内容(「BOOK」データベースより)
現代政治学の発展に貢献してきた必読文献を体系的に紹介するシリーズ。戦前日本政治の変動を合理的選択論で分析する。1997年の米国政治学会ブック・オブ・ザ・イヤー。戦前の日本政治は、どうして制度的に機能不全に陥ってしまったのか。政治家の個性や日本人の民族性、イデオロギー対立ではなく、アクター間の相互作用と合理的選択の帰結から解明する、画期的研究。
日本政治と合理的選択―寡頭政治の制度的ダイナミクス1868‐1932 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス)›カスタマーレビュー
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日本から
喧
5つ星のうち3.0 ゲーム理論で理解する戦前日本の破滅
2020年1月14日に日本でレビュー済み
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戦前の日本の政治体制が軍部支配になってしまった理由の因果連鎖をたどってゆくと、元老山県有朋が軍部を他の元老や政党指導者からコントロールされないよう制度的に隔離したことにたどり着くという比較的一般的な理解がゲーム理論的にも正しいことを論証した著作。つまり、山県有朋の策謀は彼が寡頭支配者のひとりとして他の支配者、主には伊藤博文に対する対抗上必然的にとらざるをえなかった戦略的行動であったと理解できるというのである。制度上、寡頭支配者たちは同格であり、彼らはひとりひとり自己の影響力を他の支配者よりも高めるために外部の支持者を調達する必要があったのだと。
逆に言えば、伊藤が政友会を結成したのは主には山県への対抗のためだったということになる。ちょっと違和感はあるが、そうかもしれない。山県が着々と自己の勢力を政府内に築き上げていったのに対して伊藤が遅れをとっていたのは事実だ。人間の行動の理由はひとつではない。山県に対する対抗心もまた政党結成の動機のひとつであったとしてもおかしくはないかもしれない。政党勢力の代表に収まった伊藤に対する政府内の反感が山県の影響力をさらに拡大させたと一般的には考えられていることからすると、自滅行為に思える伊藤の行動は、実は山県による政府掌握の原因ではなくて、本当は伊藤が官僚層をあらかた山県に奪われ政府掌握の手段を失った結果だと理解すべきだということになる。
伊藤と山県の二人が協力関係を築けなかった理由の根本はやはり政党政治を容認する伊藤と断固拒否する山県が終生相容れなかったという事実だろう。しかし、寡頭支配体制はゲーム理論的に見るともともと支配者間の協力関係の形成が困難になる仕組みだというわけだから、二人の対立は個人的な政治的信条の対立だけから生じたのではなく政府の掌握を目指して互いに優位に立とうとした二人の競争からも生じたのだという理解が必要なことをゲーム理論は教えてくれる。政友会を自分の意のままに動く手足にしようと意図していたらしい伊藤にとって政友会の結成は山県とは別ルートからの政府掌握の手段でしかなかった可能性は案外高いかもしれない。
本書の描く体制崩壊の歴史過程の見取り図は、元老たちは相互不信から自分たちの権力全体を引き継ぐ後継者を作り出せず、結果権力を手にした政党勢力も互いに相手に圧倒的優位を与えないようにしなければならなかったがゆえに自らの手足をしばらざるをえず、結果軍部は山県が確立したその独立性を維持することができ、かつ陸海が利益を分け合う協力体制を作り出せたというもの。勢力内部の競争と相互牽制のメカニズムで戦前日本の政治過程をほぼ再現できるというわけである。明快な分析である。しかしゲーム理論にはバリントン・ムアの『独裁と民主政治の社会的起源』のようなファシズム化の社会的基盤に対する比較史的洞察が欠落しており、分析の深度にいまひとつ満足できない。
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Micheal Waltz
5つ星のうち5.0 合理的選択から明治維新の元老達の行動を分析した良書
2011年5月29日に日本でレビュー済み
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明治維新、伊藤博文や山県有朋ら元老たちの行動を合理的選択という側面から分析し、なぜ、彼らが後に第二次世界大戦を招いた制度を構築したのか明らかにした本です。
まず、良書中の良書といえると思います。
維新の元老たちが理想に燃えて明治政府をつくったという切り口で分析されていないところ(日本の歴史にアイデンティティを持たないからできた分析か)にこの本の特徴があると同時に、現在の政治に対しても示唆を与える日本政治の分析が本書では行われていることに驚きを隠せません。
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