2023-03-24

淵に立つ - Wikipedia

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淵に立つ

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淵に立つ
Harmonium
Fukada Koji, Mahiro Kana, Tsutsui Mariko & Taiga from "Harmonium" at Opening Ceremony of the Tokyo International Film Festival 2016 (33258373050).jpg
第29回東京国際映画祭に登壇した深田晃司、真広佳奈、筒井真理子、太賀
監督深田晃司
脚本深田晃司
製作新村裕
澤田正道
製作総指揮福嶋更一郎
大山義人
出演者浅野忠信
筒井真理子
古舘寛治
太賀
音楽小野川浩幸
主題歌HARUHI「Lullaby」[1]
撮影根岸憲一
編集深田晃司
製作会社『淵に立つ』製作委員会
配給エレファントハウス
カルチャヴィル
公開フランスの旗 2016年5月14日(カンヌ国際映画祭[2]
日本の旗 2016年10月8日
上映時間119分
製作国フランスの旗 フランス
日本の旗 日本
言語日本語
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淵に立つ』(ふちにたつ、英題:Harmonium)は、2016年の日本・フランス合作のドラマ映画である[3]。監督を深田晃司、主演を浅野忠信が務めている[4]第69回カンヌ国際映画祭にて、「ある視点」部門の審査員賞を受賞した[5]

あらすじ[編集]

町工場を営む利雄は、妻子との会話はあまりないもののとくに波風の立たない穏やかな家庭を有していた。そこにある日、利雄の古い友人である八坂が現われる。前科をもつ八坂は出獄して間もない身の上であり、その身を案じる利雄はさっそく自宅の一室を彼のために貸すのだった。突然のことに動揺する妻・章江も八坂の人当たりの良さと誠実さに好感をもった。通っている教会での演奏会のためオルガン練習に余念のない娘・蛍も、演奏に長けアドバイスしてくれる八坂になついてゆくのだった。すっかり家族同然になった八坂は、あるとき章江に殺人を犯したことを告白するが、すでに彼に揺るぎない信頼を寄せていた章江にとっては、むしろ八坂への感情が愛情に変わるきっかけとなるばかりであった。家族が八坂を核として動き始めた実感を得たとき、彼による暴挙は始まった。すべてを目の当たりにし狼狽する利雄をおいて、八坂はつむじ風のように暴れ、そして去っていった。

8年の月日が流れた。町工場は平穏を取り戻してはいたが、家族には言い知れぬ痛みを伴う傷跡が残されていた。皆のため失踪した八坂を探させる利雄ではあったが、時の流れがいつしか諦めの気持ちを彼に抱かせていた。利雄の工場では、勤めていた青年・設楽の退職に伴い後継者として孝司という若者が出入りするようになっていた。熱意をもつ孝司は好意的に迎えられていたが、ふとしたことから利雄に、自分の父親が八坂であることを洩らす。孤児であり父親の記憶はない、と弁明する彼だったが、家族の忌まわしい記憶を掘り起こさせるには十分であった。利雄は章江に対し、八坂と自分にまつわる秘密を明らかにするが、もはやそれは遅すぎた告白であった。

探偵の調査の結果、撮影された八坂とおぼしき写真をたよりに家族は地方へと旅立つ。その旅路の果てに待つものは何かを、家族たちは祈るような気持ちをこめて注視し続けた。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

  • 監督・脚本・編集 - 深田晃司
  • 主題歌 - HARUHI「Lullaby」
  • 音楽 - 小野寺浩幸
  • 撮影 - 根岸憲一
  • 照明 - 高村智
  • 録音・効果 - 吉方淳二
  • 美術 - 鈴木健介
  • 編集コンサルタント - Julia Gregory
  • 助監督 - 山門朔、石井千晴、浜潟尚
  • ラインプロデューサー - 南陽
  • サウンドデザイン - Olivier Goinard
  • 工場所作指導 - 藤田製作所(藤田進、関川大介)
  • 農業指導 - 金子秀富
  • 介護指導 - 松本明子、鈴木貴子、生井志津子
  • アクション - 西田真吾、山東文発、辻やすこ、高木友、浅見奉史
  • ポスプロ - COMME DES CINEMAS
  • Special Thanks - 池田晃、村上正樹、平田オリザ、二宮佑己子
  • プロデューサー - 新村裕、澤田正道
  • 制作プロデューサー - 戸山剛
  • 制作協力 - メディア・トレーディング、トーキョーガレージ
  • エグゼクティブプロデューサー - 福嶋更一郎、大山義人
  • 共同製作 - 浅井賢二(名古屋テレビ放送)、Anne Pernod(COMME DES CINEMAS)、長谷川康子(MAM FILM)、牧和男(イオンエンターテイメント)、増田英明(エレファントハウス)、木原康博(MAM)、市村友一(朝日新聞社)
  • 企画 - 米満一正、深田晃司
  • 製作 -『淵に立つ』製作委員会(名古屋テレビ放送、MAM FILM、イオンエンターテイメント、エレファントハウス、朝日新聞社)、COMME DES CINEMAS

