[全訳付]「非常戒厳は統治行為」尹錫悦大統領、最新談話の問題点
今月3日晩の非常戒厳宣布が内乱罪に問われ、進退きわまる尹錫悦大統領。12日午前、国民向け談話を発表し、自身に否がない事を切実に訴えた。しかしその内容は多くの問題点を含むものであった。重要なものを取り上げ分析する。
●30分超の「告白」、新たに明らかになった動機
今回の談話は、3日晩の非常戒厳宣布、4日明け方の非常戒厳解除宣言、7日の国民向け謝罪に続く4度目の談話となった。過去3度の談話とは異なり、約30分と長時間にわたって行われた。
談話を通じ、3日の宣布時や与党幹部を通じてしか伝わってこなかった尹大統領の「非常戒厳宣布の動機」がよりクリアになった。まずはこの部分を見ていきたい。
(1)野党の暴走
尹大統領はこの日の談話を「野党は今、非常戒厳宣言が内乱罪に該当するとして、狂乱の剣の舞を踊っている」と切り出した。
剣の舞とは自身をも傷つけかねない踊りであり、強烈な迫力がある。それに「狂乱」という単語を付けることで野党を正常でない存在と位置づけ、自身に否はないことをアピールする形だ。
3日の宣布時にも言及した「巨大野党が支配する国会が自由民主主義の基盤ではなく、自由民主主義の憲政秩序を破壊する怪物になった」という言葉を繰り返した。
公職者の弾劾や特別検察法案の発議を政治扇動と見なし、さらに予算の削減などをその根拠に挙げた。文言も文言だが、談話を述べる際の座った目からは野党に対する尋常ではない怒りが感じられ、野党を「反国家勢力」と本気で考えていることがよく分かった。
(2)安全保障
さらにこんな野党が安全保障を危機に陥れていると強調した。注目すべきは、中国人3人が過去2年にわたって韓国の軍事施設を撮影していたという間諜(スパイ)行為を例に挙げたことだ。
韓国の現行刑法では間諜行為について「敵国のために間諜する場合や敵国の間諜をほう助する者は死刑、無期または7年以上の懲役に処す」としている。この場合の敵国は朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)を指すもので、前記の例では間諜行為として取り締まることはできない。
このため「敵国」を「外国」に変える法改正がここ数年議論されているが、改正には至っていない。
尹大統領はその背景に野党の存在があるとし「いったいどこの国の政党で、どの国の国会なのか分からない」としている。
3日の宣布時に「私は北韓共産勢力の脅威から自由大韓民国を守り、韓国国民の自由と幸福を略奪している破廉恥な従北反国家勢力を一挙に剔抉(訳注:撲滅)し、自由憲政秩序を守る」とした事と同じ脈絡だ。
なお今回、ちゃっかり若者男性に根強い嫌中感情へのアピールもしているのが巧妙だ。若者男性は尹大統領の弾劾を求める集会への参加率が最も低い。
(3)不正選挙疑惑
今回新たに公開された非常戒厳の動機として、尹大統領による選管への不信と不正選挙への強い疑惑がある。この日の談話の核心部分と言ってもよいだろう。
尹大統領はこの話題を「私が非常戒厳という厳重な決断を下すまで、これまでどうしても直接明らかにできなかった、より深刻な出来事がたくさんある」と切り出した。
簡潔に言うと、‘中央選挙管理委員会は政府のシステム点検を拒否しており怪しい’というものだ。
昨年下半期に、選管をはじめとする政府機関に対し北朝鮮からのハッキング攻撃があり、情報機関・国家情報院が政府機関を調査したのだが、その際に選管がこれを拒否し後に一部の点検を受けた出来事があった。
そしてこの際に「国情院の職員がハッカーとしてハッキングを試みると、いくらでもデータ操作が可能でありファイアウォール(セキュリティ)も事実上、無いに等しい状態」という報告を受け衝撃に陥ったとしたのだった。
今回の非常戒厳下で戒厳軍が中央選管の建物内に進入しサーバーの写真を撮っていたことが注目されたが、その背景にこのような「選挙不信」があることが改めて明らかになった形だ。24年4月の総選挙で与党は全体の300議席のうち108議席しか得られなかった。
なお、尹大統領が提起したこの疑惑は全く事実ではない。
12日付けの『ハンギョレ』によると、選管は当時の点検の際、「あらゆる可能性をテストする」という国情院側のために、「システムの構成図とシステム接続管理者アカウント」を提供し、「侵入を遮断する保安システムの一部を適用しない」状態を作り出していたという。
