2019-02-20

世界が大きく動いても…朝鮮学校女子が演じた「等身大」:朝日新聞デジタル



世界が大きく動いても…朝鮮学校女子が演じた「等身大」:朝日新聞デジタル

世界が大きく動いても…朝鮮学校女子が演じた「等身大」


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宮崎亮 2019年2月16日08時00分

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Fullscreen【動画】大阪朝鮮高級学校3人の劇団=宮崎亮撮影


本番直前の3人。衣装はふだん校内で着ている民族服のチマ・チョゴリ=2019年1月24日、大阪市浪速区、宮崎亮撮影












 韓国と北朝鮮の首脳会談が報じられた昨年4月。大阪朝鮮高級学校(大阪府東大阪市)の体育館で全校生徒が会談の動画中継を見守る中、学校を抜け出した女子生徒たちがいた――。そんな物語を、同校の1年生の女子生徒3人が大阪市内の演劇大会で披露し、大人たちの劇団を抑えてベスト4に輝いた。

 1月24日、大阪市浪速区の劇場「インディペンデントシアター2nd」の暗い舞台に照明がともされ、チマ・チョゴリ姿の女子生徒が浮かび上がる。3人の演劇「ゾエアが満天の夜空」が始まった。登場人物は現実の自分たちと同じ、大阪朝鮮高級学校の1年生だ。「ゾエア」とはエビやカニの幼生のことで、どんなものにでもなれる3人の可能性を象徴している。

 主人公のルエ(全咲愛〈チョンソエ〉さん)は、幼なじみのリアン(崔智世〈チェチセ〉さん)にいつも素直な気持ちを出せない。リアンの相談相手になれる前向きなサフィ(鄭梨花〈チョンリファ〉さん)をうらやんでいた。そんなある日、ルエはリアンから突然、北海道への転校を打ち明けられる。

 リアンの引っ越し当日は全校で南北首脳会談の中継を見る日。だが、サフィはルエに、学校を抜け出してリアンが乗る飛行機を見送ろうと誘う。「歴史的な平和の瞬間をみんなで見るのと、その瞬間を飛び出すのと、大人になった時にどっちが思い出になるやろ?」

 走り出すサフィを、ルエもやがて追いかけ、叫ぶ。

 「世界が大きく動いても、小さな私たちはどうにもならない。どんなにお偉い人の偉業も、大切な友だちの笑顔に比べたらどうでもいいこと」

 「世界を揺るがす出来事なんて私たちにはくだらなくて、世界にとってくだらない私たちの小さな想いは、広い広い海の大空。私たちは誰も昇らない空を駆けのぼっていく。深海の星空に向かって」

 上演が終わると会場が大きな拍手に包まれ、涙をふく観客もいた。

 劇団の結成は昨春。言い出したのは崔さんだ。母と兄との3人暮らし。その母が病で倒れた小6の時、東大阪朝鮮初級学校で演劇を教わっていた金哲義(キムチョリ)さん(47)に誘われ、金さん主宰の劇団に入った。

 演劇は楽しかったが、中学ではなじめず、休み時間はいつも1人で本を読んでいた。「高校では何か、誰もやったことのないことをしたい」。中3の冬、同学年の全さんに高校で演劇部を作ろうと持ちかけた。全さんの親友の鄭さんも加わり、ともに大阪朝鮮高級学校に進学した。

 しかし、先生に相談しても部を作るのは難しいという。ならば、と「大阪朝高演劇部希望」を名乗り、5月から金さんの指導で稽古を始めた。金さんは、3人が等身大の自分を演じられる脚本を用意した。特に初心者の2人は、中学時代に朝鮮舞踊部で活躍できず、自信がなさそうに見えた。「周りと比較するんじゃなくて、等身大の自分を演じることで自分を知り、自分を肯定してほしかった」。

 3人は放課後に稽古を重ねた。けんかを繰り返しながら、互いに意見も言い合えるようになった。全さんは「前に出るのが怖くなくなった。友だちや、内気だった昔の自分に『私、こんなに楽しんでるよ』って言いたい気持ちです」と話す。

 3人が出た演劇大会「30GP(サーティージーピー)」は8劇団のトーナメント。昨年2~10月に開催された30分短編作品の上演企画に参加した55劇団の中から選ばれた。二つの劇団が交互に上演し、観客の投票が多い劇団が勝ち上がる。勝ち上がった際に演目を変えても構わないが、今回はいずれの劇団も同じ作品で通した。

 3人の1回戦突破が発表されると、崔さんと鄭さんは目を見開いて喜んだ。全さんは両手で顔を押さえ、「ほんとにありがとうございます」と震える声であいさつした。2日後の準決勝は敗れたが、結成10年以上の劇団も残った中でのベスト4。劇場の支配人、相内唯史さん(41)は「未成年のみの劇団は唯一で、ベスト8に食い込んだだけでもすごい。彼女たちにぴったりの脚本と真っすぐで新鮮な演技が、観客の心を打ったのでは」と話す。

 16歳の3人は、高校の仲間や同世代の在日コリアンにもみてほしいと願う。崔さんは話す。「自分たちって日本社会では特殊な存在。学校の先生からもよく、『君たちが次の同胞社会を担っていくんだ』と言われる。でも、それをあまり気負うんじゃなくて……」

 自分たちのリアルは高校生としての日常。友だちと机をくっつけて弁当を食べたり、けんかしたり、何かに打ち込んだり。「そういう瞬間、瞬間をベストを尽くして生きるってことが、大事なんかなと思います」(宮崎亮)

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Hiroshi Matsuura すばらしい試み … 高校生だから、未成年だから非力とは限らない。日本の高校生平和大使も「ノーベル平和賞」候補として承認された。また、韓国人の著名カメラマン権徹氏がとった「在特会」の新大久保でのデモに抗議し涙を流す日本人の女子高生の写真は、ヘイトスピーチ規制法の制定に大きな力があった。駆け引きを知らぬ日朝の少女たちの真心が天地を動かし、多くの人々を感動させている!

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