菅首相が学術会議の任命を拒否した6人はこんな人 安保法制、特定秘密保護法、辺野古などで政府に異論:東京新聞 TOKYO Web
菅首相が学術会議の任命を拒否した6人はこんな人 安保法制、特定秘密保護法、辺野古などで政府に異論
2020年10月1日 21時01分
早稲田大大学院法務研究科の岡田正則教授
政策提言を行う国の特別機関「日本学術会議」が、新会員として内閣府に推薦した法律・歴史学者ら6人の任命について、菅義偉首相が拒否していた問題。6人は安全保障関連法や特定秘密保護法などで政府の方針に異論を示してきた。政府の意に沿わない人物は排除しようとする菅政権の意図が浮かぶ。
■東京大社会科学研究所教授の宇野重規しげき教授(政治思想史)
2013年12月に成立した特定秘密保護法に対し、「民主主義の基盤そのものを危うくしかねない」と批判。「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼び掛け人にも名を連ねていた。07年に「トクヴィル 平等と不平等の理論家」でサントリー学芸賞受賞。
■早稲田大大学院法務研究科の岡田正則教授(行政法)
「安全保障関連法案の廃止を求める早稲田大学有志の会」の呼び掛け人の1人。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設問題を巡っては18年、他の学者らとともに政府の対応に抗議する声明を発表。
■東京慈恵会医科大の小沢隆一教授(憲法学)
15年7月、衆院特別委員会の中央公聴会で、野党推薦の公述人として出席。安保関連法案について「歯止めのない集団的自衛権の行使につながりかねない」と違憲性を指摘し、廃案を求めた。
■東京大大学院人文社会系研究科の加藤陽子教授(日本近現代史)
憲法学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」の呼び掛け人の1人。改憲や特定秘密保護法などに反対してきた。10年に「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」で小林秀雄賞を受賞。政府の公文書管理委員会の委員も務めた。
■立命館大大学院法務研究科の松宮孝明教授(刑事法)
17年6月、「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法案について、参院法務委員会の参考人質疑で、「戦後最悪の治安立法となる」と批判。
■京都大の芦名定道教授(キリスト教学)
「安全保障関連法に反対する学者の会」や、安保法制に反対する「自由と平和のための京大有志の会」の賛同者。
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【動画】政権批判の学者排除か、理由明かさぬ政府に不信感 学術会議任命拒否
2020年10月2日 06時00分
菅義偉首相はなぜ、拒んだのか―。日本学術会議が推薦した一部の新会員候補の任命を、政府が見送っていた。過去に例のない露骨な人事介入ともとれる事態。法律や歴史学の立場から政権を批判していた学者らの任命拒否を、理由を明かさぬまま「当然だ」とする政府の姿勢には、意に沿わない者を排除しようとの意図も透ける。学者たちは不信感をあらわにし、決定の撤回を求める声が上がる。(梅野光春、望月衣塑子)
日本学術会議の総会終了後、取材に応じる梶田隆章新会長=1日、東京都港区で
◆安保法案違憲と主張したせい?
