北朝鮮の核実験(9日、5回目)が許されないことは言うまでもありません。
しかし、ただ批判し制裁を強化するだけでは何も変わりません。憎しみが増すばかりです。北朝鮮指導部はなぜ愚行を繰り返すのか。北朝鮮を追い詰めているものは何なのか。私たちはいったいどうすべきなのでしょうか。
①朝鮮戦争は終わっていない。
まず確認しなければならないのは、北朝鮮とアメリカ・韓国は現在も戦争中だということです。1950年6月25日に始まった朝鮮戦争は1953年に「休戦」(7月27日に休戦協定署名)しただけで終結はしていないのです。
北朝鮮は「平和協定」締結によって戦争の終結を望んでいますが、それを拒否しているのはアメリカの方です。
例えば今年1月、北朝鮮は4回目の核実験を行いましたが、「北朝鮮が1月の核実験前にオバマ米大統領に対し、朝鮮戦争の休戦協定に代わる平和協定締結をめぐる協議を要請、米朝が接触していたことが分かった」(2月23日付中国新聞=共同)。米政府はこの事実を認めたうえで、協議を拒否しました。
金正恩第一書記は今年5月の朝鮮労働党大会での活動報告でも、「米国に朝鮮戦争休戦協定を平和協定に転換するよう改めて要求」(5月9日付中国新聞=共同)しました。
アメリカはこうした北朝鮮の提起・要請を拒否するばかりか、逆に韓国との間で大規模な軍事演習を繰り返しています。北朝鮮が「ロケット」を発射するのは、米韓軍事演習への対抗の意味合いがあります。日本のメディアは北朝鮮が「ロケット」を打ち上げるたびに「挑発だ」と繰り返しますが、いったい「挑発」しているのはどちらでしょうか。
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日本は朝鮮戦争で米軍の出撃基地となり、「戦争特需」でぼろもうけしました。日本(日本人)と朝鮮戦争は深い関係にあります。しかし多くの日本人はそのことを忘れ、あるいは朝鮮戦争自体を知らないのです。
しかし、「北朝鮮と韓国の人々はこの大戦火をけっして忘れたことがありません。特に北朝鮮について言えば、今日にいたるまで同政府の見解と行動を方向づけているのは、この戦争なのです」(ガバン・マコーマックオーストラリア国立大名誉教授、『転換期の日本へ』NHK出版新書2014年)。
日本は今、集団的自衛権行使の戦争法によって公然と米日韓軍事協力体制の一端を担い、朝鮮戦争の当事国になろうとしているのです。
②「核保有大国」のダブルスタンダード
核実験が許されないのはその通りです。ではアメリカはじめとする核保有国はどうでしょうか。核実験を続けているではありませんか。自分たちは核兵器を保有し、核実験も続けるが、他の国が核兵器を持ったり実験するのは許さない。これは核保有・実験に対する明白なダブルスタンダード(二重基準)であり、核保有大国のエゴにほかなりません。
北朝鮮の核兵器保有や実験が許されないのと同様に、アメリカはじめいかなる大国の核兵器保有・実験も許されないのです。
しかし核保有大国に核兵器を放棄する意思はありません。国連の「核兵器禁止条約」にアメリカはじめ核保有大国が一貫して反対していることにもそれが顕著に表れています。
安倍首相はしばしば「安保理決議違反」を口にしますが、その安保理が核保有大国で占められている事実を忘れることはできません。
③元凶は「核抑止力」論
北朝鮮の核兵器保有・実験が「核抑止力」論に基づいていることは明らかです。今回も「労働新聞」で「核抑止力の強化」を強調しています。「核抑止力」論こそ核兵器保有・開発の元凶です。
そしてアメリカはじめ核保有大国や日本など「核の傘」の下にあるとされる国も、「核抑止力」論にどっぷりつかっています。
「核抑止力」論によって北朝鮮もアメリカも、自縄自縛に陥っているのです。
「核抑止力」論から脱却しない限り、核戦争の恐怖はなくなりません。
以上のことから、日本(日本人)が行うべきことは次の点ではないでしょうか。
1、北朝鮮と戦争状態にある韓国、アメリカの一方的な情報を鵜呑みにするのでなく、情報は可能な限り広く集め、冷静に分析する。
2、「核抑止力」論から脱却し、核保有大国も例外なく、核兵器を禁止・廃絶する。
3、戦争法を直ちに廃止し、日米軍事同盟を廃棄して、非同盟・中立の立場から、北朝鮮を含む東アジアの平和的な話し合い場を恒常的につくる。
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