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嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (文芸シリーズ) › Customer Reviews
4.8 out of 5 stars
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5.0 out of 5 stars『世界わが心の旅 プラハ 4つの国の同級生』(YouTube)と一緒に楽しむこと
ByM4RNGRon January 5, 2017
Format: Kindle版|Verified Purchase
米原万里といえばTBSの『ブロードキャスター』のコメンテーター。というイメージしか持っていなかった頃に、エッセイ『ロシアは今日も荒れ模様』を読んでその文章の上手さ、面白さに驚いたのを思い出す。当時、「テレビコメントよりも文章の方が良いな」と思ったような気がする(気のせいかも)。
そして、随分と久しぶりに米原万里の本を読んだ。今度は『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』。タイトルだけでは中身がまったく想像出来ないので、余程のきっかけがなければ恐らく手にすることもなかっただろう本である。
本書で登場するプラハのソビエト学校時代の親友3人は皆それぞれ国籍が違う。吉本ばななは「だれもに未来がいっぱいにあった頃の生命力いっぱいの空気」と書いたが、親友達とのエピソードからはまさにそんな空気に充ち満ちたソビエト学校時代が感じられる。米原がソビエト学校で過ごしたのはわずか5年。その後、4人は様々な運命に翻弄されながらそれぞれ別の人生を歩み、およそ30年の時を経て米原が親友立ちを求めて東欧各国を探し歩く…というストーリーである。
結局みんな子供時代に描いた未来は実現しなかったけど、30年ぶりに再開してみるとそれぞれ分別のある大人になっていて、それぞれの人生を生きていた。それは本書の元になったと思われるNHKの『世界わが心の旅 プラハ 4つの国の同級生』(YouTube)を見るとよくわかる。実際の映像でみる再開の場面は、ちょっとどこかよそよそしい。意外とみんなドライな大人だなぁと感じさせられる。でもそれはカメラが回ってるから当然のことであって、本書を読むと実はそうではないことがよくわかる。大人の装いの下には、ソビエト学校自体ど変わらぬ子供のままの姿が残っているのである。
尚、旧共産圏のリアルに興味をお持ちの方にもお勧めです。
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5.0 out of 5 stars貴重なエッセイ
ByMininoon June 12, 2016
Format: 文庫
1996年にNHKで放送された「世界わがこころの旅 プラハ4つの国の同級生」の旅の様子と、
収録後に改めて訪ねた時の事が描かれています。この番組はYoutubeで見れます。
共産党幹部の子供達なので、富裕層の生活が随所に描かれていますが、実体験をありのまま
書いてあるので、共産圏において庶民といかにかけ離れていたかが分かる貴重な生き証言です。
また、当時の特権階級の日常生活に関する証言集や資料が皆無に近いということもあり、
興味がある人には有益な本です。旧共産圏というこで、ダメもとで、米原さんが通った学校について
ロシア語、チェコ語と英語で情報を探しましたが、当時の様子を証言するものは見つかりませんでした。
文体は読みやすいですが、社会背景を知らないと理解できないので、Youtube で当時の情勢に関する
ドキュメンタリー番組と上述の「世界わがこころの旅」を見るのをお勧めします。
本の題にあるアーニャの祖国ルーマニアに関する記述は、「チャウシェスクの子供たち」という番組(動画)が
役立ちます。
私自身、97年にこの「プラハ4つの国の同級生」を、それから3年に渡り旧共産圏やボスニア内戦に関する
ドキュメンタリー番組を多数見て、語学に対する姿勢、ヨーロッパを含め、異国の見方に多大な影響を
受けました。そして現在、この本を読むたびに、自分が向き合う今のヨーロッパ、当時のヨーロッパと
それを見ていた頃の思いを重ね、考えさせられる物があります。ヨーロッパの情勢に興味がある人には
お勧めしたい一冊です。
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5.0 out of 5 stars共産主義国の世界を知るにはとてもよい教本です
ByAmazonカスタマーon April 5, 2017
Format: Kindle版|Verified Purchase
共産圏各国要人の子弟が集まる学校というとそれだけで何かの映画のようだが、
出身国の情勢があやうくなると、たちまちクラスメイトから
距離を置かれるなど、普通の学校とはまた違う苦労を強いられており、
ここにいる子供達は、否が応にも自分の生まれた国を背負いながらの学校生活を過ごしている。
3つのエピソードそれぞれのヒロイン達と著者が幼少時代に過ごした目線と、
30数年後著者と再開したときの目線で描かれている。
共産圏の時代の流れというものを、大人になったヒロイン達の姿を通して見ることができる。
ある者は人間の強さというものを教えてくれたり、またある者は
まるで母国に未練は無いというような、残酷な現実も突きつけてくる。
この本を読むと、民族というアイデンティティの根深さがわかる。
日本という島国で暮らしていると、「自分は日本人だ」という感情はほとんど沸かない。
せいぜい海外旅行に出た時にようやく自覚できる程度だ。
「民族感情は合理的に割り切れないから厄介なんだよ・・」
欧州や中東など、陸続きの国は争いが絶えないのも、こういった
「割り切れない事情」があるからだと思った。
「人類皆兄弟」という言葉が、いかに薄っぺらいかを痛感した。
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4.0 out of 5 starsアーニャが嘘つきだった訳
Byedward0812on February 1, 2017
Format: 文庫
エッセイストでありロシア語通訳だった、米原万里さんの少女時代のお話で、米原氏が通っていたチェコスロバキアのソビエト学校が舞台の作品。
日本人のマリ、ギリシャ人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤースナ、彼女たち4人は同じ学校に通うクラスメイトだった。国籍も民族も母国語もバラバラなのだが、彼女たちの絶対的な共通点は、親が各国の共産党員という事である。
作品はマリの友人3名分のエピソード3章で構成されている。プラハソビエト学校時代の出来事や、マリが帰国してからの手紙を通じた交流の様子。そして様々な理由によって音信不通になってしまうまでの経緯と、大人になってから友人たちを探す旅の様子が綴られている。
音信不通となった大きな理由は、社会主義大国だったソ連と中国の対立、ソビエト連邦の崩壊、そしてボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、などである。一部指導者の歪んだイデオロギーや、過剰な民族感情が罪のない人々を巻き込み、少女たちの人生を狂わせてゆく理不尽さにとても切ない想いがした。旅の結果については、ネタバレになってしまうので詳しくは書かないが、マリがヤースナを探しに紛争中のバルカン半島へ渡り、真相に迫るシーンは非常にスリリングだった。
そして、アーニャが嘘つきだったのは決して保身のためではなく、複雑すぎる体制や家庭環境からの自己防衛だったのではないだろうか、マリにもわかってほしかったと思う。
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5.0 out of 5 stars現代史を物語る得がたい体験の著者
Byリリーの面影on September 25, 2006
Format: 単行本
今年もさまざまな人の訃報に接し、感慨を持つことが多い。
その中でも一際、米原万理さんの訃報にはショックを受けた。
ご本人がまだ若いということもあるが、何よりロシア語通訳家として、確か旧ソ連解体前後のゴルバチョフ夫妻が国家要人として日本に来日した折にも寄り添い、その豪胆にして自然なさまにゴルバチョフ氏の強い信頼が感じられたし、TVを通して見るこちら側一般人としても、日本にこれだけ優秀な女性がいるのだな、としみじみ感じたものだからだ。
その後、メディアなどで活動するのも時折見かけたし、文筆でもその才能が広く認められていることを風の便りに知っていた。
前置きが長くなったが、その米原さんのこれはおそらく何らかの賞を受賞したエッセイで、3編の作品からなっている。
その3編は、米原氏が少女時代に過ごしたチェコスロバキア時代の旧ソ連学校の友人3人に関するエッセイである。その3人とも、米原さんの筆致によって実に個性的な親友たちとして生き生き描かれている。そして、その3人ともが旧東欧のソ連衛星国で、ソ連崩壊とともに国の激動の中に放り出されている。この作品は彼女ら3人の友人との学校時代のエピソードと、社会主義圏崩壊後に彼女たちの安否を訪ねる旅での出会いのエピソードで構成され、しみじみと感動的であり、時にドラマテックであり、また時には人間存在の不思議さも垣間見せる。ついでにいえば、日本ではなかなか知りえない大陸ヨーロッパ、特に中・東欧諸国の近代史トリビアを知る機会も得られる。
射殺映像がショッキングだったルーマニアのチャウセスク独裁後も、その後がどうだったのか伝わってこなかった部分がわかる。
自然体にして自由で、そして学問嫌いで女優になることを夢見たはずなのに、何故か女医になったギリシャ出身のリッツァ。祖国を離れ続けた結果として、強烈な愛国者になっていたにもかかわらず、英国人と結婚し、英国人として生き、次々と状況に合わせて生き直すルーマニア出身のアーニャ。そしてクールな英才にもかかわらず、卓越したユーモアセンスとヒューマニティを持つ旧ユーゴスラビア出身のヤスミンカ。
主人公のマリも含めて、激動の中、どのようにその状況を生き抜き、彼女たちの中の何が変わり、そして何が変わらなかったのか。考えてみれば、生まれて以来一般的な人々とは生活の趣が違う大使館職員子女という特殊な環境の中、客観的に見れば常に何らかの波にもまれ続けている。
その中でも3人が3人なりの個性を持っていて、惹き込まれる。
本書のタイトルはまさに生きる方便として嘘を自分の真実のようにして生きるルーマニア女性アーニャの話だが、この3話の中で著者、米原氏が一番尊敬し、思い入れが深いと思われるのが第3話「白い都のヤスミンカ」の主人公、ヤースナだろうと思うのだが。何故このヤースナ(ヤスミンカ)の話をタイトルに持ってこなかったのか。今は亡き米原さんの真意や如何に?という感じである。
その第3話はユーゴ内紛の戦火の中、NATOと米軍の介入で、人間の美しいと思う魂が時の進行と共に日々磨耗してきている。そんな歴史の残酷さに静かな怒りや哀しみが伝わってくる。だが、米原さんが少女時代に出会った友人たちとの記憶や経験は、余人に代えがたく大きく、羨ましいほど素晴らしい。その米原さんも若くしてこの世からいなくなったけれど、本の形でこの世に「記憶と人の物語」を残してくれた。
それはヤスミンカがプラハのソ連学校の教室で自国の歴史に対して冷静な視点で物語るように、この現代の断片を冷静に温もりをもって語り継ぐ。
過去にその時代の「現代」を物語った人々が居たように、米原万理さんも「現代」を物語った。そんな世界に友人を持つ語り部だったのだ、と改めて感心した。
ご冥福をお祈りいたします。
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5.0 out of 5 starsくるくると変わるイデオロギー社会の中で、翻弄されていく少女たちの人生
ByひでじろうVINE VOICEon March 19, 2013
Format: 文庫|Verified Purchase
大宅壮一ノンフィクション受賞作!なんと?この作者に、そんな骨太な作品書けるの?
そんな疑問から読み始めましたが、やられました、これはいいです。
物語は3部に分かれていて、それぞれ1人づつ、3人の少女が語られています。
まぶしいほどの思い出の数々の一方で、ソヴィエト支配の東欧での生活は緊張感に満ちたものでした。
対立する民族どうしのエゴや共産主義の矛盾。
でもその中で、思春期の少女たちのイノセンスをいきいきと描いています。
やがて泥沼の内戦状態に突入していく東欧。
くるくると変わるイデオロギー社会の中で、翻弄されていく少女たちの人生。
そして30年を経て、著者は3人に再会します。
彼女たちはどう生き、どう考え、どう変わったのでしょう。
最後の章ではもう感情移入してしまって、ヤスミンカを探してベオグラードの街を駆けずり回るあたりは、読んでて手がぶるぶるしました。
とても一生懸命で、素直な文章です。
読む前に、プラハの春についてくらいは、予習しておくといいでしょう。
題材は重いですが「魔女の1ダース」よりもさらに軽妙な語り口です。さらっと読めちゃいます。
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5.0 out of 5 starsエッセイを超えたレベルのエンターテイメント
ByHirouchTOP 1000 REVIEWERon August 1, 2017
Format: 文庫|Verified Purchase
実際はエッセイなんですが、読者に与える影響はその枠に収まりきりません。
良い小説のように話に物事の本質つく深みがあり、
テレビドラマのような気軽さは保ちつつ、
コミックのような時を忘れる中毒性を備え、
良い映画を観た後のような心地よい余韻に浸れます。
これらを全て持ちつつも教養は忘れない。恐るべし本です。
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5.0 out of 5 stars事実は小説より奇なり
ByАmаzоn力ス夕マレビュ一on November 22, 2012
Format: 文庫
旧友探しの過程が探偵小説のように面白い。
本書は大宅壮一ノンフィクション賞受賞とのことだが、単なるノンフィクション作品にとどまらず、
気宇壮大な歴史ミステリ小説とも言えるだろう。現在のようにインターネットが普及していたら
旧友探しはもっと容易になっていただろうが、その代わり物語としては迫力が薄れていたかもしれない。
もともとはNHK衛星第二テレビジョンの『世界・わが心の旅 プラハ 4つの国の同級生』という
1996年のドキュメンタリー番組に基づいて書かれた本なので、
本書を読んで面白いと思った人は題名で検索して動画も観るべし。
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