同紙によると、選管は12日にも「投票は検証可能な紙で行われている」とし、不正はあり得ない立場を改めて明らかにしたという。選管は近く公式に対応する予定とのことだ。
●強烈な自己正当化
この日の談話を貫く精神は、自分は間違っていないという確信、そして自己正当化だった。
非常戒厳の目的について「国民たちに巨大野党の反国家的な悪事を知らせ、これを止めるよう警告するもの」と述べた。
それと同時に「300人未満の実際に武装していない兵力で、あの広々とした国会の空間を相当な期間にわたって掌握することはできない」、「結局、兵力が投入された時間は1、2時間程度に過ぎない」と、警察の手で国会を封鎖し、軍を国会議事堂に突入させ戒厳解除決議案の票決を止めようとした事実を矮小化した。
「本気ではなかった」と言いたいのだろうが、それは結果論に過ぎない。
11日の国会立法調査処による報告書では、当時の非常戒厳は▲要件、▲手続き、▲国会封鎖や布告令といった実際の措置のいずれも、違憲の可能性が高いと結論付けている。
特に国会の封鎖は「国憲の紊乱(※)」にあたり、内乱罪の要件を満たしている。尹大統領は今後、弾劾訴追案の可決・否決とは別に、法の裁きを受けることになるという専門家の意見が、韓国メディアに多数見受けられる。
(※)刑法91条で国憲の紊乱(びんらん)について「憲法または法律に定めた手続きによらず、憲法または法律の機能を消滅させること、憲法により定めた国家機関を強圧により転覆またはその権能行使を不可能にすること」と定めている。
尹大統領はさらに非常戒厳について「その道しかないと判断し下した大統領の憲法上の決断であり統治行為が、どうして内乱になるのか?」、「大統領の非常戒厳宣布権の行使は、赦免権の行使、外交権の行使のような司法審査の対象とならない統治行為」とし、正当化を図っている。
「『戒厳は高度な政治行為』であるため司法判断の範囲を超える」というこの論理は、90年代までは通用していたものだ。
だが97年に憲法裁判所の全員合議体が全斗煥(チョン・ドゥファン)の79年『12・12軍事反乱』と80年『5・18内乱』への判断を下す際に「国憲の紊乱が目的であることが明らかな場合には、司法判断が可能になる」と解釈を確定させている。
このため、尹大統領の主張は司法の場で退けられる可能性が高い。
●談話の影響は
いくつかの世論調査によると、尹大統領の弾劾を支持する意見は70%台前半で(調査によっては80%を超えるものもある)、不支持は20%台前半となっている。この日の談話は、ひとまず今も尹大統領を支持する層に向けたものと受け止められる。
正直に自身の考えを明かし非常戒厳を正当化することで、支持層の結束を図るものだ。先週7日に弾劾訴追案が否決されて以降、弾劾可決世論は広がらずギリギリで踏みとどまっているため、まずはこのラインを守るために発したメッセージだろう。
しかし逆効果になる可能性が高い。与党・国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は談話の直後に「尹大統領が大統領職をこれ以上遂行できないことが明確になった」と述べ、「党論として弾劾に賛成すべき」と述べた。
それくらい、この日の尹大統領の発言は異様なものであったし、世間で噂されていた「極右ユーチューバーの影響を受けているのでは」という評価を自ら確定させる効果を生んだ。前述した3つの内容はいずれも、典型的な極右ユーチューバーの主張である。
尹大統領は「私を弾劾しようが捜査しようが、私はこれに堂々と立ち向かうつもり」と述べた。尹氏はすでに、弾劾訴追案の可決による憲法裁判所の審判と内乱罪での裁判を見越し、弁護団を結成したとされる。この日の談話は防御論理の一端を示したことにもなる。
だがそこには論理も何もなかった。選挙不正により巨大野党が生まれたのではなく、尹大統領みずからが施政に失敗したことで巨大野党が生まれたのである。これを理解しない限り、尹大統領は今後も転落し続けることになるだろう。
●[全訳] 国民向け談話(12月12日午前、尹錫悦大統領)
尊敬する国民の皆さん、
私は今日、非常戒厳に関する立場を明らかにするためこの場に立ちました。
野党は今、非常戒厳宣言が内乱罪に該当するとして、狂乱の剣の舞を踊っています。
本当にそうですか?
果たして今、大韓民国で国政の麻痺と国憲の紊乱(※1)を繰り広げている勢力は誰ですか?
(※1)刑法91条で国憲の紊乱(びんらん)について「憲法または法律に定めた手続きによらず、憲法または法律の機能を消滅させること、憲法により定めた国家機関を強圧により転覆またはその権能行使を不可能にすること」と定めている。
この2年半の間、巨大野党(※2)は国民が選んだ大統領を認めず、引きずり下ろすために、退陣と弾劾の扇動を止めませんでした。
(※2)尹錫悦大統領が大統領に就任した22年5月当時、野党は総数300議席のうち約180議席を占めていた。24年4月の総選挙を経て24年5月以降、野党の議席は192議席となっている。
大統領選挙の結果を承服しなかったのです。
大統領選挙から現在まで178回もの大統領の退陣、弾劾を求める集会が、任期の初期から行われました。
大統領の国政運営を麻痺させるためにわが政府(尹政権)が発足してから現在まで、数十人の政府公職者の弾劾(※3)を推進しました。
(※3)野党は議席数が過半数を超えているため、長官から検察官に至るまで、公職者の弾劾を国会で可決できる。可決と同時に公職者は職務停止となり、最終的な審判は憲法裁判所がくだす。認容ならば罷免、棄却ならば職務復帰だ。
弾劾された公職者は何の過ちがなくとも訴追から判決宣告の時まで、長期間にわたって職務が停止されます。
弾劾が発議され訴追が行われる前に、多くの公職者が自ら辞退することもしました。
弾劾の乱発で国政を麻痺させてきたのです。
長官、放送通信委員長などをはじめ、自分たちの非違(不正)を調査した監査院長と検事たちを弾劾し、判事たちを脅迫する状況に至りました。
自分たちの非違を隠すための防弾としての弾劾であり、公職の綱紀と法秩序を完全に打ち壊すことです。
それだけでなく、違憲的な特別検察法案を27回も発議しながら、政治扇動攻勢をかけてきました。
ついには犯罪者が自ら自分に免罪符を与えるセルフ防弾立法まで押し進めています。
巨大野党が支配する国会が自由民主主義の基盤ではなく、自由民主主義の憲政秩序を破壊する怪物になったのです。
これが国政の麻痺で、国家の危機状況でなければ何と言えばよいのですか?
これだけではありません。
今、巨大野党は国家安保と社会の安全まで脅かしています。
例えば、今年6月、中国人3人がドローンを飛ばし、釜山に停泊していた米国の航空母艦を撮影して摘発された事件がありました。
彼らのスマートフォンやノートパソコンからは少なくとも2年以上、韓国の軍事施設を撮影した写真が見つかりました。
先月には40代の中国人がドローンで国家情報院(韓国の情報機関)の撮影中に捕まりました。
この人は中国から入国してすぐに国情院に行って、このような事をしたことが確認されました。
しかし、現行の法律では外国人の間諜(スパイ)行為を間諜罪で処罰する方法がありません。このような状況を防ぐために刑法の間諜罪の条項を修正しようとしたが、巨大野党が頑強に立ちはだかっています。
前政権(文在寅政権)当時、国情院の対共捜査権(※4)を剥奪しただけでなく、国家保安法の廃止も試みています。
(※4)対共捜査権:主に北朝鮮とつながる間諜(スパイ)や韓国社会を揺さぶる工作を取り締まるための捜査。国情院がその前身の国家安全企画部の時からこの捜査権を濫用し、幾多の冤罪を作ってきたことから24年になってついに取り上げられ、捜査権は警察へと移った。
国家安保を脅かすスパイを捕まえるなということではないですか?
北朝鮮の不法な核武装とミサイルの脅威という挑発にもかかわらず、GPSの攪乱や汚物(ゴミ)風船にも、民主労総スパイ事件(※5)にも、巨大野党はこれに同調するだけでなく、むしろ北朝鮮の肩を持ってこれに対応するために孤軍奮闘する政府を傷つけるばかりでした。
(※5)17年から22年にかけて、韓国最大の労組の集合体である民主労総(全国民主労働組合総連盟)幹部3人が北朝鮮の指令を受け、労組活動に見せかけたスパイ活動を行ったという事件。今年5月に起訴され11月に一審有罪判決が出た。
北朝鮮の不法な核開発による国連の対北朝鮮制裁も先に解除すべきと主張します。
いったいどこの国の政党で、どの国の国会なのか分かりません。
検察と警察の来年度の特別業務経費、特殊活動費の予算は完全に0ウォンへと削減されました。
金融詐欺事件、社会的弱者を対象とする犯罪、麻薬捜査など民生侵害事件の捜査、そして対共捜査に使われる緊要な予算です。
麻薬やディープフェイク犯罪に対応する予算まで大幅に削減しました。
自分たちへの捜査に対する妨害を超えて、麻薬捜査、暴力団捜査のような民生事犯の捜査まで遮るものです。大韓民国をスパイ天国、麻薬の巣窟、組織暴力団の国にするということではないですか?
このような人々こそ国を滅ぼそうとする反国家勢力ではないですか?
そして自分たちの特権を維持するための国会予算はむしろ増やしました。
経済も危機・非常という状況です。
巨大野党は大韓民国の成長動力まで折り曲げようとしています。
共に民主党が削減した来年度予算の内訳を見ればよく分かります。
原発生態系(原子力発言に関する分野)への支援予算を削減し、チェコへの原発輸出を支援する予算はなんと90%も削ってしまいました。次世代原発開発に関連する予算はほぼ全額を削減しました。
基礎科学研究、量子、半導体、バイオなど未来の成長動力に関する予算も大幅に削減しました。
東海(日本海)ガス田試錐(ボーリング)予算、いわゆる「大王鯨」事業の予算も
事実上全額削減しました。
青年雇用支援事業、脆弱な階層の児童への資産形成支援事業、子供たちの育児支援手当にまで手を出しました。
産業生態系造成のための革新成長ファンド、強小企業育成予算も削減しました。
災害対策予備費はなんと1兆ウォン(約1050億円)を削減し、パンデミックに備えるためのワクチン開発と関連R&D(研究開発)予算も削減しました。
このように今の大韓民国は巨大野党の議会独裁と暴挙で国政が麻痺し、社会秩序が乱れ、行政と司法の正常な遂行が不可能な状況です。
国民の皆さん、
ここまでは国民の皆さんもよくご存知だと思います。
しかし、私が非常戒厳という厳重な決断を下すまで、これまでどうしても直接明らかにできなかった、より深刻な出来事がたくさんあります。
昨年下半期、選挙管理委員会をはじめとする憲法機関と政府機関に対して、北韓(北朝鮮)によるハッキング攻撃がありました。国家情報院がこれを発見し情報流出と電算システムの安全性を点検しようとしました。
他のすべての機関は、機関自身の参観の下で国情院が点検することに同意し、システムの点検が行われました。
しかし、選挙管理委員会は憲法機関であることを掲げ、頑強に拒否しました。
そうするうちに選管委の大規模採用といった不正事件が起こり、監査と捜査を受けることになり、国情院の点検を受けると一歩引いた態度を示しました。
しかし、全体のシステム装備のほんの一部分だけの点検に応じ、残りは応じませんでした。システム装備の一部だけを点検しましたが状況は深刻でした。
国情院の職員がハッカーとしてハッキングを試みると、いくらでもデータ操作が可能でありファイアウォール(セキュリティ)も事実上、無いに等しい状態でした。
暗証番号もとても単純で「12345」といったものでした。
システムセキュリティ管理会社も、非常に小規模で専門性を著しく欠く会社でした。
私は当時、国情院の報告を受け大統領として衝撃に陥りました。
民主主義の核心である選挙を管理する電算システムがこんなにでたらめなのに、どのように国民が選挙結果を信頼できますか?
選挙管理委員会も国情院の保安点検過程に立ち会い、見守りましたが、自分たちで直接データを操作したことがないという言い訳を繰り返すだけでした。
選管は憲法機関であり、司法府の関係者が委員を務めているため令状による押収捜索や強制捜査が事実上不可能です。
自ら協力しなければ真相究明が不可能です。
去る24年4月の総選挙を控えた時期にも、問題のある部分に対する改善を求めましたが、きちんと改善されたかどうかはわかりません。
それで私は今回(非常戒厳の際)、国防長官に選管の電算システムを点検するように
指示したのです。
最近、巨大野党の共に民主党が自分たちの不正を捜査し監査するソウル中央地検長と検事たち、憲法機関である監査院長を弾劾すると言った時、
私はもうこれ以上、ただ見守るわけにはいかないと判断しました。
何か動かなければならないと思いました。
彼らはもうすぐ司法府にも弾劾の刃を突きつけることが明らかでした。
私は非常戒厳令発動を考えるようになりました。
巨大野党が憲法上の権限を濫用し、違憲的な措置を繰り返しましたが、私は憲法の枠内で大統領の権限を行使することにしました。
現在の亡国的な国政麻痺の状況を、社会の攪乱により行政・司法という国家機能が崩壊した状態と判断し戒厳令を発動するものの、その目的は国民たちに巨大野党の反国家的な悪事を知らせ、これを止めるよう警告するものでした。
そうすることで、自由民主主義憲政秩序の崩壊を防ぎ、国家機能を正常化しようとしました。
実際に12月4日の戒厳解除以降、共に民主党が監査院長とソウル中央地検長などに対する弾劾案を保留するとし、短時間の戒厳を通じたメッセージがある程度の効果がもたらしたと思いました。
しかし二日後に、保留すると言っていた弾劾訴追をそのまましてしまいました。
非常戒厳の名分をなくそうとする意味でした。
そもそも私は国防長官に、過去の戒厳とは異なり、戒厳の形を借りて昨今の危機状況を国民に知らせ訴える非常措置を取ると言いました。
そのため秩序維持に必要な少数の兵力だけを投入し、実際の武装はせず、国会の戒厳解除の議決があればすぐに兵力を撤収させると言いました。
実際に国会の戒厳解除の議決があるや国防部庁舎にいた国防長官を私の事務所に呼び、即刻兵力撤収を指示しました。
私が大統領として発令した今回の非常措置は、大韓民国の憲政秩序と国憲を壊そうとするのではなく、国民に亡国の危機状況をお知らせし、憲政秩序と国憲を守り回復するためのものです。
小規模であるものの兵力を国会に投入した理由も、巨大野党の亡国的な形態を象徴的に知らせ、戒厳宣言放送を見た国会関係者と大勢の市民が集まることに備え秩序維持をするためであって、国会を解散させたり機能を麻痺させようとするものではなかったことは自明です。
300人未満の実際に武装していない兵力で、あの広々とした国会の空間を相当な期間にわたって掌握することはできません。
過去のような戒厳をするためには数万人の兵力が必要であり、広範囲な事前の議論と準備が必要ですが、私は国防長官に対し、戒厳令発令談話放送で国民に知らせた後に兵力を移動させるよう、指示しました。
それで午後10時30分に談話放送をし、兵力投入も午後11時30分から0時を少し過ぎたところで行われ、1時少し過ぎに国会による戒厳解除決議を受け、直ちに軍の撤収を指示しました。
結局、兵力が投入された時間は1、2時間程度に過ぎません。
