ユダヤ人の歴史 古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで - 鶴見太郎 - ビジネス・実用書・無料試し読みなら、電子書籍・コミックストア ブックライブ
ユダヤ人の歴史 古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで
ユダヤ教を信仰する民族・ユダヤ人。
学問・芸術に長けた知力、富のネットワーク、ホロコーストに至る迫害、アラブ人への弾圧――。
五大陸を流浪した集団は、なぜ世界に影響を与え続けているのか。
古代王国建設から民族離散、ペルシア・ローマ・スペイン・オスマン帝国下の繁栄、東欧での迫害、ナチによる絶滅計画、ソ連・アメリカへの適応、イスラエル建国、中東戦争まで。
三〇〇〇年のユダヤ史を雄大なスケールで描く。
■目次
序 章 組み合わせから見る歴史
第1章 古代 王国とディアスポラ
1 ユダヤ教以前のユダヤ人?――メソポタミアとエジプトのあいだで
2 ユダヤ教の成立――バビロニアとペルシア帝国
3 ギリシアとローマ――キリスト教の成立まで
第2章 古代末期・中世――異教国家のなかの「法治民族」
1 ラビ・ユダヤ教の成立――西ローマとペルシア
2 イスラーム世界での繁栄 西アジアとイベリア半島
3 キリスト教世界での興亡――ドイツとスペイン
第3章 近世――スファラディームとアシュケナジーム
1 オランダとオスマン帝国――スファラディームの成立
2 ポーランド王国との邂逅――アシュケナジームの黄金時代
3 偽メシア騒動からの敬虔主義誕生――ユダヤ教の神秘主義
第4章 近代――改革・革命・暴力
1 ドイツとユダヤ啓蒙主義――同化主義なのか
2 ロシア帝国とユダヤ政治――自由主義・社会主義・ナショナリズム
3 ポグロムとホロコースト――東欧というもう一つのファクター
第5章 現代――新たな組み合わせを求めて
1 ソ連のなかの/ソ連を超えるユダヤ人――社会主義的近代化
2 パレスチナとイスラエル――「ネーション」への同化
3 アメリカと文化多元主義――エスニシティとは何か
むすび
あとがき
参考文献
ユダヤ人の歴史 関連年表
ユダヤ人の歴史 古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで のユーザーレビュー
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レビューを書く感情タグBEST3
Posted by ブクログ
タイトルを見て、なんとなく気になると思って手に取り時間をかけて読んだ。
3000年に渡る歴史を、基本的には順を追って丁寧に解説されているが、必要に応じて時間の前後関係と記載の順序とを逆転させて大変わかりやすく論説されている。私は世界史には高校生の時以来触れ、ユダヤ人に関してはホロコーストとイスラエル
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ勉強になった、し、おもしろかった。高校の世界史を意識した説明の流れになっているところが多く、不勉強な身でもなんとかついていけた(言葉の定義を忘れることが多くて戸惑ったが…。)
今まで持っていたユダヤ人へのイメージや、それからわく素朴な疑問に、丁寧な説明をいただける本になっていて、いろい
Posted by ブクログ
そもそもユダヤ人ということを知らなかったし、日本史派で世界史はほぼ初週だが非常に読みやすい本だった。
ユダヤ人について、アインシュタインしかり、天才が多いというイメージと、ホロコーストの被害者である、というイメージが漠然としてあっただけだった。
前者に関しては、天才が多いのは、ユダヤ教の根底とし
Posted by ブクログ
ユダヤ人の歴史
古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで
中公新書 2839
著:鶴見太郎
出版社:中央公論新社
地続きである大陸にすんでいる民族の歴史はすさまじいものです。
まさに避けようものない悪夢が、歴史の中心をなしています。
ユダヤ人、旧約聖書ではみずからを、イスラエルという、ユ
Posted by ブクログ
「ユダヤ人」というものへの認識は
せいぜい人種ではなく宗教に依拠した集団である、
商業に強い、
その程度だった。
この本に書かれていたことをすべて理解できたとは
とうてい思えないけれど、
確実に学びになった。
日本においても浮浪民は蔑まれてきた歴史があるけれど、
それが大陸になると規模もとんでも
Posted by ブクログ
難しかったけど読み応えあった。世界史の授業で習ったことも多く書かれていたけれども、著者の先生もあとがきで書かれていたように高校世界史ではユダヤ人はキリスト教誕生前とホロコーストくらいしか登場しなくて、ユダヤ人とのコンテクストで世界史の流れを習うことはなかったからどの章も興味深かったな。
民族離散、
Posted by ブクログ
ユダヤ民族の歴史を世界史の中で解説されていて、わかりやすく、現在のイスラエル問題を少しだけ理解できてきたような気がします。特に、ホロコーストがナチドイツだけによるものではなかったことも、国際的に解決しにくい一つの要因なのかと思いました。
Posted by ブクログ
通史が母語で読めるありがたさよ。後半が社会学ぽいのが個人的には好き。これは大変だし答え出にくいのは仕方ない。
Posted by ブクログ
ありもしないものに執着し、捨てようと思っても押し付けられ、殺しあうという人間の業。もっとグラデーションで生きていけないものか。
Posted by ブクログ
3000年におよぶユダヤ人の歴史をコンパクトにまとめた一冊である。コンセプトは「組み合わせ」。国を持たないユダヤ人たちは、それぞれが住む国で「国の法は法なり」としてその国の法律に従う一方で、自分たちの宗教とその律法を守り続けてきた。そして、ユダヤ人集団が社会の中で適合する位置を探り続けてきたというの
===
ユダヤ人の歴史-古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで (中公新書 2839) 新書 – 2025/1/22
鶴見 太郎 (著)
4.0 5つ星のうち4.0 (240)
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ユダヤ教を信仰する民族・ユダヤ人。
学問・芸術に長けた知力、富のネットワーク、ホロコーストに至る迫害、アラブ人への弾圧――。
五大陸を流浪した集団は、なぜ世界に影響を与え続けているのか。
古代王国建設から民族離散、ペルシア・ローマ・スペイン・オスマン帝国下の繁栄、東欧での迫害、ナチによる絶滅計画、ソ連・アメリカへの適応、イスラエル建国、中東戦争まで。
