2021-03-29

他国より来世を信じない日本人 「死への不安」も強い傾向と帯津医師が解説 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

他国より来世を信じない日本人 「死への不安」も強い傾向と帯津医師が解説 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)


他国より来世を信じない日本人 「死への不安」も強い傾向と帯津医師が解説
連載「ナイス・エイジングのすすめ」

帯津良一2021.1.18 07:00週刊朝日#帯津良一






帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長







冗談を交えながら、教職員にアドバイスする京都大学のカール・ベッカー教授=2013年当時、京都市 (c)朝日新聞社




 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「来世と死の不安の関係」。

【教職員にアドバイスする京都大学のカール・ベッカー教授の写真はこちら】

*  *  *
【死後】ポイント
(1)他国より来世を信じない日本人は死への不安も強い
(2)来世を信じても死の不安のすべてはなくならない
(3)スピリチュアリティーに対して謙虚に心を開こう

 ターミナルケアや死生学を専門分野にしている宗教学者のカール・ベッカーさんとは古いつきあいです。そのカールさんの教え子がうちの病院で臨床心理士として働いていたことがあります。

 藤田みさおさんというとても優秀な方でした。その後、京都大学の博士課程に進学され、現在は同大iPS細胞研究所で特定教授をされています。

 その藤田さんが病院にいた時に書いた原稿が「来世を信じることは死の不安をやわらげるか──がん医療の現場から」というものでした。とても興味深いテーマです。カールさんが編者をした『生と死のケアを考える』(法藏館)という論考集に収録されています。

 藤田さんは国別の死の不安の強さについて、様々な文献によって考察しています。死の不安を心理テストで数量化すると、そういう比較が可能になるのです。その結果、東南アジア人が死を最も恐れない民族であり、欧米人は中くらい、一番死を恐れるのは日本人であることがわかりました。

 なぜそうなるのか。ギャラップ社が行った国際的な世論調査によると(藤田さんが原稿を書いたのが2000年ですから、かなり古い調査です)、死後の世界を信じる人が米国で67%、豪州で43%を占めるのに対し、日本では18%しかいないのです。つまり、来世を信じない日本人は死への不安も強いと考えられます。

藤田さんによると、来世を信じることで、死が怖くなくなるという調査結果はいくつもあるとのことですが、興味深いのは臨死体験者40人へのインタビューです。臨死体験の前後で、死後の世界があると信じる人は47%から100%に増加し、死への恐怖があるという人は78%から0%に減少したというのです。臨死体験は来世の存在の証明にはなりませんが、体験者にとっては実にリアルなものなのでしょう。

 藤田さんは死の不安の内容についても踏み込んでいます。死の不安とは、自己の存在が消滅することへの恐怖感のほかに、苦痛のなかで死んでいく不安、家族や友人と別れてしまう不安、自分が死体になったり埋葬されたりする不安など様々あります。藤田さんは病院での臨床体験を踏まえて、来世を信じることで死の不安がすべてなくなるわけではないと語り、そういう実例を紹介しています。その上でこう結論づけています。

「(来世といった)目にみえないもの、科学で明らかにされていないものによって、患者だけでなく、家族や知人、医療スタッフも癒(いや)されることがある。(中略)こうしたスピリチュアリティーに対して謙虚に心を開いていくところに、終末期医療の内容を豊かにしていく可能性が秘められているのではないか」(同書)

 私もまさに、その通りだと思っています。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2021年1月22日号

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