。

中でも私がうならされたのは、『東京ラブストーリー』に対する女子大生の反応についての分析だった。

この物語は、一人の男性と二人の女性の三角関係を描いたものらしい。
その結末において女性の一人、赤名リカは男に媚びないキャリアウーマンとして一人で生きる人生を選び、
もう一人の関口さとみは永尾完治と結婚し、専業主婦として夫に扶養される人生を選んだ。

本書の筆者によると、物語を視聴していた女子大生達は皆こぞって赤名リカの生き様に共感し、涙を流した。
そして男に媚びて生きることを選んだ「打算的」な女性、関口さとみを嫌悪したのだという。

しかし、その女子大生達はその後どのような生き方を選んだのか?
統計によれば、彼女たちはその大多数が関口さとみのように、専業主婦として夫に養われて生きているのである。

ここには、人間に特有の自己欺瞞がある。

彼女らは、自分がまさに関口さとみとまったく同じような生き方を選択しているにも関わらず、
自分たちが打算的だとは少しも思わない。

なぜなら、自分達はごく普通に恋愛をし、その延長線上に結婚したのであって、結婚後の生活を冷静に見据え、そこから逆算してふさわしい男を選んだのではない、と思っているからである。
(この恋愛と結婚のスムーズな接続、つまり巧妙なすり替えができない女性は、婚期を逃して苦労することになる。
とはいえ、彼女たちが「お見合い結婚」に踏み切る可能性はきわめて低い。それは男を種々の条件、年収や学歴や家柄で冷静に選んだことになってしまうからだ)
恋愛をして人を愛した「ごく自然な」結末が結婚なのであって、そこに打算の要素が入り込む余地はなかったから、というわけだ。

しかし、本書の筆者によれば、じつは彼女らの恋愛感情そのものが、「結婚によって階層上昇をめざす」という彼女らの両親の打算的希望を、巧妙に、隠微に翻訳したものに過ぎないのだ。
たとえば、「優しい=家事を分担してくれる」であり、「夢がある=出世競争を勝ち抜く野心がある」であり、「頭がいい=高学歴」というように。

彼女らのあずかり知らぬところで、彼女らの価値観は見事なまでに専業主婦としての打算に裏打ちされていたのである。
自分では自覚できないほどに「男に養われ、苦労しない生き方は、経済的に自立した人生よりも素晴らしい」という価値観を深く内面化させ、血肉とした結果、彼女らはそうした生き方を意識の上では嫌悪すらできるようになっているのだ。

これが、筆者のいう「ハビトゥス」としてのイデオロギーである。
それは単なる思想、信条よりもう少し上の概念ではあるが、後天的に身に着けた価値のありかたであり、近代という時代に固有のものにすぎない。
時代や地域を超えた、人類共通の普遍的原理ではない。

いや、実に見事な分析というほかない。
このキレの鋭さゆえに、本書の筆者は男性諸氏からは結婚の対象としては見られなかったのだろうなあ…、などと愚にもつかないことを考えてしまった次第である。

頭がキレ過ぎる女性というのは、男にとっては脅威以外の何者でもない。
「かわいくて優しい女性がいい」とのたまう男性の内面にも、やはり打算は存在するのだろう。
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5つ星のうち5.0何度も読み返しました。
投稿者ジャムネズミ2009年10月19日
形式: 単行本
本書では、女と男の打算的で自己中心的な生きざまが容赦なく暴かれています。
しかし全くもっともな指摘ばかりで、読んでいて泣き笑いしたくなります。

痛い内容にもかかわらず、反発を覚えないのは、
人間への深い愛情と悲しみが、筆者の根底にあるように感じられるからかもしれません。

おすすめです。
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5つ星のうち4.0辛口のユーモアで鋭く切り込む現代の結婚問題
投稿者Edgeworth-Kuiper Belt殿堂入りベスト10レビュアー2011年9月15日
形式: 文庫
「結婚は奥の深い、微妙でデリケートな現象だ。そこには、人間の欲望とコンプレックスが渦巻いている。あまりに屈折しているので、一筋縄ではいかない現象だ」。

ここのレビューを読んで、面白そうだと思って買った。笑った。そして、考えさせられた。著者は心理学専攻の大学講師。特に、晩婚化から非婚化への流れとその原因について注目している。