3000年のユダヤ史を雄大なスケールで描く。
■目次
序 章 組み合わせから見る歴史
第1章 古代 王国とディアスポラ
1 ユダヤ教以前のユダヤ人?――メソポタミアとエジプトのあいだで
2 ユダヤ教の成立――バビロニアとペルシア帝国
3 ギリシアとローマ――キリスト教の成立まで
第2章 古代末期・中世――異教国家のなかの「法治民族」
1 ラビ・ユダヤ教の成立――西ローマとペルシア
2 イスラーム世界での繁栄 西アジアとイベリア半島
3 キリスト教世界での興亡――ドイツとスペイン
第3章 近世――スファラディームとアシュケナジーム
1 オランダとオスマン帝国――スファラディームの成立
2 ポーランド王国との邂逅――アシュケナジームの黄金時代
3 偽メシア騒動からの敬虔主義誕生――ユダヤ教の神秘主義
第4章 近代――改革・革命・暴力
1 ドイツとユダヤ啓蒙主義――同化主義なのか
2 ロシア帝国とユダヤ政治――自由主義・社会主義・ナショナリズム
3 ポグロムとホロコースト――東欧というもう一つのファクター
第5章 現代――新たな組み合わせを求めて
1 ソ連のなかの/ソ連を超えるユダヤ人――社会主義的近代化
2 パレスチナとイスラエル――「ネーション」への同化
3 アメリカと文化多元主義――エスニシティとは何か
むすび
あとがき
参考文献
ユダヤ人の歴史 関連年表
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日本から
中川義朗
5つ星のうち5.0 凄い勉強になる!
2025年10月1日に日本でレビュー済み
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読んだ方が良い! 凄い勉強になる!
3人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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Amazon カスタマー
5つ星のうち4.0 乗り越えるべき課題。
2025年9月10日に日本でレビュー済み
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私の知人は、自分から望んでユダヤ人に生まれたわけではないといった。この本を読むと、この言葉の重みがわかる。虐殺に迫害、転じて自分たちが加害者になる。ユダヤ人の重みは、戦争を乗り越えた時に、輝くだろう。旧教に捕らわれずに、もっとリベラルに生きたほうが、気楽だろうと思える。
8人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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yass
5つ星のうち3.0 すごい
2025年7月18日に日本でレビュー済み
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ユダヤ人のついて通史で分かりやすく解説しています。
ずっしりと重たい内容です。
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紫トンボ
5つ星のうち5.0 ユダヤ人のことを知りたかったら必読書
2025年11月6日に日本でレビュー済み
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ユダヤ人のことを知りたかったら必読書。翻訳書だが読みやすい。ユダヤ教は一神教で世界制覇を目指す。キリストはこのユダヤ教に反対して殺されたが、キリスト教は一神教の姿形をとっている。キリストとキリスト教は別物なのだ。
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読人
5つ星のうち4.0 ユダヤ民族を知るための概括本
2025年6月17日に日本でレビュー済み
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ユダヤ民族を理解するために知っておくべきことがコンパクトに詰め込まれており、なるほどそうだったのかと思うところが多かった。
9人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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隅田 正
5つ星のうち5.0 良い本です
2025年9月28日に日本でレビュー済み
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良い
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丹治真弓
5つ星のうち3.0 歴史は繋がっている
2025年9月8日に日本でレビュー済み
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現在イスラエルは戦争をしていて、新聞テレビ等で情勢が否応なしに目にはいってきます。そこで、イスラエルてどういう国だっけホロコーストは?そういえばユダヤ人だよね。ということで本をとってみました
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Winn
5つ星のうち5.0 書店のランキング上位にあったので…
2025年8月27日に日本でレビュー済み
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富山旅行の途中、書店のランキングの上位にあった本です。長年に渡るイスラエルでの紛争について、少しでも、その本質を知りたくて、この本を購入しました。
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猫田
5つ星のうち3.0 近代と現代が詳しいのがよい
2025年8月12日に日本でレビュー済み
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本書を読んで、今まで知らなかったユダヤ人の歴史に触れて、世界史全体の理解が深まった気がしている。中世、イスラム世界でユダヤ人が占めていた大きさとその影響を知ったし、東欧史やロシア史のなかでそれぞれの歴史の一部分として出てきたユダヤ人のことを、本書では主題として詳細に読むことができた。
とくによいと思ったのは、古代からの歴史の中で、第4章近代と第5章現代が詳しいことだ。本の厚さにして半分ある。
終わり近くの1節「ユダヤ教からは、ユダヤ人がパレスチナを排他的に所有しなければならないとの教義は生まれないはずだが、現在の宗教シオニストは、イスラエルの政権にも参画しながら、パレスチナの追放を公言してはばからない」
ひとつ腑に落ちなかったことがあり、本題を外れるので書きにくいが、あとがきについて。筆者ご自身のご家族のことをこれほど詳しくお書きになっていることを疑問に思った。新書とはこういう方向のものだったのか、あるいは中公新書だからなのか、わからない。
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じじさん
5つ星のうち3.0 難しすぎ
2025年8月15日に日本でレビュー済み
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多少、予期していたものとは違っていた。イスラエルとパレスチナがなぜ今のような状況になってしまっているのかが端的に知りたかったのだか、長々と数千年の歴史が記述され、最終的に何が原因で今の状況になっているのかが今一つわからなかった。まあ、自分の歴史感なり、世界史の学力のなさが災いしたのかもしれません。もう一度学習してから、改めて読み直します。
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===
日本から
Amazon カスタマー
5つ星のうち3.0 普通の人には読みずらい
2025年8月9日に日本でレビュー済み
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専門的書であるので普通の読者は当てが外れることになるのではないかと思う。そういった意味では読む人と読まない人に分かれる。この本を否定はしないけれど、本書の中身を本屋さんで簡単に見て購入することをお勧めする。
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ボーン・ウイナー
5つ星のうち3.0 ユダヤ人の流転の歴史 少々学問的で読みにくい
2025年6月14日に日本でレビュー済み
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今や、その暴力的な支配欲によってパレスチナ人を大量虐殺し(今日現在5万5千人以上)、それに飽き足らず
遠方のイランまで宣戦布告なしに猛爆撃したイスラエル。
イスラエルはユダヤ人国家である。
そのユダヤ人が、なぜこうなってしまったのか、誰しも知りたいと思うでしょう。
私も、そう思って本書を購入しました。
本書の副題に「古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで」と書いてあります。
本書の帯には「流転の果てに手にしたものとは‥‥学問・芸術に長けた知力、富のネットワーク、文化資本としての教育、迫害と加害の裏面史・・・・3000年に及ぶ叡知を見る」と書いてあります。
なんだか、これだけ読めば全部言いつくしていると思います。
実際に読み始めてみると歴史の細かい点、多数の個人名が散りばめてあって、簡単に通読できるほど易しい本ではありませんでした。つっかえつっかえ、一カ月ほどかけて読み終わりました。
本書を読んでの感想は、ユダヤ人はイスラエル建国までは、近隣の民族や国家に嫌われ、出エジプト記やバビロンでの迫害、ロシアでもスペインでも行く先々で嫌われ、転々と移動する歴史です。近くはナチスドイツによるホロコーストがありますが、ホロコーストについては多数の書物が出ているので本書では踏み込んんでおりません。
第一次大戦終末期、イギリスの三枚舌外交によって約束されたパレスチナの土地。
第二次大戦後、先住民のアラブ人を追い出し暴力的に建国されたイスラエル。アラブ人との間に間断なく戦闘が行われているのは、その建国の歴史からみて当然でしょう。
本書によればイスラエルに住むユダヤ人は700万人、アメリカに住むユダヤ人は600万人だそうです。
なぜ、それほど多数のユダヤ人がアメリカに住み着いたかと言うと、旧世界各地で嫌われ迫害されたユダヤ人を
その建国の精神、自由と博愛によって受け入れてくれたアメリカはユダヤ人にとって心地よい世界だったようです。
本書のあとがきを読んで「おや?」と思ったこと。「2023年に次女が生まれ、小学3年の長女と・・・」あれあれと思って著者の略歴を見たら「1982年岐阜県生まれ」と書いてありました。まだ42~43歳の少壮の歴史学者です。
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アマックス
5つ星のうち3.0 モヤっとした内容で、個人的には読みたいことが書かれていない
2025年6月16日に日本でレビュー済み
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ユダヤ人の歴史にフォーカスして、古代から現代まで幅広く網羅した内容といえるでしょう。
但し、歴史上の事実または有力とされる説を中心に書かれている印象が強く、
ユダヤ人の歴史に特化した学校の歴史の教科書のように感じました。
淡々とした文章が続き、興味が湧きにくい点が気になりました。
また、明確な国家を持たないユダヤ人の中には、近年では世界主義者や世界統一国家といった言葉もあるように、
世界中の富と利権を手中にしようとする巨大権力層といった噂に関して、
歴史的な流れを含めて著者の見解を知りたかったのですが、見当たりませんでした。
○○党を裏で操っていることへの真偽や見解、○○戦争を仕掛けたことへの真偽や見解、等など。
個人的には記述してほしかったです。
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白
5つ星のうち4.0 難しそうなタイトルの割には読めた
2025年4月5日に日本でレビュー済み
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難しそうな本だけど、とりあえずパレスチナについて知りたい一心で読み始めた本書。
高校で世界史Bを取った人が読めるレベルに書かれたらしく、
その層である私にもそこそこ理解はできたと思います。
ただ、パレスチナの現代史についてはほとんど記述がありません。
そこは高橋和夫さんとか、他の専門家の本をお勧めします。
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lonesome Tom
5つ星のうち4.0 紀元前から歴史に翻弄され続けたユダヤ人の真実
2025年4月19日に日本でレビュー済み
