朴裕河様
(CC 朴世鎮様 BCC 呉文子様)
先にお送りいただいた『法廷での1460日』、ようやく読み終えました。韓国語はわかりやすかったのですが、途中で何度か挫折して読みなおしたりしていたものですから。これを読んだことで、『帝国の慰安婦』で朴裕河さんが言おうとなさったことが、よりはっきり理解できたように思います。
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まず、二審の判決文で判事が
『帝国の慰安婦』は「日本軍によって強制的に連れていかれ性奴隷になった朝鮮人慰安婦」とは異なる慰安婦像を示している。
そのため「自発的売春婦だった日本人慰安婦とは異なる、性奴隷朝鮮人慰安婦」という、わが国社会と国際社会が共有している認識とは異なる認識を読者が持つようにする可能性がある。……著者の認識を虚偽と断定する理由は国際社会の認識こそがもっとも正しい認識であるからだ。
とあるのを見て、思わず笑ってしまいました。その後、これは深刻だと感じました。
日本でもかつて
久米邦武 1892年「神道ハ祭天ノ古俗」という論文のため、帝大教授職を追われる。
津田左右吉 1940年 古事記・日本書紀の記述を「神話」としたことに対して、「日本精神東洋文化抹殺論に帰着する悪魔的虚無主義の無比凶悪思想家」と糾弾され、著書の発売禁止、早稲田大学教授職を追われる。
美濃部達吉 1912年に発表した「天皇機関説」が1935年に問題視されて貴族院議員を辞職させられる
など、思想の自由を脅かす事件が多々ありました。社会主義思想に関してはもちろんですし、数々の宗教弾圧もありました。
今回の裁判はこれらに匹敵する「国家あるいは社会による思想統制」ですね。
思想の自由がない閉塞した社会というのが、韓国の現状なのでしょうか?
慰安婦問題に限って言えば、「日本軍に強制連行されたかわいそうな少女」のイメージが固定していて、それに反するものは排除される。
韓国社会に「あるべき慰安婦像、あるべき日本観、あるべき植民地朝鮮観、、、」があって、それ以外は受け付けない雰囲気が醸成されている。
そしてほとんどの庶民はそれを信じている。
---かつて子どもだった頃、(戦時中の教育を二年生夏まで受けました。)「ニッポン ヨイ国 キヨイ国 世界デヒトツノ神ノ国」と教えられるままに、それを信じ込んでいた幼い皇国少女だったわたしは、のちにそこから抜け出すのに大変時間がかかりました。
韓国にも「植民地時代すべての韓国人は日本に抵抗した」「韓国は思想・文化の面でたぐいまれな素晴らしい国だ」という認識が刷り込まれているようですね。
そして本書によれば、この状況は1990年代の民主化抗争勝利の後に始まったとか。現政権とその支持者は民主化抗争を闘った人たちで、それだけにその思想・信念は固い。
守られるべきは思想の自由、それがないところに発展はない。
厳しい孤独な闘いに挑んでいらっしゃることを感じます。
別件ですが、チマチョゴリの持つ意味、持たされている意味は?と考えます。あの少女像はなぜチマチョゴリ姿なのでしょうか? そう思うのは、日本各地の朝鮮学校で女子生徒の制服はたいていチマチョゴリ(スカートは少し違ったりします)、女教師もチマチョゴリ。それはいいのですが、男子生徒と男性教員は洋服姿です。女性にだけ『民族のシンボル」の役割が課されているように感じます。
「かわいそうな少女のイメージ」が漫画や映画で拡散しているようです。そうすると、わたしが気にしている子ども向け小説「순이」についても発言したほうがいいでしょうか?今度の「声」は韓国文学特集だそうで、そこに投稿すべきかどうか、悩んでいます。
一層のご健康とご健闘を、そして穏やかな日々もありますよう、願っています。 波多野淑子
追伸・「韓国ナショナリズムの起源」を少し読みました。鉄杭の話ではまた笑いました。
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波多野淑子さま
長い韓国語の本を読んでいただきありがとうございます。感想まで送っていただき恐縮です。
確かにそういう人たちが辞めさせられた過去がありましたね。あの時代は検閲もあったわけですからそれこそあの時代の残滓が韓国には残っているわけです。その最たるものは北朝鮮かと思いますが。
もう少し理解していただけたとのこととても嬉しく思います。本当におっしゃる通りで、情けない限りです。
「女性にだけ『民族のシンボル」の役割が課されているように感じます。」とおっしゃいましたがその通りです。実は昔より李恢成論の中でそういうことに触れたところ在日の女性たちから反発を受けました。不思議なことにフェミニストでも韓国には言われたくないと言うようなナショナリズムがあるのです。その先鋒に立っているのが金富子さんで、彼女は私を最初に批判した人でもあるわけで問題はつながっています。
“순이“論はぜひ投稿していただきたいです。
いずれ別途活字になるとしてもおそらく問題ないと思います。気にかかるようでしたら熊木さんに聞いて見られたらいいと思います。私はなんとなく力尽きた感がありますがこういう認識はどんどん発信していくべきだと思います。そうでない限り日韓はこれまで以上に遠い国となってしまうのでしょう。
