2019-06-09

99 慰安婦と戦場の性 秦郁彦/著

慰安婦と戦場の性 秦郁彦/著

日本人にとって「性」とは何なのか? 慰安婦とは何だったのか? 戦時下では何が行われていたのか? 慰安婦問題はなぜ波及したのか? 第2次世界大戦下の多くの事例をもとに、公娼制度の起源から諸外国の慰安婦の実態や、マスコミ、政界、国連などでの慰安婦問題の論点と広がりを全て解説した決定版「慰安婦問題」全書!

内容(「BOOK」データベースより)

日本人にとって、「性」とは何か?公娼制度の変遷から「慰安婦」旋風までの全てが分かる!日本の慰安婦制度の歴史と実態をもとに、豊富な資料・証言と諸外国の事例から、拡散する慰安婦問題の論点を全て解説した決定版百科全書。

内容(「MARC」データベースより)

日本人にとって「性」とは何か? 公娼制度の変遷から慰安婦旋風まで、日本の慰安婦制度の歴史と実態をもとに、豊富な資料・証言と諸外国の事例から解説。

登録情報



単行本: 444ページ
出版社: 新潮社 (1999/6/1)


27件中1 - 10件目のレビューを表示

陸田竜平

5つ星のうち5.0英訳がやっと出ます2018年8月1日
形式: 単行本Amazonで購入
 かの問題について、世界的に見ても質量とも第一級と言い得る本書、ようやく英訳刊行。

 『Comfort Women and Sex in the Battle Zone』
    Ikuhiko Hata (著)
    ハードカバー: 404ページ
    出版社: Hamilton Books (2018/8/15)
    言語: 英語
    ISBN-10: 0761870334
    ISBN-13: 978-0761870333
    発売日: 2018/8/15
    商品パッケージの寸法: 15.2 x 22.9 cm

 当然、当amazon.co.jpでも予約受付中ながら、8/15発売のためか、8/1現在製品リンク不可の模様。後日リンクを貼ります(しかしこの発売日、意図的なのかどうか…)。いずれにしても、某方面から圧力があったという第5章も漏れなく訳出されているようで喜ばしい限り。ネット上などで散見される海外との不毛な論争にも資するところ大なのでは。ちなみに、同著者の『昭和天皇五つの決断』も(やはり長い時を経て)英訳済み。これもアチラの人たちにはぜひ読んでいただきたい一冊。

 ついでにと言ってはご無礼ながら、司馬遼太郎『竜馬がゆく』も英訳刊行中。司馬&ドナルド・キーンの対談『日本人と日本文化』『世界のなかの日本』も今年が出ていて、これまた慶賀の至り。山本七平『昭和天皇の研究』、渡辺京二『逝きし世の面影』なども、誰か外国語訳してくれないものか。

 以上、ご紹介までに。

 【8/7追記】英語訳の発売予定日が当初の8/15から9/15に先延べされた模様。うーむ…。

 【10/4追記】本日現在、英訳の売れ筋ランキングは以下の通り。まあ、瞬間的なものなんでしょうけど。

    Amazon 売れ筋ランキング: 洋書 - 361位 (洋書の売れ筋ランキングを見る)
     1位 ─ 洋書 > History > World > Women in History
     1位 ─ 洋書 > History > Military > Korean War
     1位 ─ 洋書 > History > Asia > Korea

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マッキー

5つ星のうち5.0英語訳して世界中に広めるべき本!2018年6月23日
形式: 単行本Amazonで購入
慰安婦問題の本、歴史書としては最高傑作だと思う!英語訳出版を妨害する勢力が存在するようだが、ネットクラウディングででもお金を集めて絶対に世界中に広めるべき本。
慰安婦を利用して日本人を貶める謀略が韓国や中国によって進められているが、それに対抗する真実を伝える本。

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VINEメンバー
5つ星のうち5.0日本の謝罪は不十分なのか?2017年5月4日
形式: 単行本Amazonで購入
慰安婦問題は、2015年に日韓合意が形成された後も、慰安婦像の設置が行われ、一向に終息の気配がみられません。
日本は、戦後70年を経過してもなお、謝罪しきれない罪を犯したのでしょうか。
そんな日頃から気にかかっていた問題について、自分の考えを整理したいという思いで、手に取ったのが、本書でした。

本書は、当初、新書版のイメージで購入したものですが、中を見ると、上下二段組で、430ページほどあり、かなりのボリュームがあります。
その分量は、それだけ著者がこの慰安婦問題に熱心に取り組んでいることを示しています。

私が一番関心を持っていたのは、果たして、強制連行はあったのかどうか、ということでした。
ニュースで見る限りでは、強制連行はなく、中心的に報道してきた朝日新聞も誤りを認めたようですが…。
もしも、強制連行があったとしたら、それこそ謝罪だけでは済まず、国家として補償をしなければ、元慰安婦や国民を慰安婦にさせられた韓国は、納得しないことでしょう。

この点について、本書では、強制連行はなかったと断言しています。
第七章「吉田清治と詐話」にあるとおり、吉田という一人の人物が強制連行したという作り話を公開し、その内容について、朝日新聞をはじめとしたマスコミが取り上げて、広まったというのが実態とのことです。

