2017-02-28

ナショナル・アイデンティティとジェンダー (日本語) y 朴 裕河

ナショナル・アイデンティティとジェンダー (日本語) 単行本 – July 10, 2007
by 朴 裕河  (著)
3.0 out of 5 stars    2 customer reviews
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1.0 out of 5 stars重大な疑義
By えんじゅの樹 on June 17, 2014
Format: 単行本
先行研究を意図的に参考文献から排除するのは、明らかな論文不正だと思う。この本の「アパッチ小説」をめぐる議論は、青土社の雑誌『ユリイカ』の2000年12月号の特集「梁石日」で扱われているものである。巧妙に剽窃にならないように、先行研究を避けているが、それは研究者としてはむしろ悪質な行動だともいえる。博士論文の元になった研究で、梁石日を扱い、しかもアパッチ小説と称して論じているのに、この有名な雑誌の特集を知らなかったとは絶対にいえないだろう。だとすれば、知っていて「あえて隠蔽した」ということだ。早稲田大学の学位授与の基準も問題だ。少なくとも、同様の研究を行っている論文(川村湊氏と李建志氏の論文)をなぜわざわざ隠蔽したか、説明する必要があろう。相当に売れている書き手が書いたこの本が、早々に品切れ重版未定になっているのも意図的ではないかとさえ思えてします。作者には説明を求めたい。
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5.0 out of 5 stars隣国の尊敬すべき研究者
By iskra on March 1, 2016
Format: 単行本
恥ずかしい話なのですが、語学力の制約から海外の研究者の成果は英語文献以外には全く接したことがありませんでした。このたび、著者の朴教授が被告人となった(日本で言うところの)表現・学問の自由に関する裁判経過に関心を持ち、遅ればせながら邦訳された、もしくは邦語で書かれた著作を読んでみたところです。
隣の韓国にこれほどの学者がいたのか、という率直な感想を得ました。

書名から見るなら文学論、フェミニズム論、また戦争責任に関する考察が中心とも思われるでしょうが、教授の思想スパンは広く文明・文化論、資本制論にまで及ぶものです(もちろん表現には未だこなれないところはありますが)。上野千鶴子先生を知った時の衝撃に近いものがある、と言うならこの人のスケールを知って頂けるでしょうか。

朴教授の研究には更に教えて頂きたいところなのですが、朝鮮語を解さない自らの不能は如何ともしようがありません。人文社会系の研究者には是非一読をお勧めします。
尚、研究論文における「剽窃」云々は、他者論文の一部を引用しながら脚註・後註にその旨を明記しない場合に成立する概念であり、単に主題や着想をヒントとしたケースでは言及は必須ではありません。また大学における学位論文審査でも、指導教官、副査、査読者は審査論文に関係するかも知れない商業誌の内容にまで精通することは求められていません。そもそも本書第12章「共謀する表象―『アパッチ族』をめぐる戦後日本小説を中心に」は教授の学位申請論文に含まれていないことは、450頁の「初出一覧」に明記されています。良く読んでから、その後に初めて感想を述べるに値する良書なのです。

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