「(恋愛の)才能のない人にとっての最大の夢が『自然な出会い』なのであるが、才能のないもの同士の間には、いつまでたっても恋愛は発生しない」。

女性が求める「やさしさ」とは気の毒な人に大金を貸すやさしさではなく、ゴミの日を覚えていて運んでくれるやさしさ。ついついショッカーの谷に足を踏み入れてしまう「うっかり女」には仮面ライダーが必要だが、「しっかり女」はそんなことしないから仮面ライダーもいらない。まあ、あちこちに辛口のスパイスが散りばめてある。処女暦50年の女性の理由。働く女性の地位向上を目指してハッパをかける女性弁護士に反論して睨まれた話。授業で男女学生にとったアンケートから、互いに最低限の望みだと思っていることが多くの男女の実態とかけ離れている理想に過ぎないことをあぶり出したりしているところもある。

若い女性の教育熱や結婚への意識に、母親世代のコンプレックスを見ているところはなかなか鋭い。日本の近代化から現代に至る女性と結婚の間の価値観の変化とそこから生じている歪みについての見解も、なかなかのものである。

女性雑誌や芸能界をネタにした話についてはあまり興味のある分野ではないので個人的にそれほどぴんとこなかったが、切れ味はやはり鋭い。毒舌とユーモアの間に、現代日本の結婚観とそこに横たわる深刻な問題を浮き彫りにしているエッセイである。
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5つ星のうち4.0結婚とはギブアンドテイク
投稿者m_ayu_2004年11月2日
形式: 単行本
自分自身が漠然と抱いていた「結婚」に対しての意識が見事に書いてありました。合理的なものとわりきって生きていくのか?でもそこに淡い感情を求めるのか?それは個人によって選べばいいんじゃないかと思います。でも普通の人たちが、相手には自分以上の価値を求めていてはなかなか幸せになれないなぁ、と思いました。
しかし男も女も読んで損はないお話だと思います。
個人的には「負け犬の遠吠え」より全然お勧め☆
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5つ星のうち4.0現代版ナンシー関とでもいうべき痛快エッセイ
投稿者アマゾン華子2011年2月23日
形式: 単行本
東京ラブストーリーの関口さとみを忌み嫌いつつ、さとみ的生き方にたどり着く女。
「STORY」創刊号に登場した優雅な秋保仁美さんの語られないナゾ。
慰謝料一億、養育費月百万をもらいつつ「儲からない」料理教室を続々ひらく岡田美里。
六人のベビーシッターが子どもの世話をする「平成のドラ娘」梅宮アンナ。

…などなど働く女性にとって目の敵とでもいうべき
「男の経済力依存型」有名人や一般女性を「現在の結婚事情分析」
という大義名分のもとバサバサ斬っています。

まさに、現代版ナンシー関とでもいうべき痛快エッセイ。
男性の経済力に依存する生き方を嫌う
既婚女性が読むと胸のつかえがとれるのを感じるはず。
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5つ星のうち4.0短大・四大女性の保守化のなかみ
投稿者朽木2010年10月31日
形式: 単行本
2003年に書かれたものですが、今(2010年)読んでも興味深いものです。

「結婚の条件」として小倉さんは学歴別に特徴を分けていますが、なかでも現代の風潮として特徴的なのは短大・(中堅以下の)四大の女性でです。3つの特徴をまとめておきましょう(37〜38ページ)。

(1)結婚の条件は、3C
曰く、comfortable(快適な)=充分な給料、communicative(理解しあえる)=育った環境(階層)が似ている、cooperative(協調的な)=家事をすすんでやる、ということです。

(2)新・新・性別役割分業
曰く、「夫は仕事と家事、自分は家事と趣味的仕事」という分業がよい、ということです。

(3)新・専業主婦志向
曰く、新・新・性別役割分業のもと、男が外で働き、女は扶養されることの「特権」を充分に享受するような専業主婦志向、だそうです。

これらは、基本的にはノン・エリート女性にとって労働市場は閉塞感に満ちていることから生じているということです。

現在ではまた違った理由が生じているかもしれませんが、労働市場が非常に閉塞的であるがゆえに、女性が既存の強固な性別役割分業を利用して、快適でステイタスの高い人生としての専業主婦を希望するという構造は、同じように感じました。
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