戦前の日本は、公娼制があり、特に戦場では、兵士による強姦や、それに伴う性病の蔓延を防ぐという目的で、軍の監督のもとに慰安所が設置されたという経緯があります。
そうした類似の制度は、ドイツ、イタリア、アメリカ、イギリス、ソ連などにもありました。
もちろん、他の国も行っていたから、日本が謝る必要がないとは言いません。
斡旋業者に騙されたり、借金のかたにされたりと、自分の意志に反して慰安婦にさせられた人にとっては、そうした慰安所を監督していた日本に対して、謝罪を求めるのは、ある程度、仕方のないことだと思います。
しかし、日本は、既に河野談話を初めとして、国のリーダーが謝罪の言葉を述べています。
また、完全には機能しなかったもののアジア女性基金を設立し、金銭的な償いができるよう、努力もしてきているのです。
そして、冒頭にも記したとおり、2015年には、日韓両国で合意し、「最終的かつ不可逆的に解決」したはずです。

それなのに、この慰安婦問題がくすぶっているというのは、全く理解できません。
慰安婦像の撤去は、韓国政府の責任で行うべきでしょう。
韓国は、地政学的にこれからも隣国であり続けるし、友好的な国であってほしいと願っていますが、この問題に関しては、日本政府は誠意を尽くしていると思われ、そうした日本の対応を是非とも理解してほしいものです。

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図書館司書のプロ

ベスト1000レビュアー
5つ星のうち4.0これがほぼ正しいんだろうなとは思います2019年3月18日
形式: 単行本
根拠となる資料が無いとか筆者の主観が入ってるとか、書いてる人いますが、
歴史の本なんてそんなものですよ。司馬さん見て下さいよ。史実も小説もかなり似たようなもんですよ。
読む人が自分の頭で正解を考えればいいだけで、吉田清治の酷さを完全に打ち消すためにも、
ある程度の主観を入れる必要はあるかと思います。朝日新聞は未だにちゃんと謝罪してないですし。
ケントさんがあれだけ追及しても公務員のように逃げてしまう。
歴史を教える教師たちもまだ日本軍は酷いことをしたと思ってる人の方が多いと思います。
洗脳された自虐史観を溶かしていかないと、日本人の人格形成にも関わるので、
そう言う意味でもこの本は大事で意味があると思います。また新しい本も作って欲しいです。

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Amazon カスタマー

5つ星のうち5.0吉田清治の偽書を暴いた丹念な仕事。慰安婦問題について必読の文献。2015年12月29日
形式: 単行本Amazonで購入
日本軍が済州島で慰安婦狩りをしたという吉田清治の著書が偽書であることを論証し、慰安婦問題に就いて韓国の挺隊協が主張してきた「性奴隷」説を真っ向から批判する。著者は、日本をはじめ世界の公娼制度の歴史をたどり、また慰安婦の最大多数は日本人であったこと、強制的に狩り出された「少女」像は間違っていることを丁寧に論証する。

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cecedece

VINEメンバー
5つ星のうち5.0これくらい調べないとあきまへん。2015年6月16日
形式: 単行本Amazonで購入
これを読むとイデオロギーとか無意味のような気がしてくる。事実は事実として認識して、それが時代に照らし合わせてどうなのかという検証を実証的に行うという行為がきわめて重要だということを改めて再認識しました。この関係の本でこれ以上のものに出会ったことがないです。
あまりにも短絡的な報道、提言が多すぎるような気がします。
ただ改めて思ったのは吉田という男はけしからん奴ですな。

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fireball

5つ星のうち5.0慰安婦問題を語るには避けて通れない本2014年11月27日
形式: 単行本Amazonで購入
著者の秦氏は実際に現地調査を行い、吉田清治の虚偽を暴いた慰安婦問題の先駆者です。
その秦氏が日本軍の慰安婦制度をはじめ、吉田清治と朝日新聞の欺瞞性を鋭く指摘しているのが本書です。
何故事実と違うことが世界に拡散し、日本がいわれのない非難を浴びせられるのか、いわゆる「従軍慰安婦」問題を真剣に考えるにはうってつけの本です。

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天宅壮八

5つ星のうち5.0不朽の慰安婦百科大全2014年8月31日
形式: 単行本Amazonで購入
 本書の初版が出た1999年6月、既に、吉田清治の吐いたウソがほぼ完全に整理され並べられていました。すなわち、本書「第七章 吉田清治の詐話」では、吐いたウソが図表化され、秦郁彦氏と吉田清治の交わした会話までもが事実として記されています。

 ところが朝日新聞社が間違いを2014年8月5日まで正式に認めなかったばかりに、事実関係の確認よりもムードや政治的な思惑が優先され続けてしまった。吉田清治の詐話や謝罪旅行が無ければ起きなかったことは多い。たとえば国連クマラスワミ報告やマクドゥーガル報告には、あきらかに吉田清治詐話に依拠した表現が継承されたまま今日に至っている。それがとうとう2014年7月におこなわれた最終報告に至るまで是正(いわゆる修正主義ではない)されなかったのは何故なのか。アンフェアな活動をする人権派僭称者の所為であるとおもわれます。

 たとえば、本書の索引には武者小路公秀や植村隆の上司であった松井やよりら、特定の「人権派」活動家が複数のページに亘って登場している事実が確認できる。これは何を意味するか。検索エンジンに彼等の名前を放り込んでみると、今でもジュネーブで他の問題にチョッカイを出しているのが判ります。ク報告やマ報告の致命的瑕疵は是正せぬまま八面六臂に「人権派」としての活動に携わる人々は、いったい何を考えているのか。

 情緒論や政策論は冷静な討議や比較論を阻害する。一旦、「空気」が構築されると誰も反論を受け付けなくなってしまいがちです。朝日新聞社は、結果として、30年以上も世論のそういった性質を悪用し続けました。

 ともあれ、本書は、古今東西普遍的に在り続けてきた「戦場の性」問題を第五章などで余すところなくしっかりと網羅し、その上で日本軍についても冷静に事実を挙げており、脚注も索引も巻末付録史料等も丁寧に仕上げられているので、初版が出て以降も新事実があかるみになったにもかかわらず、骨子に於いてもディティールに於いても、不朽の百科大全として、大いに重宝しているのであります。

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yarisan

5つ星のうち5.0日本人必読の書2014年10月18日
形式: 単行本Amazonで購入
朝日新聞の捏造記事から始まった慰安婦詐欺の欺瞞を論理的に暴く良書。
日本人必読の書、学校での使用を義務化すべきでしょう。

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5つ星のうち4.0大事な問題2013年9月21日
形式: 単行本Amazonで購入
日本にとって対韓国世論に対しもっとも重要な内容
であり、日本人が理解すべき本である。

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27件中11 - 20件目のレビューを表示


アマゾン鹿

5つ星のうち5.0客観的、中立的で信頼できる。2013年7月8日
形式: 単行本Amazonで購入
文字通り慰安婦と戦場の性の問題についてこれより詳しい書はない。多くの人に読んでもらい当時の実態を知ってもらいたいと思う。橋本発言は全く正しい。さらに発言を続けていただきたい。

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目から鱗

5つ星のうち3.0辞書ですね。2013年6月18日
形式: 単行本Amazonで購入
読破すれば大変な論客になれますが、小さな字で部厚くて時間に余裕が必要です。辞書的には重宝しています。

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サトぽん

5つ星のうち3.0ちょっとした調べものにはやっぱり便利だがそれだけ2014年6月21日
形式: 単行本Amazonで購入
正直、慰安婦の本のレビューを自分が書くとは思わなかったが、再読したのを機会にこちらを見たところ、参考になる有益なレビューが多い。謝意を表する意味でも、私も書きたくなったというところ。

私は「朝鮮に関しては、狭義の強制連行は(あまり)なかったと思う派」であるが、本書の立場には同意できない。著者は慰安所の経営に軍が関わっていたことを「常識」とし、「告発のような形」で、記事を掲載した、吉見義明と朝日新聞のやり方を「トリック」と非難するが、それを言うなら、ある世代以上では、ほとんどの人間が、日本が植民地朝鮮を、内地と平等に扱っていたはずがない、と「常識」として思っているはずである。そもそも、吉見が当時、発表した資料は、関連資料の精査を経て、本書刊行後、永井和によって新しい意味を与えられ、その価値は、もはや決定的なものになりつつある。

古臭い講談調の語り口は、東大法学部出身の元官僚らしく、いかにもいやらしい印象を与えるが、内容も既に古い。例えば、軍の慰安所管理システムでは、売春施設経営者たる軍隊が、監視役の警察の役も兼ねるということに、一切、言及がない。著者は、露悪的に、憲兵を娼家の用心棒にたとえているが、そのような比喩が可能なこと自体に、このシステムの問題があることに気づいていない。手厳しく言えば、吉見を初めとする他の研究者のの発掘した資料に、偉そうに冷笑的なコメントを加えるだけで、システムとして慰安所を捉える視点が全く欠けている。個別の事例をいくら並べ立てたところで、問題は見えてこない。

中国の漢口慰安所は、日本軍慰安所の最初期からの施設で、故小野田寛郎が昨年、漢口の慰安婦はほとんど商売女だったと証言し、物議を醸した施設である。永井和は「日本軍の慰安所政策について」で、慰安所開設に先立って、軍に慰安婦集めを依頼された周旋業者が、軍の依頼であることを公言して、募集活動を展開、内地の警察とイザコザを引き起こした例を紹介している。結局、ゴタゴタのあげく、軍と内務省の連絡の下に、内務省の警保局長は、21歳以上で性病感染のない「醜業従事者」つまり現役の娼婦で、北支、中支方面へ向かう者にのみ「醜業ヲ目的トスル」渡航を「黙認」するという、通牒を出すことになった。

つまり、この時期の中国での慰安所が、内地出身者の場合、ほとんど売春経験者で構成されていたのは、当たり前の話。軍と警察の軋轢回避の産物である。小野田の見たのはその時期の漢口慰安所の姿だ。

なぜ、このような通牒が出されたかについて、詳しくは、永井論文(WEBで見られる)を参照して頂きたいが、当時、日本の植民地であった朝鮮でも、同じような通牒は出されたのだろうか。永井は触れていないが、本書には、おそらく出されなかったこと、出されたとしても、まともには運用されなかった事、皮肉にも、内地では警保局長の通牒は、厳格に守られたこと、が推察される資料が掲載されている(長いので原文の載ってたサイトからコピペ。これも有名な資料である)。小野田が漢口で慰安所を見学したのは武漢占領(1938年)の数ケ月後だから、ほぼ同じ年の証言であると考えてよかろう。

「コノ時ノ被験者ハ、半島婦人80名、内地婦人20余名ニシテ、半島人ノ内花柳病ノ疑ヒアル者ハ極メテ少数ナリシモ、内地人ノ大部分ハ現ニ急性症状コソナキモ、甚(ハナハ)ダ如何(イカガ)ハシキ者ノミニシテ、年齢モ殆ド20歳ヲ過ギ中ニハ40歳ニ、ナリナントスル者アリテ既往ニ売淫稼業ヲ数年経来シ者ノミナリキ。半島人ノ若年齢且ツ初心ナル者多キト興味アル対象ヲ為セリ」1939:麻生意見書(陸軍軍医:第11軍兵站病院)

