宇治市のウトロで7棟全半焼、祈念館の展示品候補も焼失
小西良昭
8月30日午後4時20分ごろ、京都府宇治市伊勢田町ウトロで「建物から炎が出ている」と、近隣住民から119番通報があった。宇治市消防本部によると、約4時間半後に鎮火したが、火元と見られる木造平屋建ての空き家約60平方メートルのほか周辺の空き家や倉庫計4棟が全焼、さらに住宅2棟が半焼した。けが人はいなかった。消防や府警が出火原因を調べている。
自宅が延焼した自営業の男性(46)は午後4時15分ごろ、家族が煙に気づいたという。「家の裏手から火と煙がすごく上がっていて、近所に声をかけて逃げた」と取材に話した。
ウトロ地区は戦時中、飛行場建設に伴って動員された朝鮮人労働者が住んだ歴史があり、今も在日コリアンが多く暮らす。地区の土地が転売され、住民らは立ち退きを求められたが、2011年までに募金や韓国政府の支援で土地の一部を買い取った経緯がある。住民らはその歴史を紹介する「ウトロ平和祈念館」を来年4月に開く予定だ。
今回の火災現場は、労働者らがかつて暮らした宿舎跡の近く。宿舎跡から回収した生活用品や食器棚を、祈念館での展示候補にと倉庫で保管していたが、この倉庫が全焼してしまった。近くにあった住民運動の立て看板十数枚も焼けた。
開館を準備するウトロ民間基金財団の金秀煥(キムスファン)理事は「土地問題やまちづくり運動の歴史を示す看板の大半が焼失した。他の場所で難を逃れた収集品もあるが、ウトロの歴史を象徴する貴重な品であり、被害は深刻だ」と話す。(小西良昭)
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