2017-12-22

LHR「在日朝鮮人問題」

LHR「在日朝鮮人問題」

   大阪府〇〇高校2年生 2003年1月23日(木)6限
LHR「在日朝鮮人問題」

*10月に洪昌守さん(ボクシングチャンピオン徳山昌守)のビデオを見て学習し、
在日朝鮮人問題について理解を深めました。
1年は、
映画「三たびの海峡」を鑑賞しました。


     在日朝鮮人への攻撃と
     「北朝鮮」拉致問題をどう考えるか


  去年9月に、日本の小泉純一郎首相が朝鮮民主主義人民共和国の首都ピョンヤン(平壌)に行って、同国のキム・ジョンイル(金正日)労働党総書記と会談し、「日朝共同宣言」に署名しました。その際、共和国側は、その政府機関の人がかつて1980年代までに日本人を日本国内から共和国へ拉致(らち。強制的に連れ去ること)したことを認めて謝罪し、また、そうして拉致した人のうち、すでに8人が死亡したことを明らかにしました。
 このことが報道されると、日本各地で、在日(ざいにち。日本にいること)朝鮮人組織や朝鮮学校に対して、日本人からの脅迫、いやがらせが相次ぎ、韓国・朝鮮人生徒へも暴言暴行が加えられました。また、日本の学校に通学している生徒の家にも、いやがらせ、脅迫の手紙が大量に送られました。本校の生徒の家にも、そうしたいやがらせの手紙が来ています。
  一方、その後、拉致された被害者5人が日本に帰国しましたが、今度は日本政府がその人たちを朝鮮民主主義人民共和国へは戻さないと決め、被害者とその子どもたちとが離ればなれになっています。これについては、日本国内にもさまざまな意見があります。
  今日のLHRでは、こうした現在の日本社会の状況について、どう考えればよいのか整理して、自分の考えを深めてほしいと思います。
  次の各項目のまとめをLHR委員を中心にみんなで読み、その後で話し合ったこと、考えたことをそれぞれのかっこの中に記入して、提出してください。

(1)「本国の「北朝鮮」が日本人を拉致するという悪いことをしたのだから、在日朝鮮人が何をされてもやむをえない」という意見について。
  ・この意見でいくと、「かつて日本は悪いことをしたのだから、日本人が何をされてもやむをえない」となります。また、「アメリカが悪いことをしたのだから、アメリカ人が何をされてもやむをえない」となります。日本は70万人以上の朝鮮人を日本へ拉致、強制連行した(第二次大戦後厚生省が調査してGHQに報告したところによれば、戦争中に朝鮮から日本へ強制連行された人の数は70万人ですが、実際にはもっと多いと考えられています。ただし、日本政府は、この拉致、強制連行は合法的なものであったと主張しています。)ので、日本人はそれこそ70万人以上拉致の仕返しされても当然だとなります。また、アメリカ人も昨年の9.11のような目にあって当然だということになるのではないでしょうか。
 ・ここでのポイントは、「国」と「個人」とは、違うということです。




  ・ホンチャンス(洪昌守)さんのホームページのBBS(掲示板)にもいやがらせ、脅迫の書き込みが殺到し、現在やむをえず閉鎖されています。



(2)「日本にはなぜ朝鮮人、韓国人が大勢住んでいるのか。また、朝鮮人と韓国人は、どういう違いがあるのか。韓国人・朝鮮人は日本に住まずに本国へ帰ったらよい」という意見について。
  ・1910年に日本にいた朝鮮人は1000人以下でしたが、第二次大戦が終わった年1945年には200万人を越えていました。なぜそんなに増えたのでしょう。



 ・1945年に戦争が終わった後、日本にいる朝鮮人の国籍はどうだったのでしょう。(ヒント……1952年はサンフランシスコ平和条約発効、1965年は日韓基本条約締結)
   1945~1952年  (    )のまま。
      1952~1965年  外国人となったが、正式の国籍は認められず(    )
          と記載。
      1965~現在    (   )として正式の国籍が認められるが(    )
          のままの人も多い
    従って、法務省の見解でも、在日朝鮮人の中の(   )籍と(   )籍には、元来日本側から見た違いはありません。

  ・現在の世界では、アメリカでもヨーロッパでも、外国から多くの人々に来てもらって社会を発展させようと競争しています。中国も、外国から多くの人や企業を呼び込んで発展しています。日本は「日本人だけ」でやっていくのがよいのでしょうか。また、日本人自身もどこへも行かずにやっっていけるでしょうか。外国の人が日本に大勢いることは、日本にとって悪いことでしょうか。



(3)「「北朝鮮」という国は「悪の枢軸」で、ひどい国だ。そんな国と仲良くすることはない。キム・ジョンイルは独裁者で、悪い指導者だから、倒さなければならない。」という意見について。
  ・世界の国で国際連合に加盟している国は191あります。最近では、スイスが加盟したことがニュースになりました。そのうち、「国連外交」を旗印にする日本国が国として認め、外交関係を持っている国は189あります。あとの2つは、どこでしょう。