慰安婦に若い朝鮮人が多い理由として、本書では、当時の朝鮮の圧倒的な貧困に起因する、前借金による親の身売りによるものとであると、繰り返し説明されており、それを十分に裏付ける話のように見える。だが、内地慰安婦と同じ原則が適用されれば、現役の娼婦の供給能力は十分のはずであるから、朝鮮人慰安婦も、日本人慰安婦と同じような年齢構成にならなくては話が通らない。というか、「若年齢且ツ初心ナル者」などいてはいけないのだ。

また、日本内地でも朝鮮でも「娼妓取締規則」により、娼妓には年齢制限が課され、前借金により身売りされた場合も廃業できた(民法上の契約の履行義務は残る)ことは、本書でも指摘されている。「娼妓取締規則」は、公娼制の維持と娼妓の保護の両側面を持っていたが、慰安所は軍隊付属の施設なので、当然、この「娼妓取締規則」は適用されない。だとすれば、朝鮮の場合、周旋業者の立場で言えば、娼家へ売り飛ばすより、慰安婦に仕立てあげる方が簡単だとすら考えられるのである。もちろん、金銭的にも旨味は大きい。

もう一つ引用しよう。「日本女性と朝鮮人女性が来たが、後者の方が一般に評判がよいので逐次之に代えることにした。」1939:藤村(野砲第六連隊連隊長)

朝鮮人女性が評判はいいのは、当然、「若年齢且ツ初心ナル者多キ」からだろう。現役娼婦出身の日本人慰安婦は、慰安所経営者たる軍隊幹部からの評判が悪く、徐々に朝鮮人慰安婦に置き換えようとする様子が分かる。なるほど、慰安婦に若い朝鮮人女性が多いカラクリが見えてくるわけだが、敗戦時まで、この傾向は変わらなかったと見るのが妥当だろう(1943:山田清吉(漢口兵站司令部慰安係長))。敗戦間際、軍隊幹部が特定の慰安婦を、おおっぴらに「情婦」のように扱う例が見られたことを考えると、この慰安所管理システムの欠陥は明らかだ。軍隊幹部は、好みの女性を連れてくる周旋業者に目をかけて、重用することもできたのだし、慰安所が将校用と一般兵士用に分かれていた地域も存在したことを考えると、もう、どこに問題点があったのか、いちいち説明するのもウンザリしてくるというものである。

注目すべき点は、この慰安婦に対する三文ポルノ紛いのイメージは、「身の毛もよだつ娘子軍の話」、「軍需品の女」、「売春婦となった従軍看護婦達」(タイトル引用例は本書による)のような、当時の雑誌タイトルが示すように、戦後の日本人の慰安婦に対するイメージと合致することだ。つまり、慰安婦問題の核心は、日本の男達に正確に認識されていたのである。これが社会問題化しなかったのは、日本、韓国側とも、男達にとっては、慰安婦問題は、冷静に分析する必要を感じない、更に言えば、客観的に分析されては困る問題として、認識されていたからである。韓国では「キーセン観光」に象徴されるような女性の権利擁護の問題として、慰安婦問題は始まったのだ。

木村幹は、韓国政府内において、慰安婦問題を担当部局が、教育問題を担当する文教部ではなく、女性家族部であることを指摘して、日本における慰安婦論争が、「強制連行」の有無を問う行為に「逸脱」し、「ガラパゴス化」している現状を論じているが、なるほど、「逸脱」の最大の功労者である著者は、徹頭徹尾、上野千鶴子を始めとする、日韓のフェミニズム運動家は、無理難題を叫ぶだけの、滑稽な内ゲバを繰り返す、まったく無価値なバカな女どもと言うレッテル貼りに終始している。

では、朝鮮人女性が慰安婦になった原因は、貧困による身売が大半だと言うのはどうだろうか。「七つの争点」の中の「慰安婦はどのように集められたか」では、信頼性が高い事例として、9例(7例が軍人の証言)を紹介されている。皮肉なことに、結びの部分で、慰安婦の大多数は、前借金の名目で親に売られたと思われると書いてるのだが、5例(うち3例が朝鮮人、2例が日本人)は、明白に騙されて慰安婦になった例、前借金の例は1例しかない。つまり、著者は、このことすら、実はキチンと説明ができていない。一般読者を舐めているのか、著者は別の箇所でも、まったく同じことをやっているのだが、自称、実証史家のすることではあるまい。

全体的にメリハリがなく、だらだらとした記述が続くので、本書を漫然と読み進めていくと気づかないが、軍慰安所システムの画期点は、もちろん太平洋戦争の開戦時である。1941年の開戦時点で、慰安所は師団規模の部隊が占領地で駐屯体制に入った場合には、必ず設置しなければいけない施設として考えられるようになっていた。ビルマ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポールと爆発的な慰安婦の新規需要が生まれた。前借金縛りやら、詐欺まがい、詐欺そのものの行為によって、連れてこられた慰安婦が大量に動員されたのは、もちろん、この時代のことであるが、特別、著者にとっては、この時期は重要ではないのだろう、他の時期と変わらないあっさりした分析で、まったく役に立たない。

軍慰安所管理システムの矛盾は、敗戦間際に最も慰安婦達に過酷な形で現れる。売春施設の軍規が保たれている時ですら、兵士達の暴力行為は度々問題化しているが、敗戦が濃厚になり、過酷極まる戦場で、異常な精神状態になった兵士達は、日本国籍(朝鮮人、台湾人を含む)の人間に対しても、残虐行為を引き起こすが、P(prostituteの略)と呼ばれ、蔑視された彼女達は、集団レイプ、集団暴行の最大の被害者となった。このことは、本書にも十分に、事例を引用して記述されており、その意味では「慰安婦と戦場の性」と言う題は適当かと思う。

点数は、ちょっとした調べものには、便利ということでつけました。値段相応ではありますけどね。

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カンガルーの足

5つ星のうち5.0発行して14年半も経つというのに...2014年2月4日
形式: 単行本
 444ページ、2段組の「「慰安婦百科全書」のような性格の作品」(あとがきより)。
 読むのに時間はかかるが、読みにくくないし、とても勉強になる。少なくとも、背景やこれまでの議論を押さえず感覚的に慰安婦問題を語ることはなくなると思う。

 戦前の公娼制や各地に設置される慰安所の話には正直うんざりするが、 「海軍にならい、長崎県知事に要請して慰安婦団を招き、その後全く強姦罪が止んだので喜んだものである」と、軍参謀副長岡村寧次大佐の回想録には記されている。(p.64)

 吉田清治が著した「私の戦争犯罪」が1989年に韓国語訳されたときの「済州新聞」(1989年8月14日付)における紹介記事が印象的だ。
 「日帝時代に済州島の女性を慰安婦として205名を徴用していたとの記録が刊行されたが、島民たちは、「でたらめだ」として一蹴、住民の一人は「250あまりの家しかないこの村で、貝ボタン工場から15人も徴用したとすれば大事件だが、当時はそんな事実はなかった」と語り、郷土史家は「この本は日本人の悪徳ぶりを示す軽薄な商魂の産物と思われる」と憤慨」・・・といったことが書かれている。(p.233)

 次の記述も強く印象に残った。
 1944年夏テニアン島で米軍の捕虜になった三人の朝鮮人による陳述として、U.S.National Archivesの資料から引いたもので、
 「太平洋の戦場で会った朝鮮人慰安婦は、すべて志願者か、両親に売られた者ばかりである。もし女性たちを強制動員すれば、老若を問わず朝鮮人は憤怒して立ち上がり、どんな報復を受けようと日本人を殺すだろう。」(p.380)

 今、大きな問題として取り上げられている慰安婦問題について、私達はどれだけのことを知っているのだろう。
 近隣諸国民は、徹底的に反日教育を学んでいる。
 私達は、学校でもメディアからも、そう多くを学んではいないのではないか。
 私達は、自力で、うんざりする事実も含めて総合的に学ばなければいけないのではないか。
 
 そのために、この本は格好の本のひとつだと思います。
 もう発行して14年半も経っていますが、知らないよりも知っていたほうがはるかに良いに決まっています。
 皆で学びましょう!
 
  

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デッチー

5つ星のうち5.0英語版の出版について2016年8月17日
形式: 単行本
本書の素晴らしさは、他多数の方が認められている通りだと思います。

秦氏の近著「慰安婦問題の決算」のあとがきに、本書の英訳、海外出版の
計画を進めていた筆者に対して、ある政府高官が本書の第5章(諸外国に
見る戦場の性)を 海外の読者を刺激する恐れがあるので削除してほしい
との圧力があった旨、その高官の実名入りで経緯が書いてあります。

キリスト教や、退役軍人の勢力が強い国々では、この手の話は、いくら
内容がキチンと論証を積み重ねたものであっても、まだまだタブーなのか?

他書絡みのレビューになってしまい、失礼しました。

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MORINOPOU

5つ星のうち5.0本屋さんが遠い2013年7月8日
形式: 単行本Amazonで購入
近くに本屋さんが無いため送料無料は、非常に助かります。
3文字以上のテキスト入力が必要です。ってどう言う意味??

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kasa2001

5つ星のうち5.0慰安婦問題を知るための大労作2013年5月29日
形式: 単行本
橋下大阪市長の発言に端を発し、再び熱い慰安婦問題である。
その発言が、正に本のタイトルになったかのような本書を、まずはこの問題を考える上での大労作として一読をおすすめしたい。
正直読みながら、大変暗い気持ちになったが、過去を直視し超克する姿勢こそ必要だと思うし、大変勉強させられる本であった。

「なか身!検索」で目次は見ることが出来るが、改めて以下に記す。

第一章 慰安婦問題の「爆発」 P11
1.朝日新聞の奇襲 2.前史−千田夏光から尹貞玉まで 3.原告探しから訴訟へ 4.労働省局長の「失言」

第ニ章 公娼制下の日本 P27
1.公娼制の確立 2.「身売り」の諸相 3.朝鮮半島の公娼制 4.「からゆき」さん盛衰記 5.戦時期の変容 6.戦中から売防法まで

第三章 中国戦場と満州では P63
1.上海で誕生した慰安所 2.性病統計をたどる 3.麻生軍医と楊家宅慰安所 4.南京虐殺と慰安対策 5.軍直営から民営・私物まで 6.二万人の娘子軍 7.漢口慰安所事情 8.関特演の慰安婦たち

第四章 太平洋戦線では P103
1.恩賞課が窓口に 2.南方渡航と輸送船 3.「性病天国」の南方占領地 4.北千島からアンダマンまで 5.慰安所規定は語る 6.敗走する女群−ビルマ 7.敗走する女群−比島 8.海軍の「特要員」 9.終戦と引揚げ