それにしても波多野さんがそんなにお年をめされているとはしれませんでした。お若く見えたので。
朴セジンさんと共通の知人になったことにも不思議な縁を感じます。
朴裕河
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@parkyuha
·Apr 3
『韓国ナショナリズムの起源』が今日刊行され出ました。
20年前に出した「反日ナショナリズムを超えて」(日本版は2005年)の文庫本です。
タイトルを変え、長い序文を新に書きました。以下、序文からすこし抜粋しておきます。 韓国ナショナリズムの起源 (河出文庫)
河出文庫 ハ13-1
カンコクナショナリズムノキゲン
韓国ナショナリズムの起源
朴 裕河 著
安 宇植 訳
河出文庫 文庫 ● 352ページ
ISBN:978-4-309-46716-0 ● Cコード:0136
発売日:2020.04.07
定価1,078円(本体980円)
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この本の内容
目次・収録作品
目次
二〇年後の長い序文(2020年)
韓国語版 序文(2000年)
第1章 うたうナショナリズム
1 「鉄杭」事件を考える
「名山の脳天」に鉄杭
事実と史実、そして真実と伝説
帝国主義の本質を見失った「民族の精気抹殺」論
「正される」歴史とつくられる歴史
2 破壊と喪失の間——旧朝鮮総督府庁舎の取り壊し
抑圧される身体イメージ
取り壊しが物語るもの
未来をゆがめる過去の隠蔽
真の自尊心と「民族の精気」のために
3 「歴史」か「小説」か——李寧煕『うたう歴史』
「わが民族の優秀さを立証する」論理
「日鮮同祖論」——親日から反日へ
「他者」不在の他者論
4 「日本には学ぶべきものが何もない」という言説
フェミニストの女性差別
異なることは罪ではない
屈折した被害者意識としての怒り
「正常」という考え方
大工になりたい子供たち
日本糾弾と一九九〇年代
5 韓国人の「必読の小説」——金辰明の反日小説
『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』の侵略性
あおられた怒り
醜い日本人と格好いい韓国人
行方不明の「精神文化」——旧朝鮮総督府庁舎を取り壊して三年
韓国人必読の書
想像力の解放と想像力の貧しさ
6 教授たちの日韓方程式
「生まれつき」侵略的という日本観
農耕民族と騎馬民族
7 慎教授の反日レトリック
収奪か近代化か
独島(竹島)問題——「日本は喜び勇んで」のレトリック
漁業協定担当者の話
第2章 侵略する日本と利己的な日本人
1 「日本文化は卑しい」
「卑しい」文化からの侵略
日本映画の解禁と韓国映画の躍進
遠い国としての日本
文明の本質——移動と交流
2 「日本の謝罪」をめぐって
会談のたびに反省と謝罪があった
「妄言が飛び出すと元の木阿弥」
韓国は謝罪したのか
3 「日本は南北統一を望んでいない」という言説
「国家」という求心体
野望と歪曲
第3章 表象としての日本人
1 日本人と創造性
再創造としての模倣
2 日本は「刀の国」か
「刀=暴力=性」という図式
武の国と文の国
3 「技術」をめぐる考え方
技術移転をめぐって
4 「日本人は残忍」という言説
残忍さは日本に限らない
「いじめ」は日本から輸入されたのか
「冷たい」日本人
5 「裏表」と「狡猾」
韓国人も中国人も狡猾だった一〇〇年前
「島国」日本をどう見るべきか
6 日本観の原型『菊と刀』を批判する
7 日本文学を語る——『雪国』から大江健三郎まで
経済は時に文化を引っ張る
大江健三郎の「想像力」
「他者」「暴力」との向き合い方
『雪国』の二〇年後
8 日本文学を語る——「世界文学」の条件
「韓国文学は日本に立ち遅れていない」という主張
安部公房の衝撃
韓国文学が世界的レベルに遅れているとしたら
第4章 ナショナリズムとは何か
1 拡張主義のナショナリズム
「進出」なのか「侵略」なのか
民族主義が守るもの
排他性の起源
心の傷から回復するために
2 文学とナショナリズム
母国語を支える文学
金芝河の「民族精神」回復運動
民族の「固有性」について
檀君神話を考える
3 アイデンティティとは何か
民族意識の起源とアイデンティティ
個人として生きる
愛国心とは何か
4 歴史とは何か
美化される歴史
箕子朝鮮の歴史と天皇の歴史
理由を考えない教育
5 誇りとは何か
民族意識とハングル
選ばれるべき伝統
伝統になるまで
つくられる「文化」
自尊心について
6 過去であり続ける日本
開かれた心を求めて
「強大国」でなく「お隣さん」の日本と
エピローグ 243
解説 朴裕河さんの声 高橋源一郎
韓国の歴史認識がいかにナショナリズムに傾いたかを1990年代以降の状況を追いながら、嫌韓でもなく反日でもなく一方的な親日でもない立場で冷静に論理的に分析する名著。
『帝国の慰安婦』の著者!