上映[編集]

2016年9月6日、東京都のユーロライブにて完成披露試写会が行われた[6][7]。同年10月8日、全国50スクリーンで一般公開された[8]。10月30日、第29回東京国際映画祭の「Japan Now」部門にて上映された[9]

評価[編集]

Variety』のマギー・リーは、「本作は、ロベール・ブレッソン大島渚に通じる批評的な思慮深さをもって、家族のあいだの傷に迫っている」と指摘した[10]。『The Hollywood Reporter』のデボラ・ヤングは、「日本で最も革新的な映画作家のひとりである深田晃司は、豊かで得体の知れない本作において、彼本来の調子を取り戻している」と評価した[11]

受賞[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 深田晃司監督、浅野忠信主演「淵に立つ」主題歌はHARUHIの新曲に決定!”. 映画.com (2016年8月4日). 2016年10月7日閲覧。
  2. ^ カンヌで浅野忠信、深田晃司監督らに満場のスタンディングオベーション”. 映画.com (2016年5月17日). 2016年8月21日閲覧。
  3. ^ 浅野忠信主演の日仏合作「淵に立つ」、カンヌ映画祭のある視点部門に正式出品”. 映画ナタリー (2016年4月14日). 2016年8月21日閲覧。
  4. ^ 浅野忠信×深田晃司のカンヌ受賞作「淵に立つ」緊張感みなぎる予告編公開”. 映画ナタリー (2016年8月12日). 2016年8月21日閲覧。
  5. ^ 深田晃司監督、浅野忠信主演作「淵に立つ」がカンヌ「ある視点」部門審査員賞受賞”. 映画.com (2016年5月22日). 2016年8月21日閲覧。
  6. ^ 浅野忠信、「淵に立つ」で演じた“怪しい男”は「僕にぴったりの役柄」”. 映画ナタリー (2016年9月7日). 2016年9月15日閲覧。
  7. ^ 浅野忠信「僕にしかできない役」…主演映画「淵に立つ」完成披露試写”. スポーツ報知 (2016年9月7日). 2016年9月15日閲覧。
  8. ^ 「淵に立つ」20カ国以上で配給決定! 深田晃司監督「グローバルな日本映画になれた」”. 映画.com (2016年10月8日). 2016年10月20日閲覧。
  9. ^ 「淵に立つ」深田晃司監督、“映画の神様”の粋な計らいにガッツポーズ!”. 映画.com (2016年10月30日). 2017年3月27日閲覧。
  10. ^ Lee, Maggie (2016年5月15日). “Cannes Film Review: ‘Harmonium’”. Variety2016年8月21日閲覧。
  11. ^ Young, Deborah (2016年5月15日). “'Harmonium' ('Fuchi ni Tatsu'): Cannes Review”. The Hollywood Reporter2016年8月21日閲覧。
  12. ^ 浅野忠信、主演映画『淵に立つ』カンヌで審査員賞受賞「最高です!」”. ORICON STYLE (2016年5月22日). 2016年8月21日閲覧。
  13. ^ カンヌ受賞の喜びを深田晃司監督と太賀が語る『淵に立つ』”. エンタメステーション (2016年10月16日). 2016年10月16日閲覧。
  14. ^ 第38回ヨコハマ映画祭 - 2016年日本映画個人賞”. ヨコハマ映画祭 (2016年12月3日). 2017年3月27日閲覧。
  15. ^ エルが選ぶ2016年映画賞 授賞式に黒木華や菅原小春が登場”. Fashionsnap.com (2016年12月20日). 2017年3月27日閲覧。
  16. ^ “浅野忠信主演「淵に立つ」高崎映画祭で最優秀作品賞”日刊スポーツ. (2017年1月6日) 2017年1月6日閲覧。
  17. ^ “キネマ旬報ベスト・テン決定、「この世界の片隅に」「ハドソン川の奇跡」が1位に”映画ナタリー. (2017年1月10日) 2017年1月10日閲覧。
  18. ^ “毎日映画コンクールで「シン・ゴジラ」が大賞ほか3冠獲得、「君の名は。」は2冠”映画ナタリー. (2017年1月19日) 2017年1月19日閲覧。
  19. ^ 「第67回芸術選奨」演劇部門は金剛永謹、橋爪功、浦井健治が受賞 近藤良平、宮藤官九郎、深田晃司らも選出”. シアターガイド (2017年3月9日). 2017年3月27日閲覧。
  20. ^ 浅野忠信、アジア・フィルム・アワードで主演男優賞!”. 映画.com (2017年3月22日). 2017年3月27日閲覧。

関連文献[編集]

小説

外部リンク[編集]


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『淵に立つ』に投稿された感想・評価
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わんこの感想・評価2023/03/16 18:33

3.2
白シャツで佇む浅野忠信とオルガンの音が気味悪い。前科ある人間が普通に馴染もうとしてもどこかで歪んでしまって、難しい。
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archの感想・評価2023/03/13 21:39