第五章 諸外国に見る「戦場の性」 P145
1.前史 2.ドイツ 3.ロシア 4.英連邦軍 5.対独戦場の米軍 6.対日戦場の米軍 7.米占領軍とRAA 8.ベトナム戦争とその後

第六章 慰安婦たちの身の上話 P177
1.韓国(上)−金学順、文玉珠など 2.韓国(下)−ほとんどが身売り? 3.レイプ型が多かったフィリピン 4.中国−山西省の慰安婦たち 5.台湾 6.インドネシア(上)−マルディエムなど 7.インドネシア(下)−兵補協会のアンケート 8.オランダ−蘭人抑留女性の受難 9.沈黙する日本人女性

第七章 吉田清治の詐話 P229
1.済州島へ 2.かつがれた朝日新聞 3.嘘で固めたライフ・ヒストリー

第八章 禍根を残した河野談話 P249
1.キーワードは”総じて” 2.怒号のなかの聴きとり 3.当事者の告白

第九章 クマラスワミ旋風 P259
1.国連人権委を舞台に 2.ク勧告−熱烈歓迎の声 3.学生レポートなら落第点 4.元慰安婦の身の上話は 5.ジュネーブの攻防戦 6.「留意」の解釈論議

第十章 アジア女性基金の功罪−現状と展望− P287
1.怒号のなかの誕生 2.「償い金」の行方 3.窮地に立つ基金 4.韓国 5.北朝鮮 6.台湾 7.中国 8.フィリピン 9.インドネシア 10.オランダ 11.マレーシア、シンガポール 12.パプア・ニューギニア 13.ミクロネシア

第十一章 環境条件と周辺事情 P321
1.国連と国際NGO 2.日本の支援運動 3.報道機関の論調 4.戦後補償の法論理 5.関釜裁判と慰安婦訴訟 6.フェミニズムの乱流

第十二章 七つの争点−Q&A P357
Q1 「慰安婦」か「従軍慰安婦」か?
Q2 女子挺身隊と慰安婦の混同
Q3 慰安婦の強制連行はあったか?
Q4 慰安婦はどのように集められたか?
Q5 慰安所の生活条件は過酷だったか?
Q6 慰安婦は何人いたか?
Q7 慰安婦の民族別構成は?

以下蛇足。
著者が言うとおり慰安婦問題は「知的アプローチよりも情緒論、政治的思惑が先行して過熱気味の論争は今もつづく」のであり、少々うんざりする程この本が発売された当時と変化が無い状況が露呈されたわけだ・・・。マスコミによるヒステリックなレッテル貼りと、それが定着したと見るやあとは知らんという風な無視とだんまりの構造は相変わらずだ。この問題をどのように解決する考えなのか、肝心の事をマスコミは国会議員に問わない、橋下を弾劾する女性議員に、沈黙してしまった首相や高市らに・・・いつも思うストレンジな新聞、テレビ、国会議員たちである。私は事の成否はともかく、橋下の姿勢は未来志向だと思うのだが・・・。
吉田清治という人物について本書に対する朝日新聞の反論はあったのだろうか?詐話とまで呼ばれてまさか無視したわけでもないだろう?知りたい!テレ朝でやって欲しい・・・。

 

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アキレスの踵

5つ星のうち5.0現在の状況では安部首相が橋下氏を擁護しないのは当然である2013年6月8日
形式: 単行本
本書はこの分野で数少ない基本図書のひとつだ。今回の橋下市長の従軍慰安婦に関する発言を聞いて、一日も早い英訳が待たれることを痛感した。わたしは発言内容には基本的に賛同する。しかし情報発信は戦略的に行うもので、思いつきでしゃべることではない。さらに国際政治の世界と弁護士が活躍する法廷の世界では、勝敗を決めるルールが全く異なる。それが彼にはわかっているのだろうか?

法廷は限られた空間で限られた人間を相手にするので、証拠を提出して真実かどうか証明できた方が勝つ。しかし国際政治では世界中の人間が相手なので、主張の内容が真実かどうかなんてどうでもいいのだ。自国に有利な情報をマスメディアをうまく利用してアピールし、世界中に広められたほうが勝つ。

「ウソも百回繰り返せば真実になる」というのが国際政治の世界であり、情報戦・宣伝戦・心理戦・神経戦の戦場(バトルフィールド)なのだ。橋下氏はこの現実を全く理解しておらず、弁護士のまま国際政治に首をつっこんでしまった。国政政党のリーダーとして失格だと言わざるをえない。

いちばん大切なことは、自国に有利な情報をしつこく繰り返して発信すること。その使命を背負うのは、第一には外務省である。なぜなら政治家には任期があるが、外務省は組織的・長期的に対応できるからだ。しかし外務省はこれまで受身の事なかれ主義を貫き、従軍慰安婦問題での日本の立場を、ネット動画等を通じて世界中に伝えてこなかった。そのせいで日本の政治家が思いつきで発言しても、国際的に通用する状況では全くない。この国際政治の現状を直視すれば、首相が橋下氏を擁護しないのは賢明である。

外務省の本省は忙しいとしても、外郭団体に勤務して高給を受け取っているおじさん達がいるだろう。あの人たちは毎日出勤して何をやっているのか? 国民の税金でワインの買い置きをして保存リストを作るヒマと金があるなら、いちばん大切な情報発信に資金と人員を投入すべきではないだろうか。もちろん本書のような優良図書の英訳も、迅速に手掛けてほしい。

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根本

5つ星のうち1.0この本は、まったく信用できない2016年1月21日
形式: 単行本Amazonで購入
題の通り。なぜ信用できないか。間違いが多いから。具体的に指摘すると、

(1)P192「朝鮮半島においては日本の官憲による慰安婦の強制連行的調達はなかったと断定してよいと思う」
・・・なぜ5件の証言だけで決めつけられるのか。そもそも強制連行を「狭義」のみに限定して考えることには意味がない。証言の中に最も多く出現するのはダマシの手口である。狭義だろうと広義だろうと本人の意思に反して連行すれば「強制連行」だ。具体的に強制連行が記されている資料を挙げれば、『心理作戦班日本人捕虜尋問報告四九号』『極東国際軍事裁判速記録(桂林)』『日本人戦犯供述調書(鈴木啓久、佐々眞之介ら)』『東京裁判証拠書類』『郵政検閲月報に押収された日本人の手紙』『綏陽国境警察隊寒葱河隊作成の日本軍専用朝鮮人料理店(慰安所)の開設状況に関する報告』『関東軍原善四郎参謀が朝鮮まで出かけ女性徴集を総督府に依頼した証言』『村上元曹長の手紙』『満州国第6憲兵団の1944年6月30日付「高等警察新聞」』などがある。また被害者証言でも日本軍人の証言・手記でも騙しや強制が書かれているものは大量にある。これらすべてを偽証だと証明することは不可能。強制連行は、狭義・広義を問わず、朝鮮半島でも、日本軍の占領地でも、いたるところで「あった」のです。
(2)P192「何よりそんな事件があれば、連合軍から戦犯として処刑されたはず」・・・東京裁判は大日本帝国が連合国や占領地住民に対して犯した犯罪について裁いたもので、朝鮮人や台湾人は当時日本人だったため、彼らに対する残虐行為は通例の戦争犯罪とは異なるとみなされ、全く処罰の対象となっていない。秦先生ともあろう人がそんな常識も知らないとは??
(3)P229、吉田清治の話。どうでもいい。これ以外にも証拠資料は大量にあるので。
(4)P269。クマラスワミ報告について誤りを指摘しているが、逆に秦のほうが誤っている部分がいくつもある。
ⅰ、「韓国の一部における混同」→誤り。挺身隊と慰安婦は別に混同されていない。44年の女子挺身隊勤労令以前から挺身隊という言葉は広く使われており、挺身隊という名目で騙して女性を徴集したのは事実。いくつもの証言がある。
ⅱ、「原則として日本内地には慰安所はなかった」→誤り。大戦末期には本土決戦に備えて内地にも慰安所が作られたことが判明している(被害者・日本軍人双方に複数証言あり)。
ⅲ、「日中戦争初期の1~2例を除き軍直営はなかった」→誤り。慰安所は大きく分けて3タイプありそのうちの一つが軍直営。史料『軍人倶楽部利用規定(中山警備隊)』や『海軍慰安所利用内規(第一二特別根拠地隊司令部)』『常州駐屯間内務規定(独立攻城重砲兵第二大隊)』などを参照。
ⅳ、43項についての指摘→誤り。ク報告の43項にはこう書いてある。
「これらの業者は普通、軍司令部により指名されたが、師団、旅団または連隊が直接おこなうこともあったようである。さらに吉見教授は、日本政府によって全ての公文書が公開されておらず、防衛庁、法務省、自治省、厚生省および警察庁の文書庫にまだ眠っているものがあるかもしれないので、徴集の詳細を文書で裏付けることはきわめて困難であると主張した。」
↑この記述は全く正しい。秦は38年3月の通達『軍慰安所従業婦等募集に関する件』を知らないのだろうか?この中に「将来是等ノ募集等ニ当リテハ派遣軍ニ於テ統制シ之ニ任スル人物ノ選定ヲ周到適切ニシ其実施ニ当リテハ関係地方ノ憲兵及警察当局トノ連繋ヲ密ニシ」とある。陸軍省みずからが、"軍が業者を選定して"事に当たれと指示しているのだ。また日本の省庁がまだ数千点もの未公開資料を抱えているのも周知の事実。慰安婦関連のものが隠されている可能性は十分に有り得る。
ⅴ、「20万人の根拠が示されていない。過大である。90%以上が生還したとみている。」
→誤り。後述。
(5)P276。「彼女たちの生活条件がク女史の言うほど悲惨なものだったとは思えない」
・・・慰安婦が性奴隷であったことは今や世界的に定着した事実である。吉見義明などの本には証拠資料付きで記載があるが、彼女らは毎日兵隊との性交を強要され、病死や自殺、殺害に追い込まれ、外出や廃業の自由は制限され、前渡金により経済的に拘束され、性病を移され、軍人から暴力を振るわれ、苦痛から逃れるために麻薬を常用し・・・そのような環境に置かれていた。秦こそこれらの証拠類を全く無視している。
(6)P366。「女子挺身隊と慰安婦の混同」・・・前述の通り混同されていない。挺身隊という名目での慰安婦徴集は広く行われていた。
(7)P377。「慰安婦の強制連行はあったか?」・・・前述のとおり、広く行われた。それに、終戦直後に大規模な証拠隠滅が行われた状況下で、証拠がないものは事実ではない、というような主張はばかげている。さらに、強制連行を「狭義」のみに限定して考えるのは議論内容が古い。
(8)P382。秦自身が信頼性が高いと判断して選んだ9つの証言(手記)。これを読んでみると、9つのうち8つまでが、騙されたり強制されて慰安婦をやらされた例であることが分かる。唯一の救いはHの野本金一の手記で、半強制的になっては治安対策上まずいと判断して中止させた例。あとは全てダマシなどが絡んだ事例である。さらにEの手記など、この後に「女性の手足を寝台に縛り付けて性交を強要した」という場面が出てくるのだが、なぜか(いやどう考えても意図的に)紹介されていない。これでなぜ「大多数を占めるのは、前借金の名目で親に売られた娘だったかと思われるが、それを突きとめるのは至難だろう」という結論になるのか??まったくもって理解に苦しむ。というかこの人、自分でいい加減な結論を出していることに気付いているだろう(笑)
(9)P387。慰安婦急募の広告。他の学者先生の本を読めば、この広告が載せられたのが総督府の事実上の機関紙であることを考えればこの広告は朝鮮総督府が未成年慰安婦の徴募や海外への送出を黙認していた証拠であること、この業者は日本軍が選定した公認業者だということ、掲載期間が短期間で当時の朝鮮人女性の就学率や識字率、新聞購読率を考えれば、自主的応募が多数あったとは考えにくく、女性を抱えている業者向けに出されたものと考えるのが自然である事、などの分析が載っている。それを秦は「格式を重んじるこの新聞が掲載するはずがないと思われるのに、何の手違いか・・・堂々と出ている」はあ、学者ならその理由を分析すべきではないですか?と言いたくなる。
(10)P390。前述したが慰安婦は基本的に性奴隷だった。もちろん、さほど悲惨な境遇でない慰安婦もいたのは事実だが、それなら前者後者両方の証言を並べるべきだ。日本人が慰安婦になる場合は基本的に性病を持っていない成人の売春婦しかなることはできなかったのであり(『支那渡航婦女の取扱に関する件(38年2月)』)、未成年のうちに強制的に慰安婦にさせられた海外被害者とは状況が根本的に異なるはずだ。それを秦は一部の日本人慰安婦や待遇のよかったと思われる慰安婦の証言だけを持ってきて「性奴隷ではない」と論じる。これは著しく公平公正さ、客観性を欠くというべきだ。慰安婦がどのような生活を強いられたのか?というのは慰安婦問題の中でも最も重要な、核心的な部分なのだから、ここは被害国の証言者をまんべんなく紹介し、日本側の資料や証言とも突き合わせしながら、もっとページ数を割いて、慎重に、詳細に、客観的に論じるべきであった。ここだけでなく、秦はこの本全体で、信用できる証言とそうでない証言を自分の都合や主観で選り分けてしまっている感じだ。
(11)P406。慰安婦の数について。秦は「慰安婦の総数は約2万人で、そのほとんどはキャンプフォロワー(売春婦)だった」などと発表して国際的には全く相手にされていない。そもそも、慰安婦の数が書かれた公文書を全部足すだけでも数千人にもなるし、強制が書かれた文書も足すとやはり数千人にもなる((1)参照)。それなら元々あった文書の数字はその数十倍かそれ以上になると考えるのが当然だろう。2万人は少なすぎるし、被害者でも日本軍人でも強制を証言している人は沢山いるのになぜそれらをぜんぶ無視した結論を下すのか?相手にされなくて当たり前だ。

こんなところか。自分は実はざっとしかこの本を読んでいない。細かく読むと間違った知識に毒されてしまいそうでやめておいた。まあおそらくもっと間違いはあるだろう。実際、「秦郁彦 慰安婦と戦場の性」で検索すると、この本のウソや欺瞞を暴くサイトがいくつも出てくる。
この本を全体として見ると、確かに資料やデータは膨大に取り揃えているが、秦はそれに自分の都合や主観を交えて解釈し、適当でいい加減で自分に都合のいい結論を導き出している、そういう感じだ。
秦は1985年、慰安婦問題が表面化する前にはこのようなことを書いている。
「昭和期の日本軍のように、慰安婦と呼ばれるセックス・サービス専門の女性軍を大量に戦場に連行した例は、近代戦史では他にない。その7・8割は強制連行に近い形で徴集された朝鮮半島の女性だったが、建前上は日本軍の「員数外」だったから、公式の記録は何も残っていない。」(『日本陸軍の本・総解説』 (1985年、自由国民社P258)
昔の見解のほうがよほど事実に近いと言えよう。なぜ秦の見解はころころ変わるのか。

この本はとにかく、信用できない本である。★1つ。

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θ

ベスト500レビュアー
5つ星のうち5.0善悪感情論に振り回されない、まともな歴史家の本2007年2月20日
形式: 単行本
従軍慰安婦論争は、「良い」「悪い」という、さも自分が歴史を裁く神になったかのごとき論が横行している。

例えば、「慰安婦はかわいそう」や「慰安婦はいい環境だった」といった主観的で検証のしようのない語を並べる歴史家は多い。

また、何でもかんでも「関与」というあいまいな言葉で逃げを打ったり、逆に「強制連行がなければ何も問題ではない」という極端な論も飛び交う。

重要なのは「慰安婦に何があったか」であって、それ以上でも以下でもない。

秦郁彦氏はそうした真摯な姿勢を忘れていない。

従軍慰安婦問題について知りたい人が最初にこれを読めば、左右両論の無茶さ・強引さはよくわかると思う。

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