もし国会の機能を麻痺させようとしたならば、平日ではなく週末を期して戒厳を発動したはずです。
国会の建物に対する電力遮断や、断水措置をまず行ったはずですし、放送の送出も制限したはずです。
しかし、いずれも行いませんでした。
国会で正常に審議が行われ、放送を通じ全国民が国会の状況を見守りました。自由民主憲政秩序を回復し守護するため、国民に亡国的状況を訴えるやむを得ない非常措置を取りましたが、死傷者が出ないように安全事故の防止に万全を期すようにし、士兵(一般兵)ではなく、副士官以上の精鋭兵力だけを移動させたものです。
私は今回の非常戒厳を準備しながら、ひたすら国防長官とだけ議論し、大統領室と内閣の一部の人物には宣言直前の国務会議(閣議)で知らせました。
各自が担当する業務の観点から懸念があるという、反対意見の開陳も多かったです。
私は国政全般を見る大統領の立場から、現状況でこのような措置は避けられないと説明しました。軍の関係者たちは皆、大統領の非常戒厳発表の後、兵力移動の指示に従ったものであるだけに、彼らには全く間違い(違法行為)がありません。
そしてはっきり申し上げますが、私は国会関係者の国会への出入りを止めないようにし、これにより国会議員とたくさんの人波が国会の広場と本館、本会議場に入り
戒厳解除案件の審議も行われたわけです。
それでもなんとしてでも内乱罪に仕立て上げ、大統領を引きずり下ろすために、数多くの虚偽の扇動を生み出しています。
一体2時間で終わる内乱というものがありますか?
秩序維持のために少数の兵力をしばらく投入したことが、暴動だというのですか?
巨大野党が偽りの扇動で弾劾を急ぐ理由は何でしょうか?
ただ一つです。
巨大野党代表の有罪判決が迫るため(※6)、大統領の弾劾を通じてこれを回避し
早期に大統領選挙を行おうとするものです。
(※6)最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は現在、5つの裁判を抱えている。11月15日には公職選挙法違反に問われた裁判で一審判決があり、懲役一年・執行猶予2年が宣告された。11月25日には偽証教唆に問われた裁判でも一審判決があり、こちらは無罪が宣告された。有罪が確定する場合、李在明氏は被選挙権を剥奪されることからこう発言しているものと見られる。
国家システムを崩壊させてでも自分の犯罪を覆い隠し、国政を掌握しようとするものです。
これこそ国憲を紊乱する行為ではありませんか?
私を弾劾しようが捜査しようが、私はこれに堂々と立ち向かうつもりです。私は今回の戒厳宣布に関連し、法的・政治的ま責任問題を回避しないとすでに申し上げたことがあります。
私は大統領就任以来、これまで一瞬たりとも個人的な人気や大統領の任期、地位の保全に執着したことがありません。
地位を守る考えがあったならば、国憲を紊乱する勢力とあえて戦うこともありませんでしたし、今回のように非常戒厳を宣布することはなおさらなかったはずです。
5年の任期の座を守ることだけに執着し、国家と国民を無視することはできませんでした。
私を選んでくださった国民の意思を捨てることはできませんでした。毎日のように多数の力で立法の暴挙に明け暮れて、ただひたすら防弾(李在明の防御)にだけ血眼になっている巨大野党の議会独裁に対抗し、大韓民国の自由民主主義と憲政秩序を守ろうとしたのです。
その道しかないと判断し下した大統領の憲法上の決断であり統治行為が、どうして内乱になるのでしょうか?