「理由の説明がなく、到底承服できない。学問の自由への侵害ではないか」。拒否された1人、東京慈恵会医科大の小沢隆一教授(憲法学)が憤る。
思い当たる理由―。2015年7月、安全保障関連法案に関する衆院特別委員会で、野党推薦の有識者として「法案は違憲」と主張した。「仮に、政府の方針に都合の悪い発言をしたことが理由なら、自分たちに都合の悪い意見は聞かないよ、という意思表示ではないか」
小沢教授によると、推薦を受けたことは、事前に学術会議事務局から告げられていた。だが9月29日に、事務局から電話で「任命されない」と伝えられた。翌30日に担当者とあらためて面談した際、「(政府から)理由の説明はなかった」と聞かされた。
◆撤回求め「総力で」
1日の総会には出席。同じく任命拒否された早大法学学術院の岡田正則教授(行政法)、立命館大法科大学院の松宮孝明教授(刑法)と3人の連名で「任命拒否の撤回に向け総力であたることを求める」との要請書を、この日選出された梶田隆章新会長に提出した。
岡田教授は取材に「学術会議は学者の独立した審議機関なのに、(菅首相は)官僚組織の延長のように捉えているのかもしれない」と話した。
松宮教授は「法律的には、首相は推薦通り任命するつくりになっている」と指摘し、「憲法に保障されている学問の自由と、学術会議の独立性を脅かす暴挙だ。そもそも彼らに選別できる能力は備わっていない」と強く批判した。
◇ ◇
◆「理由なく承服できない」
日本学術会議の山極寿一前会長の話 任命権者は首相だから、新会員を任命しないことはありうる。だが学術会議としては、業績に基づいて推薦している。任命しないならば相当の理由が必要だ。理由を付けずに任命しないということがまかり通るなら、学術にとって大変、重大だ。私としては承服できない。
◆「首相に抗議申し入れも」
梶田隆章新会長の話 極めて重要な問題だ。しっかり対処していく。会長になる前は、学術会議の中立性、学問の自由に関わる問題ではないかと思った。首相に抗議を申し入れる可能性はある。具体的にどうするかは白紙の状態だが。
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「内閣人事局をブラックボックス化」 問題指摘し左遷 元官僚語る
2020年9月20日 05時50分
菅義偉首相は官邸主導の政策推進に向け、省庁幹部人事を一元管理する内閣人事局で「官僚支配」を続ける方針だ。政策に反対する官僚を「異動させる」と明言し、安倍前政権で問題になった忖度そんたく政治がさらに強まる恐れもある。菅首相が実績と誇るふるさと納税の問題点を指摘して左遷されたとされる元総務官僚の平嶋彰英・立教大特任教授(62)に話を聞いた。(聞き手・後藤孝好)
◆ふるさと納税に反対「飛ばされた」
―かつてふるさと納税を担当する総務省幹部だったが異例の人事で転出した。
菅政権の問題点を語る立教大の平嶋彰英特任教授
「官房長官だった菅さんから2014年に、寄付金の上限額の倍増や手続きの簡素化などを指示され、返礼品競争の過熱や、高所得者への過度な優遇になるという課題を指摘したら、反対したということにされて飛ばされた。『逃げ切りは許さないぞ』と圧力をかけられ、最終的には従ったが、異を唱えたのが気に入らなかったのでしょう」
―菅首相は官房長官の時に左遷を否定した。
「菅さんは国会で『事実無根』と答弁したが、官邸が私の人事を止めたのは事実だと思う。当時の高市早苗総務相が官邸に人事案を上げたら、私だけバツを付けられたということで『ふるさと納税で菅ちゃんと何かあったの』と心配されたことがあった。菅さんが内閣人事局をブラックボックス化してしまった」
―菅首相は政策の方向性に反対する官僚には「異動してもらう」と述べた。
「これまで以上に物を言いにくくなり、首相やその周辺の意見で物事が決まるようになる。『おれが言っているからやれ』では、法治国家ではなく、人治だ。(政治家の)各閣僚が中心となって(官僚に)指導力を発揮するのが本来の政治主導。閣議決定などで方向性を決めていないのに、官邸の有力者の意向だから従えというのでは行政が混乱する。内閣法の趣旨を理解せず、政治主導を履き違えている」
―ふるさと納税では最近、問題が相次いだ。
「菅さんは当初『お世話になった古里への恩返し』と説明していたが、懸念した通り自治体の返礼品競争で全然違う状況になった。止めておけばよかったと忸怩たる思いだ。高所得者は税控除の優遇が大きく、肉や魚などを食べきれないほど受け取れるという問題は今も残っている」
◆「官僚に忖度させる恐怖政治は勘弁を」
―菅首相に言いたいことは。
「官僚が選挙で選ばれた政治家の決定に従うのは筋ではあるが、忖度させる恐怖政治のようなやり方はもう勘弁してもらいたい。これまでの政権でもあったが、官邸で首相周辺が『首相はこう言っている』と指示することがまかり通っては困る」
―後輩の官僚に期待したいことは。
「役人としてやるべきことをやって良心に恥じない行動を取ってもらいたい。私はふるさと納税で最終的に言われた通りにやって後悔しており、あまり偉そうなことは言えないが。もし妥協したら、後々歴史で裁かれるでしょうから」
ひらしま・あきひで 1958年、福岡市生まれ。東京大卒業後、旧自治省入り。2015年にふるさと納税を担当する総務省自治税務局長から自治大学校長へ異動になり、異例の人事として国会審議でも取り上げられた。17年から現職。
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