2016-10-07

崔吉城 -    「アジアの社会、文化と共同体」(概要)         崔吉城・櫛田宏冶...

 「アジアの社会、文化と共同体」(概要)         崔吉城・櫛田宏冶...
   「アジアの社会、文化と共同体」(概要)
        崔吉城・櫛田宏冶
 「なぜ今アジア共同体か」と思う人も多いだろう。アジアの連帯と国際関係、 経済共同体の構築が可能であろうか。国際化(国家間の関係)やグローバル化(地球上の全てに広がる)に反して分離独立の地域中心主義など、グローバル化とナショナリズムが真っ向から対抗することも多く、EU統合をモデルに挙げて主張する人もいる。しかし人種・民族・国籍の壁をどう乗り越えて、環境の問題と協力、異文化交流と人的交流の拡大などアジア共同体の構想を主張する人も多い。

世界へ広がる勢いとは逆行する地域結束を意味するか。もしそうであればアジアという広い大陸を以て偏狭な内旋的集団化の思想に過ぎない。アジア共同体精神はアジアが世界の一部であり、常に世界に広がるというよりユニバーサルなスタンスを持つものである。ワンアジア財団の佐藤洋治氏の講演を聞いて、異文化をただ理解するだけではなく、異文化は異様な存在なのか、理解すべきか、蔑視すべきか、愛し合うこと、平和を作るという意思を強く感ずる。国家という壁を越え、東アジアへ、アジアへ、世界へ、地球への意思が読み取れる。それは共有すべく、私は本講座を成功させたい。

アジアとはどこまでか。地域概念と政治的単位である国家を意味する。東部だけでも東南アジア、東アジア、東北(北東)アジア、極東アジアなどの名称がある。東アジアとは“アジア大陸の東部に位置する、太平洋に面した地域”を意味する。西洋から東という方向、地域エリアを思い、日本を東端にして国家たちがあり、としては中国の東北三省とロシア・シベリア、朝鮮半島、台湾が含まれるだろう。中国の中西部や南部を含まれ難しく、むしろロシアが含まれるが、文化的に儒教文化・漢字文化などを共通の概念としたら、ロシアは含まれない。一般的には東アジアといえばすぐ日本、韓国、中国、台湾などの国家群を指す。

古くは中国を中心に思想、宗教、たとえば儒教文化 、漢字文化が伝播、輸入されて文化圏を形成した歴史がある。それはベトナムと東南アジアの華僑社会を含みより広い。それは東アジア共同体の広さを本質とする要因でもある。多民族社会や国家によりグローバル化は必然と思ってもよい。古代史の世界ではより地域的に広く移動性の傾向があったといわれる。

歴史と社会によって多様である。現近代史による歴史意識が国家間の関係を難しくしている。近代国家が誕生してからは国家間競争意識が高まって植民地、戦争などにより不和緊張が続いている。東アジアでは共同体は無理だろうと主張する人も多い。これらの地域はそれぞれの社会構造や文化をもって生存している。多様な民族が異なった文化を持っている。政治的には近代国家が国家意識を高めながら不幸な歴史を持っている。しかし尖閣諸島問題、竹島問題、日本海呼称問題、歴史の教科書、言葉の問題など国境が妨げになっている。グローバリズムとは逆行の国粋主義によって日本と中国と韓国は、それぞれ歴史認識の隔たりが大きい。
マレーシアのマハティール首相が提起した東アジア共同体論は主に経済的共同体であったが、安全防衛では東アジアを超えて広がってしまう 。ASEAN+東アジア3国による連携、アメリカなどは分裂的地域主義的共同体には否定的でありながらインドやオーストラリアなどが参加する。2005年小泉総理が「東アジア共同体の構築」の目標を宣言し、その2009 年鳩山由紀夫内閣から「東アジア共同体」が再び出て広く言われるようになった。彼の構想は欧州の経験を範として東アジア共同体形成を目指す点で、政治統合を目指すものとして従来日本でなされた構想とは異なった。
リーダーシップの問題になると大国の中国の存在がアップされ、日本と中間にある韓国の協力を得ることが大事である。そこには阻害要因がある。歴史問題で暗礁に乗りかかっている。韓国は共同体の本質より日本の右翼化を恐れる反共を見せている 。それは戦前の日本中心に叫んだ「大東亜共栄圏」という存在であるからである。歴史認識や靖国神社参拝・竹島(独島)の問題で日韓関係がギクシャクしている中、ソウルで日韓協力委員会により「東アジア共同体を目指す日韓協力」が討論された 。EUのような通貨統合に向けて可能性ありという人、反面無理しても外に開かれた形で自由貿易の壁を取り払うことが望ましいという意見がある 。それがアジア・太平洋地域の新しい秩序を模索する上で一定の影響を及ぼしている。それは日本帝国の侵略支配を正当化するためのイデオロギーやスローガンだという人もいる 。
アジア共同体なのか―その原点を考えるか。現近代の国家や鎖国の王朝を除いて、国という枠を超えて1万3千年ほど遡ると人類の自然さに出会うだろう 。古ければ古いほどなつかしさが増す。それは歴史学のロマンスといえる。しかし近年最近史、歴史認識が話題になっている。特に戦後処理の問題が話題になっている。そして歴史が危険とされている。特にこの地域は経済発展を成し遂げて世界化が進んでいる。散発的な人口移動を含めて民族間の接触、協力が行われている。より質高いに協力のためには異文化の理解を共有していく必要がある。そこでアジアの連携、そして共同体的な認識が基礎になることを願っている。

