【宣伝】拙著『忘却のための「和解」 『帝国の慰安婦』と日本の責任』(世織書房、2016年)について |
今月末に拙著『忘却のための「和解」 『帝国の慰安婦』と日本の責任』が世織書房より刊行されます。この一年半にわたりブログや論文で書いてきた『帝国の慰安婦』批判の論考を大幅に加筆・修正したものですが、半分以上は新たに書き下ろしました。
この本では、『帝国の慰安婦』と礼賛論の主張をそれぞれ検証し、本書には日本軍「慰安婦」制度についての日本軍の責任の矮小化、被害者たちの「声」の恣意的な利用、日本の「戦後補償」への誤った根拠に基づく高い評価などの致命的な問題があることを指摘しました(詳しくは末尾に目次を添付しますので参照してください)。著者の朴裕河氏や擁護者たちは『帝国の慰安婦』への批判はいずれも誤読によるものであると反論していますが、こうした主張こそが本書を「誤読」しており、被害者たちの怒りには相応の根拠があるというのが私の結論です。
むしろ問われねばならないのは、これほどまでに問題の多い本書を「良心的」な本としてもてはやした、日本の言論界の知的頽廃です。なぜほとんどの日本のメディアは、日本軍「慰安婦」問題に関する日韓外相「合意」を歓迎し、違和感を示すことすらせず、むしろ嬉々として少女像の「撤去」を韓国政府に求めるのか。その思想的な背景を探るためにも、『帝国の慰安婦』の登場と日本の言論界における礼賛現象の意味を考えることは重要であると私は考えます。この本が、『帝国の慰安婦』がもたらした混乱と安易な「和解」論をただし、日本軍「慰安婦」問題のまっとうな解決とは何かを考える一助となれば幸いです。ぜひ手にとってお読みください。
3月19日のFight for Justice主催のシンポジウム「「慰安婦」問題と現代韓国 ――日韓「合意」の何が問題か 」にて販売を開始します。書店には遅くとも月末には並ぶはずです。価格や注文方法など、詳しくは添付のちらしを御覧ください。
(鄭栄桓)
『忘却のための「和解」 『帝国の慰安婦』と日本の責任』(世織書房、2016年)
目次
1 『帝国の慰安婦』、何が問題か
1.「平和の少女像」は何を待つか
2.『帝国の慰安婦』とは何か
3.『帝国の慰安婦』事態と日本の知識人
4.『帝国の慰安婦』批判の方法と課題
2 日本軍「慰安婦」制度と日本の責任
1.『帝国の慰安婦』は日本の責任を問うたか?
2.『帝国の慰安婦』の歴史修正主義「批判」の特徴
3.『帝国の慰安婦』の日本軍責任否定の「論理」
(1)「需要・黙認」責任論・業者主犯説
(2)「需要・黙認」責任論の誤り
(3)軍の「よい関与」論
(4)「国民動員」論と「自発的な売春婦」論の共存
(5)「性奴隷」説批判の問題点
(6)未成年者徴集の軽視とフェミニズム言説の借用
(7)日本の法的責任と軍の犯罪
4.挺身隊理解の混乱
(1)秦郁彦「女子挺身隊勤労令不適用」説の需要と無理解
(2)「挺身隊=自発的志願」説と「民族の〈嘘〉」論
3 歪められた被害者たちの「声」
1.『帝国の慰安婦』は「女性たちの声」に耳を澄ませたか?
2.千田夏光『従軍慰安婦』の誤読による「愛国」の彫琢
(1)「愛国」的存在論
(2)日本人「慰安婦」=朝鮮人「慰安婦」?
3.「兵士たちの声」の復権と「同志的関係」論
(1)古山高麗雄と「兵士たちの声」
(2)否定論者の言説と「同志的関係」論
4.「女性たちの声」の歪曲と簒奪
(1)証言の歪曲
(2)証言の簒奪
4 日韓会談と根拠なき「補償・賠償」論
1.被害者たちが補償を受ける機会を奪ったのは韓国政府だった?
2.〈一九六五年体制〉と『帝国の慰安婦』
(1)〈一九六五年体制〉の動揺
(2)憲法裁判理解の誤りと藍谷論文の誤読
3.日韓会談と請求権問題
(1)「慰安婦」被害者の請求権を「抹消」したのは韓国政府?
(2)「経済協力」は「戦後補償」であった?
(3)在朝鮮日本財産と個人請求権
5 河野談話・国民基金と植民地支配責任
1.『帝国の慰安婦』は植民地主義を批判したか?
2.河野談話・国民基金は「植民地支配問題」に応答したか?
(1)河野談話と植民地問題
(2)国民基金の「償い金」は実質的補償だった?
(3)クマラスワミが日本政府の「説明を受け入れた」?
3.植民地主義としての「帝国の慰安婦」論
(1)植民地支配の問題を戦争の問題に矮小化?
(2)植民地主義としての「帝国の慰安婦」論
(3)「責任者処罰」の否定と天皇の戦争責任
4.『帝国の慰安婦』と「二つの歴史修正主義」
6 終わりに=忘却のための「和解」に抗して
註
参考文献
資料1 日韓外相共同記者発表(2015年12月28日)
資料2 『帝国の慰安婦』朝鮮語・日本語目次対照表
資料3 『帝国の慰安婦』出版禁止箇所(34ヶ所)と日本語版の表現
資料4 朴裕河氏の起訴に対する抗議声明
資料5 『帝国の慰安婦』事態に対する立場
資料6 慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話
資料7 アジア女性基金事業実施に際しての総理の手紙
あとがき
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