2019-07-18

戦後平和主義を問い直す 林 博史


戦後平和主義を問い直す―戦犯裁判、憲法九条、東アジア関係をめぐって 単行本 – 2008/8/1
林 博史 (著)







山田進(仮名)

5つ星のうち5.0歴史学者として評価の高い著者による平和運動に対する重たい問題提起の書である。

2014年5月18日
形式: 単行本Amazonで購入
 歴史学者として評価の高い著者による重たい問題提起の書である。
 第1章 東京裁判・BC級裁判の再検討
 第2章 憲法九条をアジアの中でとらえ直す
 第3章 東アジア「過去の克服」の今日的意義
 が主要な目次である。

 著者の研究書が論述の裏付けとなっており、読後の調査研究のガイドブックとしても有用である。
 だが、平和運動への問題提起は実に重い。平和運動が日本で衰退している弱点を見事に衝いているように思われる。例えば、このごろ、砂川事件が話題になっているが、こういった本土の反基地闘争が沖縄と韓国への米軍基地の移転をもたらし、沖縄の人たちの負担を強めたことは、不勉強な私は本書を読むまで知らなかった。

 韓国政府や韓国社会がもっている問題の大きさや中国政府の思惑も明確に指摘している。朝鮮戦争の際に、韓国軍は日本軍を見倣って軍の慰安所を設置した過去があり、それには日本の過去の朝鮮半島での権力支配が深く関係していることを知ると、課題の大きさを痛感する。韓国では軍による「慰安婦」の問題は、日本軍によるものと、韓国軍によるものがともに問題にされて追及されているとのことである。それにしても、各国の極右=右翼のモデルが日本になっているとの指摘には驚いた。フランスや韓国の右翼が日本の右翼のやり方を称賛しているとのことである。
 本書はこの領域の問題を実に多角的に把握しており、平和について考える人々にとって、熟読し熟考するに値する好著である。

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