前文化庁長官の文化人類学者青木保氏 は2009年東亜大学創立35周年記念公開講演で「東アジア共同体形成と学術交流」という題で重要な提案をされた。EUや「東アジア共同体」という言葉を聞くと通貨など経済的なことを思う人が多いが実は文化を考えなければならない。また「文化」というと中国に起源して朝鮮半島を経由して日本に定着したという古い説が思い浮かび、儒教文化や漢字文化云々と言う人が多い。しかしそれら漢字文化などは国によっては無くなったり深く地域化し、変異したりしており共通性を持つのは難しい。
 一番共有できるのは映画、音楽、マンガ・アニメなど流行する新しい現代大衆文化であり 、その文化の核心部を牽引するのは大学である。

世界でアメリカの力は大きいのはその中核がアメリカの大学の機能である。東亜大学は「東アジア大学University of East Asia」として下関というロケーションからもよい条件がそろっている。その機能を果たしていくことを期待している。たとえば東亜大学と韓国や中国の大学が連携して「東アジア大学大学院」を作る。具体的には姉妹提携や講義交流より積極的に共通の文化を研究する人材を育成する必要がある。そのためには財団設立と経営、言葉の問題など解決していく。それ自体が異文化を体験することであり研究することにもなると述べた。

崔吉城は2013年東亜大学40周年記念シンポジウムでグローバリジェーションと国際化が進んだと思われているが、それが危険性を持っていること、つまりボーダーレスを作ることになると述べ、ナショナリズム、右傾化が見られ、また国境をつくってきたことを指摘しながら経済的な面からだけではなく、東アジアの文化共同性の構築の重要性を指摘した。

ペルシャ湾岸の文化、対馬海峡との比較で、運河や海峡の概念について触れ、海はもともと国境がなく、「海峡」とは国境概念がなく、共有するものだ。元々共有すること、つまり関門海峡と朝鮮海峡 の海境界を超えていく、境界を超えるボーダーレス越境観念から考えると「東アジア」において、慰安婦、靖国など歴史認識問題が横たわっている事から政治家たちだけではなく、学者による歴史認識論をテーマにして、インターネットを通して韓国、中国・台湾の姉妹大学を結ぶ遠隔授業の構想として「東アジア共同学術交流ネットワーク作り」を提案した。

私(崔吉城)はシャーマニズム研究からアジア共同体を考えてみる。それは韓国のキリスト教復興へ影響している。日本では神道や仏教が盛んでありキリスト教は受け入れにくいのと対照的ある。もう一つの研究は日本植民地、特に戦後の反日などを客観的に見ようとしている。反日的な「独立記念館」反共的な戦争記念館などがある反独裁や国内的なものの展示はないこの点。この点はカンボジアのポルポトへの批判、アメリカのアフリカ歴史博物館などが見本になるだろう。
本学通信制大学院にはブロードバンドシステムがある。それを利用して大学が共同体構築の核心部を牽引していきたいと考えている最中にワンアジア財団から支援を受けることになった。東亜大学を発信地として下関から東アジアへ文化交流、文化政策などへの提言と学生や市民との討論ができることを期待している。インターネットを通して現地の研究者と繋げて映像参加を含め、討論もできる。経済、政治、文化、防衛などの交流、連帯が可能となりえる。本講座は上述した文化共同体を考えてきた経緯と脈をともにする。
ワンアジア財団の佐藤洋治理事長はすでに世界的に「アジア共同体」講義の創設を支援している 。広い地域、多様な民族、国家、組織が存在し、民族、国籍の壁を作る要因を持っているが国境を超え世界が一つになることを希望している。
本講座では東アジアの文化共同体に注目して要点を挙げておく。順番は不順である。
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1. 佐藤洋治の「やがて世界は一つになる」という現状を説明する。
- 姜信杓は代表的な国際化現象のスポーツの国際化と問題点に注目して「スポーツとオリンピックから見るアジア」で国家間競争、スポーツナショナリズムの問題点が問われる。
- それにしても鄭俊坤は「いま、なぜアジア共同体なのか」と問題を提起する。

2. グロバール化とナショナリズムの対抗はどう理解すべきか。
- 鵜澤和宏は「アジアの人種、そしてアジア共同体」で近代国家成立以前の遥か遠く数万年を遡ってから現在までの人類史を検討する。

3. 近代国家成立以降ナショナリズムや民族主義が現れる。その歴史に迫っていく。
- 原田環の「東アジア3国(日本、朝鮮、清)の近代化の相互比較」、
- 金俊の「アジア言説の再構築と新型共同体の形成について」、
- 黄智慧の「多民族多文化社会の台湾からみるアジア共同体の構築」、
- 上水流久彦の「民族構成とナショナリズムからの脱出」、
- 松原孝俊の東アジアの国際交易ネットワーク」が議論される。

4. 地理的境界意識がある。
- 川村博忠の「絵図から見るアジア」、
- 小林茂の「東アジアの近代地図研究と地図画像データベースのネットワークの可能性」で議論できる。

5. 地域差や壁とともに言語の壁がある。
- 孫蓮花の「アジアの社会、言語とアジア共同体の構築に向かって」、
- 非文字文化として金田晋の「アジアの美」が議論される。

6. 黄有福は東亜大学創立記念を祝い「アジア共同体の形成と異文化コミュニケーション」を講演する。

7. 総合シンポジウム
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講座は下記の如くであり、多くの学生と市民に参加を呼びかけたい。
月/日 講演のテーマ 講師名
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1 10/1 アジアの社会、文化と共同体 崔吉城(東亜大教授)櫛田宏冶(同学長)

2 10/8 多民族多文化社会の台湾からみるアジア共同体の構築 黄智慧(台湾・中央研究院教授)

3 10/15 アジアの人種、そしてアジア共同体 鵜澤和宏(東亜大教授)

4 10/22 アジア言説の再構築と新型共同体の形成について 金俊(中国・浙江工商大学教授)

5 10/29 絵図から見るアジア 川村博忠(東亜大非常勤教授)

6 11/5 いま、なぜアジア共同体なのか 鄭俊坤(ワンアジア財団特別研究員)

7 11/12 アジア共同体の形成と異文化コミュニケーション 黄有福(中国・中央民族学院名誉教授)

8 11/19 民族構成とナショナリズムからの脱出 上水流久彦(県立広島大准教授)

9 11/26 スポーツとオリンピックから見るアジア 姜信杓(韓国・仁濟大學校名誉教授)

10 12/3 東アジアの国際交易ネットワーク 松原孝俊(九州大学名誉教授)

11 12/10 東アジア3国(日本、朝鮮、清)の近代化の相互比較  原田環(県立広島大名誉教授)

12 12/17 アジアの社会、言語とアジア共同体の構築に向かって 孫蓮花(中国・大連理工大学准教授)

13 12/24 アジアの美 金田晋(東亜大学教授)

14 1/14 東アジアの近代地図研究と地図画像データベースのネットワークの可能性 小林 茂(大阪大学名誉教授)

15 1/21 やがて世界は一つになる 佐藤洋治(ワンアジア財団理

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崔吉城 本講座はSkypeによりchiekirusonとつなげて聴取ができます。

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