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歴史上いわゆる「ユダヤ陰謀論」的な文書や主張がたびたび出現した。しかし、本書を読むとこれら陰謀論は歴史に翻弄されたユダヤ人が、世界の各地で生き延びるために行った苦肉の策を誤解されたり捏造されたものだということがよく分かる。また特に日本では、ユダヤ人というと大金持ちかノーベル賞を受賞するような天才かと思われているが、彼らは知的ではあるが、金銭的には恵まれない人が大多数であることも理解できる。私自身、1980年代にユダヤ系がマジョリティであるブルックリンで3年間過ごし、彼らの経済状況は理解していたが、初めて知る歴史的な事実には目から鱗の事象が多くあった。
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田中 重
5つ星のうち4.0 参考になる
2025年4月10日に日本でレビュー済み
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特になし
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くにたち蟄居日記
5つ星のうち4.0 身すつるほどの祖国はありや
2025年10月17日に日本でレビュー済み
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イスラエルとパレスチナに知見が全くないまま、日々の報道だけを眺めているのも、自分に
対して無責任であるとふと考えた。従い、まずはユダヤに関して少し勉強しようと思い、評判の
本書を購入した。電子図書ではなく紙の本で、ひさしぶりに気になった箇所には付箋をつける
という読み方をしてみた。
本書は古代から現代までを扱うという極めて長期間を対象としている。その事自体は著者は
「謙虚な人間であれば身の程を知って断念しただろう」と言っている。かような認識を持ちながらも
ある種のアニマルスピリッツというべきか蛮勇というべきか、挑戦して纏め上げた著者の勇気には
拍手を送るべきである。本書で取り上げた各時代の専門家からあらゆる批判が来るリスクを
背負いつつも、ユダヤを理解するためには長期間を俯瞰する「天の眼」が必要だという事
なのだろうと僕は理解した。
本書を読んでの感想は二点である。
一点目。祖国を持たない民族というものの厳しさが本書を通じて少し理解したと思う。これは
日本という国に生まれた日本人である僕には、そもそも到底理解しがたい状況である。
「身すつるほどの祖国はありや」と寺山修司はかつて短歌に詠んだことがあり、それはそれなり
にパンチのある言い放ちだったと思うが、それにユダヤ人が賛同するとは僕は思わなくなった。
流れ着いた土地の法を遵守しつつも、ユダヤとしての法を守らなくてはならないというダブル
スタンダードを強いられることは想像もつかない。そこまでして自らの「民族」を守らなくては
ならない、若しくは守る事を強いられる、ということなのだろうか。これは本書を読み終えた今の
僕にとっても謎である。
二点目。ホロコーストというとナチスしか思い浮かぶことが出来ない日本人は僕だけではなく、
たくさんいるのだろうということだ。恥ずかしながら、ポグロムという言葉も本書で初めて知った。
なにもかもをナチスに背負わせて、手を洗ってしまった方も多かったに違いない。歴史を
単純化することがいつも間違っているとは思わないものの、単純化する過程で色々な不都合が
隠れてしまうリスクはいくらでもあるのだと思う。
それに対する極端な反証例としては、ハンナ・アーレントがアイヒマンを通じて「ホロコーストに
協力的であったユダヤ人が存在した」という指摘であり、それに対する彼女に対するバッシング
である。
そういえば本書においてアイヒマンへの言及はあるものの、その際にハンナ・アーレントへの
コメントが無かった点は少し気になった部分ではある。彼女を出すと焦点がぼけてしまうという
ことか。
かつてパレスチナにおいてアラブ人とユダヤ人が仲良く共存していた時代があった。確か
NHKの「映像の世紀」でも取り上げられていたと記憶している。それが戻ってくる時代は
いつ来るのだろうか。
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Amazon カスタマー
5つ星のうち5.0 良好
2025年7月24日に日本でレビュー済み
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良かったです
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植地 勢作
5つ星のうち4.0 現在の紛争を知るにはユダヤの歴史を知ることが必須
2025年3月20日に日本でレビュー済み
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プーチンのウクライナ侵略とイスラエルとハスの戦争を理解するには、まず本書を読むことをお勧めします。
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ヤマネコ
5つ星のうち4.0 これ一冊で十分わかる
2025年2月21日に日本でレビュー済み
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新書でユダヤ人の歴史を現代まで物語るという難題をこなしている。近代になってユダヤ教のカスタマイズ化が起きたという表現もさすが。ただ、アカポスを得るために東大のイスラム研究の伝統の枠を外れていないことが残念。市川裕、山内昌之氏の引用は少しあるが。10年後にまた期待する。
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===
関
5つ星のうち5.0 ヒトラーだけがユダヤ人を殺したわけではない。
2025年6月26日に日本でレビュー済み
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ユダヤ人とは何者なのか?どうやってユダヤ人とユダヤ人以外を決めた?離散集合と迫害された真の理由。ユダヤ教も様々な宗派がある…。イスラエルも一枚岩ではないことが理解されました。今まで教えられなかったユダヤの歴史が丁寧に解説されている良書。
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くじら
5つ星のうち3.0 いまいち
2025年3月26日に日本でレビュー済み
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平行して小林秀雄のドストエフスキー論を読んでいるのだが、明晰な文章力でどんどん頭に入って来る。それに引き換え、小林秀雄迄とは言わないが、この本の著者は文章力をもう少し鍛練した方が良いと思う。
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銭湯
5つ星のうち5.0 満足しています!
2025年6月22日に日本でレビュー済み
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綺麗な状態で満足してます。
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愛書
5つ星のうち2.0 現代の最重要問題に答(応)えていない
2025年6月14日に日本でレビュー済み
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この書はユダヤ人の古代から現代までの長い歴史をわかりやすく専門の学者が簡略に描写した本である。その通史としては良く解る。世界に散ったユダヤ人たちが貶められ、虐められ、かつ弾圧された(ポグロム)事情などが各国で時代順に列記されている。
しかし、最も重要な要素が決定的にかけている。今のウクライナ戦争、イスラエル対パレスチナ戦争、イスラエル対イラン戦争の背景や原因の根本的な説明が全く欠けており、これらの戦争が全くユダヤ人に関係ないごとくな印象になってしまっている。最もユダヤ人に、かつユダヤ大資本に関係しているのにだ。読者はこのことの深い原因を知りたくて読むのにだ。非常に複雑な政治的問題なので著者は意図的に避けている感じさえする。この問題に触れていないのでこの本は単につまらない平凡な書となっている。
上記のような問題をよく理解するには、既に出版されてきた関連本数百冊を精読する必要がある。だが著者は巻末に参考文献書を多数列記しているが、一つもその様な文献を列記してはいない。多分読む価値のない書物と判断しているのだろう。私は、現代のユダヤ人問題を考え理解するには最低でも下記に列記した書物を参考にすべきだとみなしている。それがなかったので星二つにした。
「民間が所有する中央銀行」ユースタス・マリーン著、秀麗社、「ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ」宋鴻兵著、ランダムハウス講談社、「ビルダーバーグ倶楽部」ダニエル・エスチューリン著、バジリコ(株)
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鹿野苑
5つ星のうち5.0 ユダヤ人にフォーカスして3000年の歴史
2025年4月19日に日本でレビュー済み
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キリスト教とユダヤ教の関係とか、ガザで起きている件とか本で読んでみるものの、部分的な理解なんだろうなと思っていた。
この「ユダヤ人」という定義にフォーカスし、その歴史を徹底的にたどっていくという視点が面白い。
どうしてこういうことを引き起こす「人間の感情」が起こるのかということを説明してくれているので、その時代に身を置いた気になって理解できるところがすごい。まあ、本当のリアルさはないのだけれど、人間としてそれはそういう気持ちになるなあということを実感するという感じかな。
こういう人間の感情から引き起こされたことの積み重ねというか、感情の影響が表出していく出来事が途切れず起こることで歴史は今も紡がれているのだなと本筋以外のところでも感じるものがあった。
とても専門的な話もでてくるけれど、丁寧に読めば理解できる。自分は言葉の意味を忘れてしまうので、途中何度もググって意味を確認した。まあそれくらいの努力は必要ではあった。
良書。
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坂本浩
5つ星のうち5.0 日本人ならまず読んでみるべき書
2025年4月29日に日本でレビュー済み
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まず読んでみる
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牧村 元太郎
5つ星のうち5.0 世界に広がったユダヤ人の歴史がわかる読みやすい本
2025年4月4日に日本でレビュー済み
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一般に知られているユダヤ人の歴史といえば、旧約聖書に反映している時代とあとは、ヨーロッパのキリスト教世界における迫害され、同化されても差別されるなかで、経済的実力をもってきたといった歴史などしかしられていませんでした。しかし、この本は、ペルシャ時代バビロニアに広がって行ったユダヤ人ディアスポラの歴史なども含めグローバルにひろがった歴史がわかりやすく整理されて書いてあり、視野が広がり興味深かった。
10人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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アリサ
5つ星のうち5.0 これを読み 世界を知ってほしい
2025年4月2日に日本でレビュー済み
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ユダヤ人のことを知りたい人は この本を読むべきだ 今まで ユダヤ人(イスラエル人)に関する書物を読み漁ってきたが この本は平易な文章でありながら レベルの高い内容が詰まっていてピカ一である もう一度 勉強してみたいという方々にも これから勉強し直したいという方々にも 是非ともお薦めする
18人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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Meuniere
5つ星のうち5.0 ユダヤ人とは何者なのか?包括的によく理解できる非常に優れた歴史概論。
2025年2月25日に日本でレビュー済み
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2025年1月刊。先月出たばかりの本著を早速読んでみた。著者は現在東京大学大学院准教授で専門はロシア・ユダヤ近現代史、歴史社会学。私がこの人のことを知ったのは2023年10月7日以降に雑誌「世界」に寄せられたある論考を読んでからだが、その時、私は著者のことをあの鶴見俊輔氏の息子さんと勘違いした。ちなみに俊輔氏の息子さんは早稲田大学大学院教授で専門は日本近現代史。同姓同名の全くの別人だった!・・・という余談はさて置き、この最新刊は濃密かつ充実した内容で大変いい勉強になった。この歴史概論で軸になっているのは、ユダヤ人の主体性と社会構造の「組み合わせ・巡り合わせ」がもたらす効果や悲劇の解明、そしてユダヤ人という「血統を主にしながらもユダヤ教に改宗した者もユダヤ人」という「境界の二重性」をいかに見るかだ。
3000年に及ぶユダヤ人の歴史~そもそもその起源は今もはっきり分かっていないらしいが、旧約聖書に依拠すれば古代メソポタミアからカナンの地(現在のパレスチナ・イスラエル周辺)に移動した「ヘブライ語を使うセム語族遊牧民」というところか?それ以降のエジプトなど各地の王朝による迫害やローマ帝国によるユダヤ王国滅亡までいちいち記さないが、そこからの「長い離散の歴史」の中で私が最も印象的だったのは、中世・近世キリスト教社会(欧州社会)での長期にわたる「反ユダヤ教的」かつ「権力者との板ばさみ的」迫害に比べて、中東イスラム圏やオスマン帝国はユダヤ人にも比較的寛容で共存共栄状態が継続していた点である。そして、ユダヤ人がもっぱら金融・商業などに従事してきた~というのも現代の一面的見方で、農業などに従事する者も多く、貿易業者なども王族など権力者に比して中規模商人が多かったという。
そしてスファラディームというスペイン・イベリア半島から北アフリカやオランダ・イギリスなどに拡がったユダヤ人とアシュケナジームという東欧・ロシア帝国へと拡散したユダヤ人の分岐。東欧・ロシアでのポグロムからホロコーストへの迫害拡大の流れと「シオニズム」思想の発生~北米に移住する者たちとパレスチナでの「イスラエル建国」に向かう者たちと。近現代の複雑な流れを読み解いていくことで、世界中に拡散していくユダヤ人の姿と「宗教を守ることで紐帯を繋ぎ続ける」強固な民族性が俯瞰的によく理解できる。
特に1989年から本格的に始まったという「旧ソ連圏からイスラエルへのユダヤ人大量移民」~彼らの存在が対パレスチナ強硬路線を強化した~というのは初めて知った。
しかしこれを読んだからと言って、現在のイスラエルに少しでも「同情的」になるかというと、そんな事は全くない。極右排外主義にまみれたネタニヤフ政権は自らの過ちを正さなければ未来はない。かつてのポグロムやホロコーストの歴史はユダヤ人の「免罪符」には全くならない。それを再確認した読書でもあった。この著作は、パレスチナ問題・ユダヤ人問題に少しでも関心がある人には是非おすすめである。虚心坦懐にユダヤ人という者たちに向き合える。
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荒川 研
5つ星のうち5.0 ユダヤ人のことは、わからない。でも知るべきことは、この本にあり。
2025年3月30日に日本でレビュー済み
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日本人にはユダヤ人のことは、わからないが、少しでも分かりたいとおもうなら、読むべき本です。
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日本から
Tom
5つ星のうち5.0 西洋史の裏面史でもあるユダヤの歴史を学まずして、西洋の理解は浅薄となる
2025年3月29日に日本でレビュー済み
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新しい視点で丁寧にユダヤ人の歴史を網羅的に論じている良書だと思います。従来のステレオタイプな見方を修正するには、よいテキストではないでしょうか。
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タカ大丸
5つ星のうち5.0 ユダヤ人の何たるかをしる最高の入門書ですね
2025年10月2日に日本でレビュー済み
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私は長年イスラエルおよびユダヤ人との付き合いがあり、人よりは現代のイスラエルについては詳しいほうだと自負しておりますが、シオニズム以前のユダヤ人についてはあまり知りませんでした。
一方でここ二年ばかりの日本における反イスラエル・親パレスチナ(というかハマス)報道は目に余るものがあり、憤慨しておりました。「子供がかわいそう」なのは誰でも同じです。私も「可哀相」と思いますが、ただイスラエルを非難するだけで子供が救われるわけではない、という簡単な真理を忘れておられる方が多いように思います。
特に私にとって勉強になったのはイベリア半島における「コンベルソ」の生き様です。世界史の教科書で追放されたのはもちろん記憶にありましたが、具体的にどんな人物がいて、どのような人生を送ったのかを具体名をあげて紹介してくれたのはおそらく日本語では初めてではないでしょうか。
イスラエルを批判するのは全然いいのですが、最低限のことを知らないまま論難する方々が多すぎるように感じます。ぜひ、本書は今イスラエルの批判をしている方々にこそ読んでいただいて、その上で「ユダヤ側の論理」を知った上で論じてもらいたいと思う今日この頃です。
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edogawa dai
5つ星のうち5.0 世界はユダヤ人問題、パレスチナ問題を考えているようで、実は無視し続けてきた
2025年9月12日に日本でレビュー済み
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ウクライナ戦争が長期化するにしたがって、激化するパレスチナ情勢、
この二つが歴史的に繋がっている、という事実を旧約聖書の時代から綿々と続く歴史から学ぶことが出来る良書である。
正しい世界史を知らないと、日本人はユダヤ人問題はナチスの問題、と単純にとらえてしまいがちだが、とんでもない間違いだ。
世界はユダヤ人問題、パレスチナ問題に、じつにいい加減な取り組み方しかしてこなかった、というある種のタブーに切れ込んでいるところにも共感できる。
ある意味、欧米社会の無責任論だが、実際、世界にとってはとんだとばっちり、ということである
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psychiatrist
5つ星のうち5.0 わかりやすい。
2025年8月27日に日本でレビュー済み
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非常にまとまっている。ユダヤ人がひと塊の人々ではないことがわかったことは有意義だった。
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suzy
5つ星のうち3.0 なかなか難しい
2025年6月27日に日本でレビュー済み
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想像以上に専門的で初めて聞く横文字が多数出てきて、通勤の合間に読むには難し過ぎた。
決して入門書ではなく、軽い気持ちで手に取ったのなら恐らく何度も躓くことになるであろう一冊。そういう意味では全く新書らしくない本だった。
一応完読したが、また時間を置いて最初からゆっくり読み直そうと思う。
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松浦 紀夫
5つ星のうち1.0 全く、面白くない本です。
2025年3月31日に日本でレビュー済み
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全く、面白くない本でした。知りたかった、肝心のユダヤ人が流浪の民となった経緯が全く無く、読めば読むほど、独りよがりの腹が立つ本でした。
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ヌース2
5つ星のうち3.0 若い世代の知識の欠如
2025年6月21日に日本でレビュー済み
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3千年の歴史を新書にまとめることに無理がある。著者が無理を承知の上で書いたつもりであろうことは、高校の歴史教科書を下敷きにしていることからもわかる。これを裏返しにいえば、著者には教科書程度の歴史的知識しかないことを吐露している。その上、考古学等の歴史的事実を脇において、もっぱら旧約聖書の物語のつなぎあわせを歴史の土台にしている。こんなことが果たして許されるのであろうか。上下2巻とかの形で自らの知見で書いてほしかった。ちなみにこの本を知ったのは、荻上チキのラジオ番組であった。
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θ
5つ星のうち5.0 単純ならざるユダヤ人の系譜
2025年3月1日に日本でレビュー済み
フォーマット: 新書
本書は、ユダヤ教出現以前から現在のイスラエルやアメリカまで、非常に長い射程でユダヤ人の歴史を論じた一冊である。
歴史記述の視点としては、「主体か構造か」の二択ではなく、両者の視点を組み入れて描き出そう(p7-9)というのが著者のスタンスである。
ユダヤ人の特徴としては、血縁集団として規定される一方で、普遍的律法の担い手とされる、という二重性がある(p22)。また、議論を積み重ねながら慎重に解釈し、ドグマ化はさせない、という姿勢をとっており(ラビたちの議論の口伝律法であるミシュナーにも、多様な議論が出ていて結論が出ないものも多々ある)、そのためユダヤ教内には様々な派閥が出現する(p44-45)。また、呪術や奇跡のような非理性的存在は否定的で、地上のことについては賢者たちが議論を重ねて結論を出すべきという立場をとる(p65)。(ただしカバラー神秘主義やハシディズムは後に現れる:p146-)
ユダヤ教は律法中心主義で、日常実践が重視されるのに対し、キリスト教は内面と信仰が重要で、安息日や偶像崇拝禁止などは徐々に緩められていった(p53-54)。ラビとイスラームのウラマーの類似性、偶像崇拝禁止の厳格さや食の禁忌、カトリック教会のヒエラルキー構造に対し、シナゴーグもモスクも主従関係はなく公民館的な場所であることなど、むしろイスラームと一定の類似性がある(p73-75)(むしろ類似性とユダヤ教の強い影響力ゆえに、ムハンマドは強い敵対を示すこともあった:p76-77)。
古代においては、ペルシャ帝国はユダヤ人の庇護の側面を持った。ペルシャとしてもユダヤの立法で秩序が保たれるのは好都合だったのである。前四世紀までに立法編纂がされていたことや、ユダヤ人自身が王になることに否定的であることは、こうした背景があるとしている(p37)。ペルシア帝国下の6世紀ごろのバビロニアでは、完成度の高いタルムードが編纂されている(p68)(一方、中心はエルサレム地域という意識は持ち続けている:p71)。一方エルサレムはローマ支配となり、ユダヤ人国家は73年の第一次ユダヤ戦争で消滅するが、著者はユダヤ戦争以前からユダヤ人は離散しており、ユダヤ世界全体で見れば国家消滅はそこまで死活的問題ではなかったとしている(p51)。なお、ローマによる神殿破壊と支配層一掃によってファリサイ派が残り、そこからラビ派が生まれたという見方には、ファリサイ派も体制派であること、ラビは4世紀頃以降しか存在しないことなどから、最近の研究では懐疑的だと述べられている(p52)。
ラビは司祭というよりもローマの法学者に近い(ただし今の法曹より守備範囲は広い)。民法のような「どのような商取引をしてよいか」などの内容もあり、そのためラビは大商人として活躍しやすかった。共同体から給与をもらって生計を立てるラビは14世紀以降だという(p60-61)。ユダヤ人が金融や商業に偏る理由として、ユダヤ人の土地所有が禁止されてそれぐらいしか職業がなかったと言われることもあるが、実際には土地所有禁止は近世からであり、教育の充実や識字率の高さが有力視されているという(p71-72)。イスラムのイベリア半島では、ユダヤ人はとくに承認に偏っていたわけではなく、多種多様な職業についていた(p94-95)。
キリスト教のローマ帝国からは、ユダヤ教徒はイエスを殺してメシアを信じない点で誤りだが、メシアの存在を広めていくことはよいことであり、「生かさず殺さず」、ユダヤ人殺害まではいかないが差別するのは当然、という立場がとられやすかった(p96-97)。またユダヤ人商人ギルドは、権力者からすると「税の上納」として守るべき存在である一方、庶民からしたら権力者と結託する憎き収奪者としてユダヤ人が見られる要因ともなった(p103-104)。これは後に東欧でも中間マイノリティとなることで庶民の憎悪を集めたこと(p142-143)とも類似性が見れる。
近世に入り、さらなる二つのディアスポラが起きる。スペインからの脱出者のスファラディームと、ドイツ系のアシュケナジームである。スファラディームの大半はオスマン帝国に渡り、オスマンもユダヤ人の交易や技術を欲して保護した(p118-119)。アシュケナジームはポーランドに流れた(p135)。ポーランドではカハルと呼ばれる組織が自治を担った(p138)。
近代に入り、人が個人として尊重されるようになるとともに、ユダヤ人はまさにユダヤ共同体の特権を捨てることで市民になることが出来るという、悩ましい選択を迫られた(p161-163)。ユダヤ人には、ユダヤ合理主義(ハスカラー)の広まりや、そこをさらに超えて同化へと進んでいくものも多かったが、今度は逆に「ユダヤ人=合理主義」として近代合理主義への批判が反ユダヤ主義に結びつくことにもなった(p167-171)。
