2019-06-09

【現代史家・秦郁彦氏に聞く(1)】慰安婦問題 政府どう取り組むべきか(1/3ページ) - 産経ニュース

【現代史家・秦郁彦氏に聞く(1)】慰安婦問題 政府どう取り組むべきか(1/3ページ) - 産経ニュース

【現代史家・秦郁彦氏に聞く(1)】
慰安婦問題 政府どう取り組むべきか

現代史家の秦郁彦氏=東京都内の自宅(阿比留瑠比撮影)
 日本の国際的なイメージを毀損(きそん)し、韓国との間で政治問題と化した慰安婦問題。朝日新聞は、朝鮮半島で女性を「奴隷狩り」して慰安婦にしたと述べた自称・元労務報国会下関支部動員部長、吉田清治氏の証言を虚偽と判断し、関連記事16本を取り消したが、朝日報道の問題点はどこにあるのか。日本の名誉回復に向けて政府は今後どう取り組むべきか。慰安婦問題に詳しい現代史家の秦郁彦氏に聞いた。(阿比留瑠比、是永桂一)
まず幻の反論文書 公開を
 --政府は今年6月、慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野洋平官房長官談話の作成過程に関する検証報告書を公表した
 「政府が次にやるべきことは、河野談話の見直しの前に1996年の(慰安婦を性奴隷と認定した国連の)クマラスワミ報告書について、政府が非公開としている『幻の反論文書』を公開することだ。ク報告書がその後の国連人権委員会(現・人権理事会)の動きや、2007年の米下院による慰安婦問題での対日非難決議につながった」
----

 《「幻の反論文書」はク報告書に対し、吉田清治氏の証言が引用されている点など具体的な事例を示して「客観的資料は無視」「事実調査に対する姿勢は甚だ不誠実」「法的には成り立たない恣意(しい)的な解釈に基づく政治主張」など逐一、反論した。ところが、当時の日本政府はこれを途中で引っ込め、その後は非公開としてきた》
 --日本外交は歴史問題に関し、いつも「もう法的に決着済み」「すでに何度も謝罪した」というばかりで事実関係を争わない
 「『反論文書』の件は一つの分水嶺(ぶんすいれい)だった。それまでは日本も一応、言うべき反論、やるべき指摘はやっていた。河野談話にしても、事務官僚の限界はあったが『強制連行』という用語は突っぱねていた」
 「ク報告書に対する反論文書は今でも生命力があり、直す必要もない。一番の長所は、日付が古いことだ。96年当時の反論文書となれば言いがかりをつけにくい。なぜ引っ込めたかの経緯を含めて積極的にオープンにすべきだ。このまま他国を刺激したくないという日本外交の風習を続けていたら、歴史戦争は負けてしまう。非公開といっても、東京電力福島第1原子力発電所事故における吉田昌郎所長(当時)の聴取記録『吉田調書』でも公表したのだから」
《秦氏は平成7年7月、来日したクマラスワミ氏と都内で面談し、
  • (1)吉田清治氏は「職業的詐話師」
  • (2)暴力で連行されたと申し立てた慰安婦の証言で、客観的裏付けが取れたものは一例もない
  • (3)慰安婦の雇用契約関係は日本軍との間ではなく、業者との間で結ばれていた-などを説明した。

ところが、ク報告書には秦氏が「大多数の慰安婦は日本軍と契約を交わしていた」と述べたと記述されていた。秦氏は抗議の申立書(英文)をクマラスワミ氏に届けたがなしのつぶてだった》
【プロフィル】秦郁彦
 はた・いくひこ 昭和7年、山口県生まれ。東京大学法学部卒。プリンストン大学客員教授、千葉大学教授、日本大学教授を歴任。平成5年『昭和史の謎を追う』で菊池寛賞受賞。著書に『慰安婦と戦場の性』など。今年6月20日に政府が報告書を公表した「河野談話作成過程等に関する検討チーム」に参加。

No comments: