2019-06-10

南方熊楠 地球志向の比較学 (講談社学術文庫) [文庫

南方熊楠 地球志向の比較学
(講談社学術文庫) [文庫]




鶴見 和子 (著)

5つ星のうち 3.9 9件のカスタマーレビュー

商品の説明

内容紹介

南方熊楠は、柳田国男とともに、日本の民俗学の草創者である。この二人は、その学問の方法においても、その思想的出自と経歴においても、いたく対照的なのである。日本の学問のこれからの創造可能性を考えるために、この二つの巨峰を、わたしたちはおのれの力倆において、登り比べてみることは役に立つであろう。そうした意味で、微力ながら、これはわたしの南方登攀記の発端である。(著者まえがきより)〈昭和54年度毎日出版文化賞受賞作〉
著者について

1918年東京生まれ。プリンストン大学Ph.D.。上智大学教授を経て、現在上智大学名誉教授。専攻は社会学。主著に『好奇心と日本人』『社会変動と個人』(英文)『標泊と定住と−柳田国男の社会変動論』『内発的発展論』など。なお本書『南方熊楠』(日本民俗文化大系 第4巻)で昭和54年度の毎日出版文化賞を受賞。



登録情報

文庫: 318ページ
出版社: 講談社 (1981/1/7)
言語: 日本語

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目次 



1 南方熊楠の世界
1.すじがき
2.南方熊楠におけるヨーロッパとの出会い
1.学問の目標
2.身についた実証主義
3.問答形式の学問の展開
3.地球志向の比較学の構造
1.粘菌研究-地球志向の原点
2.曼陀羅-比較学のモデル
2 南方熊楠の生涯
1.独創性の根源
1.父母の感化
2.勉強大好き、学校大嫌い
2.漂泊の季節
1.アメリカゆきの動機
2.曲馬団とともに
3.大英博物館入り
4.孫文との出会いと別れ
5.ロンドンの暮しと仕事
6.ロンドンでの仕事
3.紀州田辺の住民として世界へ
1.定住への引力
2.神社合祀反対運動のさ中に
3.柳田国男との出会いと別れ
4.実現しなかった南方植物研究所
5.神島の進講
6.示寂
3 南方熊楠の仕事
1.比較民族
1.『十二支考』について
2.邪視について
3.人柱について
2.比較民話
3.比較宗教-科学論
1.学問の目標
2.比較宗教論
3.科学論
4.エコロジーの立場に立つ公害反対
5.おわりに-南方熊楠の現代性
1.南方熊楠とヘンリー・ディヴィッド・ソローの親近性
2.南方の思想家としての現代性

9件のカスタマーレビュー

5つ星のうち3.9
5つ星のうち3.9
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9件中1 - 8件目のレビューを表示
トップレビュー

ブリッジライターNAO

5つ星のうち4.0萃点に ”まわりあわせ”て 粘菌と 民俗学を 結ぶ曼荼羅2017年5月19日
形式: 文庫Amazonで購入
”知の巨人”でありながら奇人としての側面が目立ち、「博覧強記であるが理がない」(昭和の有力な知識人である桑原武夫の熊楠評)と考えられていた熊楠に、現代にも先んじた理論体系を見出し南方熊楠研究の転換点となった本です。

社会学が専門の著者自身の関心と合致し、熊楠の思想を”活用”するために、彼の知的活動を「比較学」と見立てて網羅的に分析し、以下4つのテーマに大別して包括的な把握を試みています。
一:大乗仏教を根幹とする、ヨーロッパとアジアとの学問の出会いと対決と、統合への試み
二:社会科学の中で特に民俗学と、自然科学の中で特に粘菌研究との関係について
三:比較の学としての生物学と民俗学の結合
四:生態学的立場からの公害反対

熊楠が粘菌に魅せられた理由を、
①粘菌が植物と動物の境界領域にあり、
②粘菌を調べることで生命の原初形態・遺伝・生死の現象などに手がかりがつかめる
という2点に注目し、

熊楠の粘菌研究の行動原則として
1.それが面白くてたまらない
2.粘菌が植物と動物の境界領域であることに注目
3.粘菌は生命の原初形態であることに着目
4.粘菌はそれが発生し生活しつつある環境=コンテキストの中で見出されなければならない
以上の4点を見出しました。

そしてそれがそのまま民俗学での研究態度と一致するとし、熊楠の広範囲にわたる学問分野の中でも2本柱である粘菌研究と民俗学の相関性・必然性を見抜きました。

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紫陽花

5つ星のうち5.0南方に興味を持つ方にとって必読の名著 !2013年8月5日
形式: 文庫Amazonで購入
第一章「南方熊楠の世界」、第二章「南方熊楠の生涯」、第三章「南方熊楠の仕事」から構成される南方研究の嚆矢。「地球志向の比較学」との副題は、「日本にある程の事はヨーロッパにもあり、逆もまた然り」という考え方を背景とした、地球的規模で固有性と普遍性とをどのように識別・説明するかという南方の民俗学の課題である。これを第一章で次の4つのテーマを掲げ、著者の論考が披歴されている。

(1) 大乗仏教を根幹とするヨーロッパとアジアの学問の出会い、対決及び統合(南方曼荼羅がその象徴)。
(2) 民俗学と自然科学の中で特に力を入れた生物学中の粘菌研究との関係。南方曼荼羅は南方の学問の密教的側面であり、粘菌研究は南方の学問の顕教的側面である事。
(3) 比較学としての生物学と民俗学の"学際的(interdiscipline)な"統合。具体的には、各々の地域には各々の自然生態系と、それと関連した人間の生態系があり、それらを全体として把握しながら、異なる地域の民族・風習を比較するという立場。今日で言えば、エコロジカル・アプローチであり、南方が日本における生態学の元祖である事。
(4) 生態学的立場からの公害反対(そのハイライトが神社合祀反対運動)。

そして、何と言っても貴重なのが第三章中の南方の原典の紹介と(部分的)掲載である。私は南方の原典を読んだ経験が無かったので、思わず惹き込まれた。含まれる原典は「十二支考」、「邪視について」、「小児と魔除」、「人柱の話」、「猫一匹の力に憑って大豊となりし人の話」及び「西暦九世紀の支那書に載せたるシンダレラ物語(異なれる民族間に存する類似古話の比較研究)」である。どれを取っても面白く啓発的だが、驚異の博覧強記が単なる衒学趣味に陥っておらず、ユーモア味さえ漂わせ著者の論考を裏付けている感があった。(1)との関連で土宜法竜宛書簡の原典、(4)との関連で神社合併反対意見の原典も掲載されている。即ち、これらの原典を導入するがための著者の論考であり、また、原典を読む事によって著者の論考を首肯出来るという、まさに曼荼羅的構成の妙である。

的確な分析・位置付けと原典の掲載とにより、南方に興味を持つ方にとって必読の名著と言えるのではないか。

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何太郎

5つ星のうち5.0南方熊楠の残した思想と学問に真正面から取り組んだ本2007年6月3日
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南方熊楠の残した思想と学問に真正面から取り組んだ本。熊楠と言えば奇行や博覧強記が有名ですが、本書ではそういった部分は捨象され、在野の学者・思想家としての熊楠の実績を中心として議論が進められていきます。本文200ページ余りの文庫本ですが、本書を読めば熊楠の学問の壮大さ、思想の深遠さに触れることができます。熊楠への興味が益々わいてくる、そんな良書です。

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やすらぎ

5つ星のうち5.0現代にも通じる思想家南方熊楠2011年2月11日
形式: 文庫Amazonで購入
自然科学(粘菌学)と社会学(民俗学)に通じた南方の総説であるが、著者の鶴見和子が免疫学者の多田富雄との書簡集で述べているように、現代では癒合した学問が求められている。正に一人で両面の学者であった南方の全体像を論じてあり、大学生がこれらから感化されることを期待する。

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東邦彦

5つ星のうち4.0近代日本國の知恵2015年11月13日
形式: 文庫Amazonで購入
この人は奇異で不可思議な人です。今の時代にあった生き方では、読み解いても読み取れず、弾かれるかもしれずこの国に豊かさがあったのかも。
近代日本國の中で数多の人と面識を持つ人ですね。面白い。

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大谷門堂

5つ星のうち5.0熊楠評伝の白眉2002年6月17日
形式: 文庫
ほとんど四半世紀前に書かれた本であるが、その視点の斬新性および論旨の的確性はいまだに揺らいでいない。その後の熊楠ブームにおける幾多の熊楠紹介本と比較しても、これを超えるものはないのではないか。著者の熊楠を見る目は、その限界を指摘しながらもやさしい。返す刃で「縛られた巨人」熊楠を苦しめた日本社会の問題点を切る。

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サイトー

5つ星のうち5.0南方曼荼羅についての研究が画期的2003年9月27日
形式: 文庫
著者は評論家鶴見俊介のおねぇさん。
南方熊楠、柳田國男の研究者。
南方曼荼羅に関する論考と、柳田國男との比較論考が画期的で実に面白い。
地球志向の比較学というサブタイトルがついているが、地球というよりも物質、生命、人類の三つをまとめて同じ視点から捉えているという感想。
根底に眠る哲学が、まったく同じモノであり、南方曼荼羅として集成されているという指摘は白眉。

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decachin

5つ星のうち5.0とても楽しくなる熊楠の世界へのご招待2005年10月1日
形式: 文庫
この本の力で「南方熊楠の世界」に入り込んで度肝を抜かれます。本書を読んだら熊楠の原書を読んで格闘してみましょう!!分からなくなったらまたここに。役に立ちます。三部構成 1.南方熊楠の世界 2.南方熊楠の生涯 3.南方熊楠の仕事 付録に「神社合併反対意見」所収

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