2019-10-12

「トランプ政治は反キリストだ!」米国の宗教家が断言 | 「大統領は、神のかたちを傷つけている」 | クーリエ・ジャポン



「トランプ政治は反キリストだ!」米国の宗教家が断言 | 「大統領は、神のかたちを傷つけている」 | クーリエ・ジャポン




「大統領は、神のかたちを傷つけている」
「トランプ政治は反キリストだ!」米国の宗教家が断言


ジム・ウォリス(Jim Wallis) 1948年、米国ミシガン州生まれ。アメリカのキリスト教神学者、作家、説教者、政治活動家。「Sojourners(ソージャナーズ)」誌の創始者・編集者、またワシントンD.C.拠点の同名共同体の創始者として知られる。キリスト教を基礎にした平和や社会正義の運動を半世紀近く続けている
Photo: NowThis


クーリエ・ジャポン


Text by Yuki Fukaya



2020年の米国大統領選に向けて、トランプを真っ向から断罪する宗教家が登場し、全米がざわついている。

アメリカのキリスト教というと、「福音派」「原理主義者」「宗教的右派」で「同性愛反対」「中絶反対」、ドナルド・トランプ大統領の熱心な支持層というイメージが強いかもしれない。

だが、そうしたキリスト教に批判的な、別のキリスト教派もアメリカには多い。そのひとつで、イエスの福音を「社会正義」の問題と解釈し、さまざまな格差や差別に取り組む「ソージャナーズ」という共同体がある。

それでもこの共同体は、「福音派」の一派と見なされている。聖書の言葉を教会の伝統より重視するという点では、福音派の特徴を帯びているからだ。ただしその聖書解釈が多分に「反体制的」なので、福音派「左派」に位置づけられる。

このソージャナーズの主宰者ジム・ウォリスが動画メディア「ナウ・ディス」上で語った強烈なメッセージを緊急全訳でお届けしよう。

「神のかたち」をした人々
イエス・キリストに従う者たちは、理解しなければなりません──この地上を歩む人はみな、「神のかたち」(「創世記」1章参照)を有している。それゆえ、人種差別、性差別、同性愛嫌悪は、まさにその神のかたちに対する攻撃なのだと。

いまやわれらが大統領は、神のかたちを傷つけることを日課としています。しかしそれは、彼から始まったわけではありません。トランプはこうしたことすべての原因ではありません。結果なのです。




ドナルド・トランプ米国大統領(2019年10月9日、ホワイトハウスのルーズベルトルームにて)
Photo: Jabin Botsford / The Washington Post / Getty Images
わが国はいま、最悪の悪霊を信奉しています。そしてどこまでひどく、深いところまで落ちていくのかをさらけ出しているのです。

よりよいアメリカ、よりよい未来があるはずです。しかしこの未来は選択を、しかも道徳的選択を必要とします。われわれの誰も、その選択を避けては通れません。

自分たちは「政治的でない」というキリスト者たちも、2020年11月の大統領選が近づくにつれて、なんらかの選択をすることになります。

沈黙を選ぶこともできますが、それは現状・体制の肯定になります。反真理、反移民、白人ナショナリストの政権にそのまま投票することもできます。

あるいは、こうした体制や偏見に反対する投票もできます。この選択は、神のかたちにはなお価値があると表明するものです。


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トランプは「反キリスト」だ!
いまから使う言葉は、物議を醸すもので、不遜に聞こえるかもしれませんが、それでも語られねばなりません。

ある政策や言葉が、イエスが語り実行したことすべての対極にあるとき、それは「反キリスト(アンチ・クライスト)」なのです。

アメリカの白人ナショナリズムは、人種差別というだけでなく、反キリストです。

移民を非人間的に扱うのは、思いやりに欠けるというだけでなく、反キリストです。

女性にセクハラ、虐待、暴行を働いて不当に扱うのは、性差別的というだけでなく、反キリストです。


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教会がそのようにはっきり、大胆に名指しして語らないのは、イエス・キリストと、またその教えとの結びつきを失っていることの証拠です。

