「天皇と日本人」 アメリカ人が考えた天皇と平成|好書好日
「天皇と日本人」 アメリカ人が考えた天皇と平成
評者: 保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2019年03月02日
天皇と日本人 ハーバード大学講義でみる「平成」と改元 (朝日新書)著者:ケネス・ルオフ出版社:朝日新聞出版ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784022950055
発売⽇: 2019/01/11
サイズ: 18cm/237p
憲政史上初の生前退位を迎えた日本。平成以後、「国民の天皇」はどうなっていくのか。気鋭のアメリカ人歴史家がタブーを破って迫る。エズラ・ヴォーゲルらとの対話も収録。ハーバード…
天皇と日本人 ハーバード大学講義でみる「平成」と改元 [著]ケネス・ルオフ
アメリカ人研究者による天皇制解析の書。すでに著者の書は2冊邦訳されている。「国民の天皇」という視点が持ち込まれたのだが、平成の天皇をどう理解すべきか、今回は天皇の側に焦点をあてている。
天皇と皇后の目標は、五つのテーマに収斂できる。戦後憲法による戦後体制の支持、社会の弱者への配慮、戦争の傷痕をいやすこと、国際協調主義に裏付けられた日本の誇り、皇后の重要な役割、と指摘する。
一部はハーバード大学での講義ノートを元に語られる。天皇の五つのテーマに抵抗する右派の論点を、批判的に紹介し、このような「皇室非難にはある特定のタイプがあって、それは戦後民主主義体制を根本的に否定する」という。
天皇皇后の目標課題のキーワードは平和、文化、寛容、真摯だとの記述にも納得がいく。ハーバード大教授らとの質疑応答もある。教授の一人の、新元号は「変革」を意味するものになるとの予想が興味深い。
保阪正康(ほさかまさやす)ノンフィクション作家
1939年生まれ。著書に『五・一五事件 橘孝三郎と愛郷塾の軌跡』『東條英機と天皇の時代』『昭和陸軍の研究』『吉田茂という逆説』『ナショナリズムの昭和』など。個人誌「昭和史講座」を中心とする昭和史研究で菊池寛賞。
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