「脳内エコーチェンバー化」と日本特有の「空気」 宮台真司氏の抵抗:朝日新聞デジタル
第7回「脳内エコーチェンバー化」と日本特有の「空気」 宮台真司氏の抵抗
有料記事聞き手・田中紳顕2023年5月6日 9時00分
東京都立大学の宮台真司教授=本人提供
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世界では戦争や有事の危機、国内では政治家の襲撃事件が相次ぐ。不穏な空気が漂う中、対話や交流が遮られていないか。「遮断」を乗り越えるにはどうすればいいか。自らも昨年、大学構内で襲撃された東京都立大教授で社会学者の宮台真司さんに話を聞いた。
授業中、対話遮る「ひろゆキッズ」の流行語 対立恐れ「いいね」追従
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考えを正されなくなった結果、「他責化」と「他罰化」
分断や孤立が社会に影を落としています。親しい仲間と深い議論ができなくなり、考えが間違っていても正されなくなった結果、素っ頓狂な考えが脳内を残響し続ける「脳内エコーチェンバー化」が蔓延(まんえん)しています。
人は、他者に諭されたり叱られたりして思い込みを正されて、初めて妥当な政治的・哲学的な意見を持てます。それができずに見たいものだけを見る人がたどり着くのが「他責化」と「他罰化」。「自分の不幸は〇〇のせい」と思い込み、〇〇を攻撃し「ショボイ」自分を補完するのです。
昨年7月の安倍晋三元首相、昨年11月の私、先日の岸田文雄首相への襲撃は、恨みによる個人標的型か、条件を満たせば誰でもいい条件付き無差別型かという違いがたとえあったにせよ、共通して、何でも話せる仲間がいれば止めてもらえたはずです。
マスメディアも例外ではない
1960年代の団地化で地域が、80年代のコンビニ化で家族が、そして90年代中ごろからのケータイ化で関係全般が、空洞化し、以降「KY(空気を読めない)」を恐れてキャラを演じるだけの関係に、若者が支配されはじめます。それから四半世紀を経て彼らの子どもが若者となり、今は言いたいことを言えない空気が全体化しています。
日本人は古くから空気を読ん…
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