茂木外相、外国出身の記者に「日本語分かっていただけますか?」会見のやりとりに「差別的」などとの批判広がる
問題となったやりとりがあったのは8月28日。質問をしたのは英字紙・ジャパンタイムズに所属する女性記者だ。日本政府が新型コロナウイルス感染拡大を受け、在留資格を持つ外国人に対する入国規制を実施していたことに対するものだった。
茂木敏充外務大臣が8月28日の記者会見で、日本語で質問をしている外国出身の記者に対し、英語で聞き直したり、「日本語わかっていただけますか?」などと述べていたことが、SNS上で批判を集めている。「馬鹿にしている」「差別では」などといったコメントが相次いでいる。
問題となったやりとりがあったのは8月28日。質問をしたのは英字紙・ジャパンタイムズに所属する外国出身の女性記者だ。
質問は、日本政府が新型コロナウイルス感染拡大を受け、在留資格を持つ外国人に対する入国規制を実施していたことに対するものだった。
そもそも日本は「水際対策」として、永住者や留学生などの在留資格がある外国人について、特段な事情(葬儀や出産など)をのぞいた再入国を認めていなかった。これは、9月からPCR検査による陰性証明などを条件に緩和されることになっている。
記者はこの点について、「入国規制の緩和の方向性」と、規制が導入された「科学的な根拠を具体的に教えてください」と日本語で質問した。
茂木大臣は「在留資格を持つ外国人の再入国を認める方向でいま、最終調整をしている」とし、その理由について「日本に限らずあらゆる国が水際措置をとっている」「各国の感染症対策や主権に関わる問題で、日本としても適正な措置をとっている」などと答えた。
しかし、二つ目の質問である「科学的根拠」に関する回答はなかった。問題視されているのは、その後のやりとりだ。
外務省のホームページ上には、以下のようなやりとりが記載されている。
「あってはならない行為」
茂木大臣は、まず記者が日本語で質問をしていることに対し、英語で回答。
「馬鹿にしなくても大丈夫です」「馬鹿にしていないです」というやりとりを経たあとに管轄が出入国管理局であることを示し、「日本語、分かっていただけましたか」と述べた。
動画でもそのやりとりを確認できる。「お分かりいただけましたか?」「日本語、分かっていただけましたか?」とのあとに、記者が「はい?」と問い直し、さらに「日本語、分かっていただけましたか?」とのやりとりが続いている。
こうした茂木大臣の振る舞いについて、SNS上では「あってはならない行為」「差別的な問題発言」などという批判が広がっている。
また、茂木大臣自身がハーバード大学の院を卒業している経歴に触れ、言語や多様性に関する体験を自らしているはずではないか、という指摘もあった。
日本社会に潜む、根深い差別感情
日本で暮らす外国人や外国出身者の4人に1人は「日本語が上手く使えない」ことで嫌がらせを受けた、と法務省の調査(2016年度)に解答している。
また、過去5年間に、日本で外国人であることを理由に侮辱されるなどの差別的なことを言われた経験のある人は、「よくある」が2.7%、「たまにある」が27.1%で計29.8%にのぼっている。
実際の差別について聞いた質問では、「日本語がうまく使えないことで嫌がらせをうけた」と答えた人は25.1%だった。
アンケートでは「どうせ日本語が分からないというのが前堤になっている。(女性/20歳代/パキスタン)」という回答も寄せられている。
また、仕事と日本語能力の関係では、調査では「仕事に関する差別の経験には、日本語の会話の程度はあまり関係がないことがうかがえる」と結論づけている。
実際、全体の12.8%だった「勤務時間や休暇日数などの労働条件が日本人より悪かった」という人のうち、「日本人と同程度に会話できる」「仕事、学業に差し支えない程度に会話できる」「日常生活に困らない程度に会話できる」人は82.4%にのぼる。
また、全体では17.1%だった「外国人であることを理由に、昇進できないという不利益を受けた」人のうち、同様の日本語能力がある人が91.3%いた。
茂木大臣が、なぜこのような言動を取ったのかは不明だが、その背景に、日本社会に潜むものと近い差別意識があったとすれば、大きな問題と言えるだろう。
UPDATE
調査結果のデータを一部修正しました。
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