高橋源一郎=解説!
「日本」を通してナショナリズムが本格的に台頭し始めた1990年代の韓国を冷静に鋭く分析した作品。
反日や嫌韓の論議が騒がしい近年、ベストセラー『帝国の慰安婦』の著者が、20年前に韓国で刊行した原本に「今」を問いなおす日本語版序文を新たに入れて文庫化。日韓問題を、「他者との出会い方」という視点から考え直す画期的な一冊。
日韓問題にうんざりしている読者のために、そして日韓問題の深みにはまらないために、私たちは『反日種族主義』のような本質主義を乗り超えて「他者との出会い方」をもっと真剣に考えたい。
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【著者】朴裕河(パク・ユハ)
ソウル生まれ。世宗大学国際学部教授。慶応大学文学部卒業後、早稲田大学大学院で日本近代文学を専攻。文学研究者としての仕事の傍ら日韓の間で起こっているさまざまな問題について考えてきた。著書に『和解のために』『ナショナル・アイデンティティとジェンダー』『引揚げ文学論序説』『帝国の慰安婦』など多数。
【訳者】安宇植(アン・ウシク)
1931—2015年。東京生まれ。桜美林大学名誉教授。著書に『評伝 金史良』、『天皇制と朝鮮人』など、訳書に尹興吉『エミ』『黄昏の家』、李文烈『ひとの子 神に挑む者』、申京淑『離れ部屋』など。
著者
朴 裕河 (パク ユハ)
ソウル生まれ。世宗大学日本文学科教授。慶応大学文学部卒、早大大学院で日本近代文学を専攻。韓国で漱石や大江の翻訳紹介をする。著書に『和解のために』、ベストセラー『帝国の慰安婦』など多数。
安 宇植 (アン ウシク)
1931-2015年。東京生まれ。桜美林大学名誉教授。著書に『評伝 金史良』、『天皇制と朝鮮人』など、訳書に尹興吉『エミ』、『黄昏の家』、李文烈『ひとの子 神に挑む者』、申京淑『離れ部屋』など。
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mountainside
ベスト50レビュアー
5つ星のうち5.0 韓国ナショナリズムの起源は脱植民地主義!
2020年4月6日に日本でレビュー済み
①韓国ナショナリズムの起源は、冷戦終結以後のグローバリズムに乗って対当したポスト・コロニアリズム(脱植民地主義)にあることを主張した書物である。
②『反日種族主義』における自国卑下の精神や韓国民にあるナショナリズムの精神をいずれも否定する。
③竹島(独島)領有権問題、従軍慰安婦問題、徴用工問題をめぐる日韓の対立は、ポスト・コロニアリズム(脱植民地主義)を契機に表面化したのであろうか?明らかに1910年以後における日本の韓国併合と植民地支配が世代間に継承され、反日感情として爆発したものでないか?
