富裕層は世界の人びとにどう見られているのか

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Role Models and Scapegoats: Perceptions of the rich in Japan and other countries
Rainer Zitelmann, Yuya Watase (Translator)
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マイノリティに対する偏見に関する学術的な研究は、ユダヤ人、黒人、性的マイノリティなど、さまざまな集団に焦点が当てられてきた。また、階級差別の研究の文脈で、貧しい人々に対する偏見に関する研究も増えてきている。一方、あるマイノリティに関する偏見、つまり富裕層に関する偏見についてはほとんど調査されていない。
富裕層や超富裕層が世間の批判の的になることが多くなっている。歴史上しばしばそうであったように、富裕層は社会の否定的な発展のスケープゴートになってきた。ライナー・ツィテルマンは、富裕層に対する偏見に関する初の国際的な調査を行った。著名な研究機関であるアレンズバッハとイプソスMORIの協力のもと、アメリカ人、ヨーロッパ人、アジア人に、富裕層に対する意識について質問した。
本書は日本向けの特別版で、日本人が富や富裕層についてどのように考えているのかについて新しい章を追加している。本書を読むと、日本人は韓国人やベトナム人と同様、ヨーロッパ人に比べて富に対して非常に肯定的な見方をしていることがわかる
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無気力
4.0 out of 5 stars
富裕層は世界の人びとにどう見られているのか
Reviewed in Japan on April 12, 2023
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邦題は本書の内容を単純化し過ぎた感がある。確かに、富裕層が嫌われているということの考察もないわけではないが、原題にあるように、日本や世界各国で富裕層がどのように認識されているのか分析したというのが本書の内容を正確に要約している。
本書は、主にAパートとBパートの二つのパートから構成されている。
Aパートは、偏見やステレオタイプ、嫉妬やスケープゴートといった社会心理学分野の先行研究をまとめた理論的な部分となる。がちがちの研究書といった感じで、決して読みやすいわけではないが、興味深い先行研究の数々が紹介されており、ここだけでも十分に読む価値がある。
Bパートは実証部分であり、日本を含めて世界各国で実施したアンケート調査の結果をもとに、富裕層がどのように認識されているのかを分析する。加えて、ハリウッド映画の中で富裕層がどのように描かれているのか分析も行われている。ここも興味深い結果を示していると思うが、書籍の完成度ということで言うと、若干の難がある。というのも、アンケート調査の結果について単調な図表が続き、なおかつ、図表の中の数値だけを取り出したような文章が説明書きとしても続くからである。
総じて、これまであまり関心が払われてこなかった富裕層に対する社会的認識に焦点を当て、理論から実証まで一貫した議論が展開された良書である。何よりも、日本人の大半は、世界の他の国とは異なり、富裕層を肯定的にとらえているというのは興味深い。
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