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風にそよぐ葦(上) (岩波現代文庫) (日本語)Paperback Bunko – 2015/6/17
by 石川 達三 (著)
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Product description
内容紹介
「君のような雑誌社は片っぱしからぶっ潰すぞ」――。開戦前夜から戦後の日本国憲法施行に至るまでを時代背景に、出版社・新評論社の社長の葦沢悠平とその家族の苦難を中心に描いた社会小説の名作。上巻では、41年9月第3次近衛内閣崩壊直前から横浜事件を核に、一連の言論弾圧とそれに振り回される人々の受難を活写する。(全2冊)
内容(「BOOK」データベースより)
「君のような雑誌社は片っぱしからぶっ潰すぞ」―。日米開戦前夜から戦後の日本国憲法施行に至るまでを時代背景に、出版社・新評論社社長の葦沢悠平とその家族の苦難を中心に描いた社会小説の名作。上巻では、四一年九月第三次近衛内閣崩壊直前から横浜事件を核に、一連の言論弾圧とそれに振り回される人々の受難を活写する。See all Product description
Product details
文庫: 496 pages
Publisher: 岩波書店 (June 17, 2015)
Language: 日本語
ISBN-10: 4006022638
ISBN-13: 978-4006022631
Release Date: June 17, 2015
: 5.8 x 4.2 x 0.9 inches
Average Customer Review: 5.0 out of 5 stars 1 customer review
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Customer reviews
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Cadmium yellow
5.0 out of 5 stars大人としての戦争体験を語る人達が去った今、戦後間もない1950年に書かれた本書は、小説であっても貴重な証言記録だと思う。January 8, 2018
Format: 文庫Verified Purchase
① 戦後70余年を経過した今日、戦争前夜・戦中・終戦直後の日本について当時の大人として語れる人は最早いないと思う。未だに戦争体験を語り継ぐ人達はいるが、多くは少年少女時代の空襲体験や勤労動員、学童時代の集団疎開など被害者体験である。それはそれで重要なのだが、他方、当時の大人達が当事者として戦争と国家に向き合い、従い、或いは従わされたのかを、同時代の作家が意識的に捉え、書き残そうとした事を知ることは、現在の当事者としての私たちにも無駄ではないだろう。
② 本書は、「新評論社」(岩波現代文庫の解説によれば中央公論社がモデル)の社長とその家族、長男の嫁の実家の開業医家族、社長の友人の外交評論家が、戦争の惨禍に翻弄される姿が軸になる。同時に「横浜事件」と呼ばれる神奈川県の特高警察による言論弾圧事件を絡めて進む(中央公論社、朝日新聞社、岩波書店などの関係者が、日本共産党の再建を謀議したと言う嫌疑(特高警察の捏造)で検挙され、激しい拷問により死者まで出した事件。『治安維持法と共謀罪』(内田博文著、岩波新書)など参照)。
③ 「新評論社」の社長は、海外留学経験を持つ穏当な自由主義者であるが、昭和の軍国主義教育を受けた次男は、学生時代から飛行機に憧れ、大学卒業後は直ちに海軍航空隊に志願し飛行将校になる。二人の相克は厳しい。漸く終戦を迎え、「新評論社」にも明るい未来が見えかけた時に、社長を迎えたのは共産党の指導を受けた労組による糾弾、さらには占領軍による公職追放であった。戦時下で当局との「妥協」を強いられつつも面従腹背の姿勢を貫き、編集長以下何人かの社員が逮捕され、自身も特高警察による取り調べを受けても屈しなかった社長の「妥協」が戦争協力とされたのだ。
④ 舞台となる家庭は、出版社社長と開業医であるから庶民ではない。戦前の愛国心教育の下では、庶民が客観的に政治や社会を見る目を持つことは難しい。著者の執筆意図を反映させる為には庶民の家庭は不適であったのだろう。
⑤ 新聞小説として、人物の描き方や筋の運びが、割り切って描かれており、文芸作品として見た場合に晦渋さに欠ける感もあるが、読み疲れないので上下二巻1,000頁超も苦にならない。
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