④従軍慰安婦問題や徴用工問題が政治的・外交的交渉によって解決済みの問題化であると日本側が主張しても韓国側は納得しない。解決済みの問題であることを感情的に認めないのである。この反日感情は、脱植民地主義を契機として吹き出したものではなく、日本の植民地支配から生じたものである。
⑤この反日感情が生まれる歴史的起源として、朝鮮は日本に進んだ大陸文化を日本へ伝える文化的掛橋の役割を果たしてきたこというある種の優越感が潜んでいる。優越した国(韓国)が劣等国である日本の植民地支配を受けたことが国民的恥辱であり、許せないという国民感情(韓国ナショナリズム)があるはずである。この国民感情が世代間にに継承されて事あるごとに反日感情として爆発するのではないだろうか?
⑥こうした反日感情は理性による合理的な和解・調停には馴染まないけれども、日本政府は理性による合理的解決を図るしかないのである。
反日感情の起源を探る本書はお勧めの一冊だ。
河出文庫 ハ13-1
カンコクナショナリズムノキゲン
韓国ナショナリズムの起源
朴 裕河 著
安 宇植 訳
河出文庫 文庫 ● 352ページ
ISBN:978-4-309-46716-0 ● Cコード:0136
発売日:2020.04.07
定価1,078円(本体980円)
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この本の内容
目次・収録作品
目次
二〇年後の長い序文(2020年)
韓国語版 序文(2000年)
第1章 うたうナショナリズム
1 「鉄杭」事件を考える
「名山の脳天」に鉄杭
事実と史実、そして真実と伝説
帝国主義の本質を見失った「民族の精気抹殺」論
「正される」歴史とつくられる歴史
2 破壊と喪失の間——旧朝鮮総督府庁舎の取り壊し
抑圧される身体イメージ
取り壊しが物語るもの
未来をゆがめる過去の隠蔽
真の自尊心と「民族の精気」のために
3 「歴史」か「小説」か——李寧煕『うたう歴史』
「わが民族の優秀さを立証する」論理
「日鮮同祖論」——親日から反日へ
「他者」不在の他者論
4 「日本には学ぶべきものが何もない」という言説
フェミニストの女性差別
異なることは罪ではない
屈折した被害者意識としての怒り
「正常」という考え方
大工になりたい子供たち
日本糾弾と一九九〇年代
5 韓国人の「必読の小説」——金辰明の反日小説
『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』の侵略性
あおられた怒り
醜い日本人と格好いい韓国人
行方不明の「精神文化」——旧朝鮮総督府庁舎を取り壊して三年
韓国人必読の書
想像力の解放と想像力の貧しさ
6 教授たちの日韓方程式
「生まれつき」侵略的という日本観
農耕民族と騎馬民族
7 慎教授の反日レトリック
収奪か近代化か
独島(竹島)問題——「日本は喜び勇んで」のレトリック
漁業協定担当者の話
第2章 侵略する日本と利己的な日本人
1 「日本文化は卑しい」
「卑しい」文化からの侵略
日本映画の解禁と韓国映画の躍進
遠い国としての日本
文明の本質——移動と交流
2 「日本の謝罪」をめぐって
会談のたびに反省と謝罪があった
「妄言が飛び出すと元の木阿弥」
韓国は謝罪したのか
3 「日本は南北統一を望んでいない」という言説
「国家」という求心体
野望と歪曲
第3章 表象としての日本人
1 日本人と創造性
再創造としての模倣
2 日本は「刀の国」か
「刀=暴力=性」という図式
武の国と文の国
3 「技術」をめぐる考え方
技術移転をめぐって
4 「日本人は残忍」という言説
残忍さは日本に限らない
「いじめ」は日本から輸入されたのか
「冷たい」日本人
5 「裏表」と「狡猾」
韓国人も中国人も狡猾だった一〇〇年前
「島国」日本をどう見るべきか
6 日本観の原型『菊と刀』を批判する
7 日本文学を語る——『雪国』から大江健三郎まで
経済は時に文化を引っ張る
大江健三郎の「想像力」
「他者」「暴力」との向き合い方
『雪国』の二〇年後
8 日本文学を語る——「世界文学」の条件
「韓国文学は日本に立ち遅れていない」という主張
安部公房の衝撃
韓国文学が世界的レベルに遅れているとしたら
第4章 ナショナリズムとは何か
1 拡張主義のナショナリズム
「進出」なのか「侵略」なのか
民族主義が守るもの
排他性の起源
心の傷から回復するために
2 文学とナショナリズム
母国語を支える文学
金芝河の「民族精神」回復運動
民族の「固有性」について
檀君神話を考える
3 アイデンティティとは何か
民族意識の起源とアイデンティティ
個人として生きる
愛国心とは何か
4 歴史とは何か
美化される歴史
箕子朝鮮の歴史と天皇の歴史
理由を考えない教育
5 誇りとは何か
民族意識とハングル
選ばれるべき伝統
伝統になるまで
つくられる「文化」
自尊心について
6 過去であり続ける日本
開かれた心を求めて
「強大国」でなく「お隣さん」の日本と
エピローグ 243
解説 朴裕河さんの声 高橋源一郎
韓国の歴史認識がいかにナショナリズムに傾いたかを1990年代以降の状況を追いながら、嫌韓でもなく反日でもなく一方的な親日でもない立場で冷静に論理的に分析する名著。
『帝国の慰安婦』の著者!