 ・朝鮮民主主義人民共和国のなりたちを見てみましょう。なぜ国連にも加盟している国なのに、日本はその国を、国としても認めないような(戦争状態と同様の)扱い方をしているのでしょう。(フランスもドイツも国として認めています。国として認めていないのは、日本とアメリカとあといくつかの国です。)
 かつて、1910年に日本が韓国(1897年まで朝鮮、それ以後韓国)を滅ぼして植民地とした後も、独立戦争が絶え間なく続けられました。1930年代に朝鮮北部、中国との国境地帯を中心に独立戦争を闘い続けた人々がおり、そのリーダーの一人がキム・イルソン(金日成)です。日本側は多額の懸賞金をかけて彼らを捕殺しようとしましたが、失敗に終わりました。いったんソ連(現在のロシア)領に退いた彼らは、1945年に日本が敗北し朝鮮が解放されると朝鮮に戻りました。キム・イルソンの子どもキム・ジョンイルはその間に独立根拠地で生まれています。
 1948年、米ソ冷戦によって朝鮮が南北に分断されそれぞれ別の国ができる時、南にはアメリカから帰ったイ・スンマン(李承晩)が大統領となって大韓民国が建国され、北にはキム・イルソンが首相となって朝鮮民主主義人民共和国が建国されたのです。
 1949年から1953年の朝鮮戦争の結果、南北の対立は固定化し、北の朝鮮人民軍と南や日本を基地とするアメリカ軍(形式上は国連軍)は板門店で休戦会談を続けています。しかし、韓国の民主化運動が進み、2000年にはピョンヤンでの南北首脳会談が実現し、南のキム・テジュン(金大中)と北のキム・ジョンイルが握手しました。昨年の日本の小泉首相が日朝国交正常化交渉に踏み切ったのは、こうした背景があります。

 ・ですから、日本が朝鮮民主主義人民共和国と国交を結んでいないのはなぜですか。次から選んでみましょう。
    ①植民地として支配し、独立戦争で敵として戦った後始末をまだしていないから。
  ②核疑惑、テポドンや不審船の問題があるから。
  ③拉致問題があって拉致被害者の子どもが日本に来ていないから。
    ④飢饉が起こるなど、金正日の政治が悪いから。



  ・また、アメリカ合衆国が朝鮮民主主義人民共和国と国交を結んでいないのはなぜですか。次から選んでみましょう。
    ①朝鮮戦争で敵として戦った後始末をまだしていないから。
    ②核疑惑があるから。
  ③悪の枢軸だから。
  ④飢饉が起こるなど、金正日の政治が悪いから。


 ・朝鮮民主主義人民共和国について、ちょっとまじめに考えてみましょう。
  ①テポドンミサイル(1998年に朝鮮民主主義人民共和国で打ち上げられたロケットが、大騒ぎになりました。日本はロケットを打ち上げていませんか。アメリカはどうでしょう。どうして北朝鮮だけが大騒ぎになるのでしょうか。)


    ②核疑惑(朝鮮民主主義人民共和国で原子力発電所が何カ所かあり、そこで核兵器の原料となるプルトニウムが生産されるのではないかと、アメリカが指摘しています。日本は原子力発電所を何十も作って大量のプルトニウムを生産しています。アメリカはどうでしょう。また、世界でもっとも多くの核兵器をもち、「核兵器による先制攻撃」をすると常づね言っている国は世界でアメリカ合衆国だけです。)



  ・アメリカ合衆国がイラクを攻撃する戦争が目前に迫っていると言われます。  アメリカ合衆国は現在、イラクのフセイン大統領は大量破壊兵器を隠しているので、世界の平和を守るためイラクを攻撃して、フセイン政権を倒さなければならないと主張しています。
  アメリカでは2000年に大統領選挙でブッシュ大統領が選ばれましたが、その前、クリントン大統領の時には、大統領が朝鮮民主主義人民共和国を訪問する計画が実現するところまで話し合いが進んでいました。現在のようにイラクや朝鮮民主主義人民共和国を「悪の枢軸」とする政策は、ブッシュ大統領になってからのものです。そうした政策は、昨年の9.11のニューヨーク世界貿易センタービルへのハイジャック航空機の突入以来、激しさを増しています。
  しかし、アメリカがフセイン政権を倒そうとするのなら、フセイン政権もアメリカを攻撃する権利は持っていることになり、ただ、軍事力の強いか弱いかだけが問題どということになります。金正日政権についてはどうでしょう。



(4)いずれにしても、問題は、私たちがこれからどのような社会を作っていくのかという問題と関わってきます。どうすることが私たちの社会にとってほんとうに一番得になるのでしょうか。自由に考えてみましょう(この場合、私たちとは、日本に住むすべての人で、外国籍の人などを含みます)。



(5)拉致被害者とその家族が、ほんとうに望んでいることは何でしょう。
  ①日本の国が北朝鮮に仕返しする。②北朝鮮に攻め込んで、子どもを取り戻す。
 ③アメリカが日本の代わりに北朝鮮をやっつけてくれる。
 ④拉致問題の真相解明を実現し、国交が結ばれて自由に行き来できる。
    

No comments: