
「左翼という勢力が2割を切ったのは、始まって以来のことが起きた感じがしている。明らかに北朝鮮のおかげもあるだろう」
麻生太郎副首相兼財務相が10月26日の都内での会合で行った発言。総選挙の「自民党大勝」は「北朝鮮のおかげ」だというわけです。
立憲民主党など野党は「とんでもない発言だ」(10月27日、長妻昭立憲民主党代表代行)と批判し、きたる特別国会でも追及する構えです。
確かにこれは「とんでもない発言」です。ではどこが問題なのでしょうか。
野党側は「わが国が北朝鮮の核とミサイルの脅威にさらされていると自民党も強調していた。…危機を利用したと受け取られかねない」(長妻氏、10月28日付共同配信)からだといいます。果たしてそうでしょうか。
麻生氏は翌日、発言の趣旨は「国民は北朝鮮の危機に対応できる政府として(自民党を)選んだ」(10月28日付共同配信)ということだと“釈明”しました。自民党と同じ「北朝鮮の危機」論に立つ限り、この”釈明”に反論できないはずです。
麻生氏の「北朝鮮のおかげ」発言の核心は何か。
それは、「北朝鮮の危機」自体が、安倍首相を先頭に自民党が作り出したフィクションだということです。
このかんの経過を振り返ってみましょう。
8月20日 米韓合同軍事演習開始
8月29日 北朝鮮がミサイル発射
8月31日 航空自衛隊(F15)と米軍(B1)が合同演習
9月11日 国連安保理が制裁決議
9月19日 米トランプ大統領が国連演説で、金正恩委員長を「ロケットマン」と揶揄し、「北朝鮮を完全に破壊する」と公言
9月20日 安倍首相が国連演説で「必要なのは対話ではなく圧力だ」と強調
9月21日 北朝鮮の金正恩委員長がトランプ演説を「最悪の宣戦布告」と批判
9月25日 安倍首相が「北朝鮮の危機」を前面に「国難突破解散」を表明
10月16日 米韓合同軍事演習
以上で明らかなように、アメリカは常に韓国との合同軍事演習で北朝鮮を挑発し、安保法制(戦争法)成立以降それに日本(自衛隊)を公然と巻き込み、さらに国連を使って北朝鮮への圧力を強めてきました。
北朝鮮のミサイルはこれに対する対抗手段であり、それはまさに「挑発ではなく反発」(金時鐘氏・詩人、9月16日付朝日新聞)というべきものです。
アメリカが先制攻撃しない限り、北朝鮮が先に攻撃することはありえません。トランプ大統領自身がそれをよく知っているからこそ、日本に来て安倍首相と能天気にゴルフに興じようとしているのではありませんか。
総選挙で安倍・自民党が行ったことは、架空の「北朝鮮の危機」を自分で作り出しておいて、それに対応できるのは自民党政府だと言って票を集める。まさに典型的なマッチポンプです。この作為を思わず吐露したところに麻生発言の核心があります。
その麻生発言の核心を野党が突けないのは、米日両政府の戦略である「北朝鮮の危機」論の土俵に野党も上がっているからにほかなりません。
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