大統領の非常戒厳宣布権の行使は、赦免権の行使、外交権の行使のような司法審査の対象とならない統治行為です。
国民の皆さん、
野党は今、私を重犯罪者に追いやり、直ちに大統領職から引きずり下ろそうとしています。
万一、亡国的な国憲紊乱勢力がこの国を支配するならば、どんなことが起こりますか?
違憲的な法律、セルフ免罪符の役割を果たす法律、経済を壊滅させる法律が国会を無差別に通過し、この国を完全に壊すでしょう。
原発産業、半導体産業をはじめとする未来の成長動力は枯死するでしょうし、中国産の太陽光施設が全国の森林を破壊するでしょう。
韓国の安保と経済の基盤である韓米同盟、韓米日協力は再び崩れるでしょう。
北韓は核とミサイルを高度化し、私たちの生活をより深刻に脅かすでしょう。
それするとこの国、大韓民国の未来はどうなりますか?
スパイが横行し、麻薬が未来世代を破壊し、組織暴力団が跋扈する、そんな国になるのではないでしょうか?
これまで国政麻痺と国憲紊乱を主導した勢力と犯罪者集団が国政を掌握し、大韓民国の未来を脅かす事だけはどんなことがあっても防がなければなりません。私は最後まで戦うつもりです。
国民の皆さん、
国政が麻痺する亡国的な非常状況の中で、国を守るために、国政を正常化するために大統領の法的権限をもって行使した非常戒厳措置は、大統領の高度な政治的判断であり、ただ国会の解除要求だけをもって統制することができます。
これが司法府の判例と憲法学界の多数意見であることを多くの方が知っています。
私は国会の解除要求を直ちに受け入れました。
戒厳発令要件に関して他の考えを持っている方々もいますが、国を救おうとする非常措置を、国を滅ぼそうとする内乱行為と見ることは、多くの憲法学者と法律家が
指摘する通り、韓国の憲法と法体系を深刻な危険にさらすことです。
私は問いたいです。
今あちこちで狂乱の剣の舞を踊る人々は、国がこの状態になるまでどこで一体何をしてきましたか?大韓民国の状況が危ぶまれ危機に瀕していると、全く考えなかったということですか?
公職者たちにお願いします。
厳重な安保状況とグローバル経済危機から国民の安全と民生を守ることに、揺るぎなく邁進してください。
国民の皆さん、
この2年半、私はひたすら国民だけを見つめながら自由民主主義を守り、再建するために不義と不正、民主主義を装った暴挙に立ち向かって戦いました。
血と汗で守ってきた大韓民国、私たちの自由民主主義を守る道で、皆一つになってくださるように心からお願いします。
私は最後の瞬間まで国民の皆さんと共に戦います。
短い時間でしたが、今回の戒厳令で驚いて不安を覚えたであろう国民の皆さんに
もう一度お詫び申し上げます。
国民の皆様に対する私の熱い(※)衷情だけは信じてください。
ありがとうございます。
(※熱いという言葉は、配布されたテキストにはなかった。現場で追加されたものと見られる)
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群馬県生まれの在日コリアン3世。1999年からソウルに住み人権NGO代表や日本メディアの記者として朝鮮半島問題に関わる。2015年韓国に「永住帰国」すると同時に独立。16年10月から半年以上「ろうそくデモ」と朴槿恵大統領弾劾に伴う大統領選挙を密着取材。17年5月に韓国政治、南北関係など朝鮮半島情勢を扱う『コリアン・ポリティクス』を創刊。20年2月に朝鮮半島と日本の社会問題を解決するメディア『ニュースタンス』への転換を経て、23年9月から再び朝鮮半島情勢に焦点を当てる『コリア・フォーカス』にリニューアル。ソウル外国人特派員協会(SFCC)正会員。22年「第7回鶴峰賞言論部門優秀賞」受賞。
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