高橋源一郎=解説!
「日本」を通してナショナリズムが本格的に台頭し始めた1990年代の韓国を冷静に鋭く分析した作品。
反日や嫌韓の論議が騒がしい近年、ベストセラー『帝国の慰安婦』の著者が、20年前に韓国で刊行した原本に「今」を問いなおす日本語版序文を新たに入れて文庫化。日韓問題を、「他者との出会い方」という視点から考え直す画期的な一冊。
日韓問題にうんざりしている読者のために、そして日韓問題の深みにはまらないために、私たちは『反日種族主義』のような本質主義を乗り超えて「他者との出会い方」をもっと真剣に考えたい。
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【著者】朴裕河(パク・ユハ)
ソウル生まれ。世宗大学国際学部教授。慶応大学文学部卒業後、早稲田大学大学院で日本近代文学を専攻。文学研究者としての仕事の傍ら日韓の間で起こっているさまざまな問題について考えてきた。著書に『和解のために』『ナショナル・アイデンティティとジェンダー』『引揚げ文学論序説』『帝国の慰安婦』など多数。
【訳者】安宇植(アン・ウシク)
1931—2015年。東京生まれ。桜美林大学名誉教授。著書に『評伝 金史良』、『天皇制と朝鮮人』など、訳書に尹興吉『エミ』『黄昏の家』、李文烈『ひとの子 神に挑む者』、申京淑『離れ部屋』など。
著者
朴 裕河 (パク ユハ)
ソウル生まれ。世宗大学日本文学科教授。慶応大学文学部卒、早大大学院で日本近代文学を専攻。韓国で漱石や大江の翻訳紹介をする。著書に『和解のために』、ベストセラー『帝国の慰安婦』など多数。
安 宇植 (アン ウシク)
1931-2015年。東京生まれ。桜美林大学名誉教授。著書に『評伝 金史良』、『天皇制と朝鮮人』など、訳書に尹興吉『エミ』、『黄昏の家』、李文烈『ひとの子 神に挑む者』、申京淑『離れ部屋』など。
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5つ星のうち5.0 韓国ナショナリズムの起源は脱植民地主義!
2020年4月6日に日本でレビュー済み
①韓国ナショナリズムの起源は、冷戦終結以後のグローバリズムに乗って対当したポスト・コロニアリズム(脱植民地主義)にあることを主張した書物である。
②『反日種族主義』における自国卑下の精神や韓国民にあるナショナリズムの精神をいずれも否定する。
③竹島(独島)領有権問題、従軍慰安婦問題、徴用工問題をめぐる日韓の対立は、ポスト・コロニアリズム(脱植民地主義)を契機に表面化したのであろうか?明らかに1910年以後における日本の韓国併合と植民地支配が世代間に継承され、反日感情として爆発したものでないか?
④従軍慰安婦問題や徴用工問題が政治的・外交的交渉によって解決済みの問題化であると日本側が主張しても韓国側は納得しない。解決済みの問題であることを感情的に認めないのである。この反日感情は、脱植民地主義を契機として吹き出したものではなく、日本の植民地支配から生じたものである。
⑤この反日感情が生まれる歴史的起源として、朝鮮は日本に進んだ大陸文化を日本へ伝える文化的掛橋の役割を果たしてきたこというある種の優越感が潜んでいる。優越した国(韓国)が劣等国である日本の植民地支配を受けたことが国民的恥辱であり、許せないという国民感情(韓国ナショナリズム)があるはずである。この国民感情が世代間にに継承されて事あるごとに反日感情として爆発するのではないだろうか?
⑥こうした反日感情は理性による合理的な和解・調停には馴染まないけれども、日本政府は理性による合理的解決を図るしかないのである。
反日感情の起源を探る本書はお勧めの一冊だ。
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