1900年時点で、ユダヤ人の半数はロシア帝国(東欧の拡張された部分が主)に住んでいた(p175)。定住区域に限るとユダヤ人が半数近い地域もあり、主観的にはマイノリティとも言えない状況すらあった(p183)。ユダヤ人は富裕のイメージに反し、ロシア内では家内制手工業の製造業が多かったが、工業化で職を失い、都市部で貧乏な労働者となることが多かった(p183-185)。ロシア内のシオニズムは、大半はパレスチナに行かずロシアに残る前提だったが、そうした人々がシオニズムを支持したのは、ポグロムなどを受けるユダヤ人の地位と誇りの上昇を意図したものであった(p188-189)。
ロシア革命後、他の勢力が反ユダヤ行動をとる中では、赤軍はユダヤ人にとって「もっともまし」な選択肢であった。しかしこれもまた、ソ連支配地域(ウクライナなど)では「ソ連の手先としてのユダヤ人」のイメージを形成していく(p204-205)。東欧での反ユダヤのポグロムなどは、人種主義ではなく「敵との内通やスパイ」としての(過大)危険視だとしている(p217-218)。
パレスチナへの移民は、シオニズムの崇高な理念よりも、貧しいロシア内ユダヤ人が「北米行きより費用が安い」という理由で選ばれた場合も多かった(p243)。シオニストは土地を購入して入植したが、問題だったのは土地の所有者がシリアやレバノンの不在地主で、当地の小作農は土地を失って失業することになったことである(p246-247)。入植するユダヤ人へのアラブ人の闘争は、反植民地闘争としての側面が強かったが、ユダヤ人は「ポグロム」と十把一絡げに同一視して応酬した(p249-250)。
イスラエルは形の上ではユダヤ人を歓迎したが、アシュケナジームはスファラディームを遅れた人々とみなしており、スファラディームも中東・アフリカ系をミズラヒームとさらに東への蔑視を連鎖させていった(p257-258)。また、アイヒマン裁判以前、ホロコースト被害者は「シオニズムに従わず、自衛意識が欠如してたゆえの破局」とみなされ、生き残った者も沈黙を強いられていた(p260)
ソ連崩壊後、旧ソ連出身者の人口割合は2割ほどにまでなったが、こうした人々は右派強硬派を支持した。かつては技術職に就きながら、ヘブライ語が出来ないため低賃金食を強いられていること、各民族は本拠地を持つというソ連の考え方から、アラブ人はアラブの国にけばよいという発想に親和的であること、チェチェン紛争によるムスリム危険視、などが背景にある(p266-267)。
その他印象に残った記述
・最後の審判や天国、死者の復活の概念は、諸説あるがゾロアスター教由来の可能性がある(p38)
・ユダヤ教では、メシア到来までの日を数えることも禁止されている(p50)
・10~13世紀西欧では、ユダヤ人に限らず同性愛者やハンセン病患者、売春婦など「キリスト教からの逸脱」は総じて迫害された(p106)
・イスラエル超正統派は、男は働かずに一日中勉学に励み、女が外で働く(p153)
・現在でも金曜夕方ー土曜夕方(安息日)に国際線のベングリオン空港に降り立っても、公共交通機関は一切動いていない(p256)
ユダヤ人の長い歴史を描いた好著である。
視点を一般ユダヤ人にしているため、例えばロスチャイルド家や富裕な金融系ユダヤ人などはほとんど扱われていないが、これは仕方がないだろう(そうした人々と一般ユダヤ人の関係は論じてくれてもよかったとも思うが)。
また、総じてソ連と赤軍はユダヤ人に(相対的には)やさしいように描かれているが、スターリンの反ユダヤ主義( ブラッドランド などで描かれる)などが軽視されているきらいはないでもない。
ともあれ、ユダヤ人の複雑な歴史を一望させてくれる、価値ある一冊であることには間違いないであろう。
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榎戸 誠
5つ星のうち5.0 周囲との関係で自らを「カスタマイズ」しつつも、自らの特性を維持してきたユダヤ人
2025年4月6日に日本でレビュー済み
フォーマット: 新書
『ユダヤ人の歴史――古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで』(鶴見太郎著、中公新書)のおかげで、古代から現代に至るユダヤ人の歴史を知ることができました。
著者のユダヤ人観はユニークです。「居住国と折り合いをつけながら、自らの原則は貫く。そのことが仲間内の信頼につながり、ネットワークが維持されていく。重要なのは、状況に自分を合わせるということでは必ずしもないことだ。むしろ自らの特性とうまく組み合わさるところに入っていき、多少は周囲との関係で自らを『カスタマイズ』しつつも、自らの特性を維持することが周りのメリットにもなり、そのことで自らの居場所がさらに安定化するという好循環を目指すのだ。金融業で成功し、富豪として西洋社会に存在感を持つユダヤ人の存在も、こうした視点から読み解くことができる」。
しかし、こうした戦略が常に成功するわけではないことにも言及しています。その最悪の例がホロコーストです。
ベンヤミン・ネタニヤフは、ユダヤが何と組み合わさり生存するかを考えない点で、ユダヤ史の中では例外的存在だと指摘しています。
シオニズムに関する解説は勉強になりました。シオニズムは、パレスチナにユダヤ人の民族的拠点を打ち立てることを目指す思想・運動であり、今日のイスラエルの思想的基盤になっています。
シオニズムを率いたのは東欧出身のユダヤ人・アシュケナジームでした。当初はシオニズムから距離を置いていた中東・北アフリカ出身のユダヤ人・スファラディームも巻き込まれていったが、アシュケナジームはスファラディームを下に見ていたと書かれています。対アラブでは一枚岩のように見えるユダヤ人社会も、内部は複雑なのですね。
カスタマー画像
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巴里萌
5つ星のうち5.0 本書で初めて多くの疑問が解けました
2025年4月27日に日本でレビュー済み
フォーマット: 新書
ユダヤ人の歴史に関する本はアレコレ読みましたが、「そこが知りたいのに書かれていない」本ばかり。その点、本書は新書にもかかわらず疑問だったことにも言及されており、大いに勉強になりました。
近代になりユダヤ人解放令が出されたのに差別がより激しくなったのは何故か。これは大きな疑問の一つでしたが、これについて著者はかく説明します。
「これは、日本において江戸時代までは蔑まれながらも社会のなかで独自の役割を持っていた『えた・ひにん』が、明治の国民平等化政策により法的には平等となる一方で独自の位置づけを失い、特殊性が抜けない『部落民』としてかえって激しい差別に遭うようになった構図に似ている」(p160)と。
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