白人福音派の一部がトランプをほめたたえているとき、そこではイエスについて、また彼が示したラディカルな弟子の道について、ほとんど語られていないことに気づくでしょう。

イエスは、徹底してラディカルな人物だったのです。世界をひっくり返す愛のビジョンと、権力に対する新たな見方を、彼は告げ知らせたのでした。


イエスなら「温暖化」をどうする?
この褐色の肌をしたユダヤ人のラビは、もの申すことがたくさんありました──政治について、あるいは、道徳的な価値基準を市民生活にどう当てはめるかについて。

いまだったら、イエスは「ブラック・ライブズ・マター」運動を称賛するでしょう。隣人たち、とくに移民や難民とも肩を並べているでしょう。




「ブラック・ライブズ・マター」のデモに参加する宗教的指導者や活動家ら(2019年8月11日、ニューヨークにて)
Photo: Gabriele Holtermann-Gorden / Pacific Press / LightRocket / Getty Images
イエスは、温暖化するわれわれの惑星を守ろうと躍起になるでしょう。その活動が大衆受けしてもしなくても。

イエスは、国境で非人道的な扱いを受けている家族のために、なんとしてでも闘うでしょう。


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いまこそ、このイエスをアメリカの諸教会にふたたび紹介するときです。

わが国のあまりにも多くの教会、ことに白人教会が、自分たちは「政治的でない」からと言い訳して、沈黙を守っています。いたるところで目にする、異常な不正義に介入しないでも済むようにと。

それに対してなんと言うべきでしょう? 「もうたくさん」です。











イエスのメッセージの核心

政教分離には賛成ですが、それはわれわれの市民生活と価値基準を分離するということではありません。

イエスは非常に強烈な問いかけをする人として伝えられています。たとえば、「わが隣人とは誰か」「真理とはなにか」といった問いです。しかも、こうした問いをよく、政治家たちに真っ正面から投げかけました。

アメリカの宗教右派は、イエスのメッセージの核心を忘れてしまっています──2つの特定の問題に重きを置きすぎるあまりに。

はっきり言いましょう。キリスト者であるとは、中絶と同性婚に対する立場だけで判断できません。




典型的なアメリカの福音派教会。米国テキサス州ダラスにて
Photo: Ilana Panich-Linsman / The Washington Post / Getty Images
キリスト者であるとは、隣人、なかでも自分自身とまったく異なる人たちを必死で守ることです。

キリスト者であるとは、白人ナショナリズムとホワイトハウスの反キリスト政策に立ち向かうことです。

この事実をうやむやにはできません。


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選挙で勝つだけでは足りない
あらゆる身の上にある「神のかたち」を擁護することが、全キリスト者の使命です。

「LGBTQ」はすべて、神に愛されている人々を意味する頭文字です。

すべての人の生には、国境にあろうと、胎内にあろうと尊厳があります。

中絶をした女性たちも、神に愛されている人々です。

弱くされた存在をどう守るか、われわれはさらに深く考えていくべきです。

聖書には、貧しき者について書かれた箇所が2000あります。2000もです!

イエスは語っています。最も大事な人々とは、「この最も小さい者の一人」と彼が呼んだ者たちだと(「マタイ福音書」25章参照)。今日のわれわれの政治で、最も軽んじられている者たちのことです。

「すべての人々を無条件に愛するのが教会だ」と覚えてもらいたいはずです。

われわれは、前に進む道をどう一緒に見出していけるでしょうか。

選挙はとても重要ですが、選挙で勝つだけでは足りません。ただ左だとか右だとか言うのではなく、いまこそもっと深くいくときです。

われわれの政治によって、われわれの信仰や価値基準が定められるのではありません。むしろ、われわれの信仰や価値基準で、政治を定めていくこと──そこから始めるのが相応しいのです。


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