4.3

淵に立つ、本当に最後に淵に立つのだ。

無害さと潔白を象徴する白からは剥き出しに現れる欲望の"赤"。あの家族の不幸の象徴そのものの赤。
そして川の字、前半の川の字とラストの川の字。
そういった色やモチーフの使い方がありえないレベルで上手い。

本作に1つキーワードを与えるのなら"共犯者"という言葉ではなかろうか。
1つの秘密を共有したり、同じ罪を背負うことによって繋がりが強化される。皮肉にもそれがある夫婦を、真に夫婦とさせるきっかけとなったりするのだ。

夫婦両方が別々の形で娘の"もしも"を想像してしまう下り、また最後の人工呼吸の場面において、「誰を救うのか」という究極の選択。そこにおける刹那の逡巡。凄まじいものがあった。

油断しているとゾッとするようなカットが舞い込んでくるのが深田晃司作品、本作であれば落ちてくるシーツやトンネルを明けたときの奥さんの顔。そしてかつての幻影を見ているかのような「ピアノを弾く娘とシャツの男」。
1つの家族に決定的な傷を追わせるような不幸が舞い込む。しかしそれが「家族」という連帯を皮肉も強化してしまうという話はその後の『LOVELIFE』に通ずるものだと言える。
いいね!4

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jfr6422の感想・評価2023/03/04 15:27

3.4


謎が多くて一回観ただけでは理解しきれなかった。それぞれの影や闇が徐々にあらわになるものの、どこに向かっていくのか何を伝えたかったのか…
オルガンの明るい曲に空しさを感じ、この物語の重さが引き立っていたね。


Kokoの感想・評価2023/03/02 09:42

3.5


落ち着いたトーンの描写なのに、終始気味の悪さとハラハラ感が漂ってくる。
仲野太賀の違和感なくストーリーに生きてくる感じがすごいいいなー、めちゃくちゃ素敵な助演。

淡々としたストーリー展開と、細かな描写から出る個々のキャラクターがすごくフランス映画っぽいなと思った。

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psychocandyの感想・評価2023/02/25 20:55

4.0


「あの男が現れるまで、私たちは家族だった」

このキャッチコピーはやや皮肉が過ぎるような気がします。

本作は「家族」というコミュニティの危うさ、脆さを描いた作品であり、作品の中では、突如現れた八坂という男との同居をきっかけとして、堰を切ったように崩壊していく家族の姿が描かれています。

浅野忠信が演じる八坂の狂気っぷりがあまりに強烈すぎて、観ている最中も彼の挙動に思い切り感情を揺さぶられてしまいますが、実のところ彼が本当に蛍ちゃんを殺めてしまったのかも明らかにされておらず、冷静に考えると彼が現れるずっと前からこの家族には深い闇が横たわっていて、この男の登場は、その闇が現実のものになるきっかけの一つに過ぎないだけ、といえなくもありません。(もちろん、それによる代償はあまりに大きすぎますが。)

ラストで再び目の当たりにすることになる、4人が渓流のほとりに並んで横たわるシーン。最後までこの家族が八坂(親と子)の呪縛から逃れることができないことを示唆する象徴的な映像を前に、観ている側もあらためて淵に立たされて深い闇をのぞき込むことになります。

全く救いようのないストーリーではありますが、時としてある種 めでたい象徴として幻想的に描かれてしまいがちな「家族」という共同体の別のリアルを、徹底的に情緒を排した冷徹な視点で描き切ったことに好感が持てる傑作でした


煙草と甘いコーヒーの感想・評価2023/02/20 16:14

2.0
なんだろう、、、

ストーリー展開にご執心のようで、その物語の中で生きている一人一人に対しての心の機微や揺らぎへの関心が弱い気がした。それって、結構致命的なことのように思えるのだが、、、
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むらJの感想・評価2023/02/19 16:44

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八坂がそれまでとは明らかに異なるトーンで怒りを表出させるシーンが映画前半の分岐点になっており、この瞬間にそれまでの潔癖なまでの八坂の立ち振る舞いの意味が回収される。ここからの八坂の転調はのうのうと暮…>>続きを読む
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かえるの感想・評価2023/02/19 16:40

3.6
終始じっとりと気持ち悪く嫌な雰囲気の映画だった。良い意味で。

キャンプのシーンで八坂の本性が現れるシーン突然過ぎてビックリした。演技力がすごい。

ただ腑に落ちないシーンも多かったのでこの評価で
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マサノイの感想・評価2023/02/15 00:34

4.8


凄すぎる。最高。精神的なスプラッターというか。『よこがお』でも思ったけどリアリティさ、緻密さ、だけじゃなくて「うおー、映画!」みたいなしっかりと飛躍した表現もあって素晴らしい。この人の作品は監督スゲ…>>続きを読む
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83rohの感想・評価2023/02/05 19:02

4.5
八坂が鈴岡家に入り込む。

そして8年後、山上もまたしれーっと鈴岡家に入り込む。

この悪意のないしれーっとした感じが怖い。

利雄の贖罪、章江の贖罪。

蛍だけが被害者なのか?
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