有馬哲夫
有馬 哲夫(ありま てつお、1953年 - )は、日本の公文書研究者。 早稲田大学社会科学部・社会科学総合学術院教授。 専門は、メディア研究、アメリカ研究、日米放送史、広告研究、文化産業研究。
来歴[編集]
青森県生まれ。1977年早稲田大学第一文学部英文科卒業、1984年東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学(博士号未取得)。
その後、東北大学教養部講師、1988年助教授、1993年同国際文化研究科助教授、1997年早稲田大学社会科学部助教授、1999年教授、2004年9月より社会科学総合学術院教授[1]。2016年オックスフォード大学客員教授。
人物[編集]
マスメディア、とりわけ、その中心をなすに至った放送メディアが、現在の大衆文化・大衆社会をどのように作り上げてきたのか、その形成過程を歴史的に照射し、その今日的性格を明らかにする研究を行っている。
大学では、メディア論・メディア史を講ずる。
ミズーリ大学セントルイス校、マウント・ホリヨーク大学、国立台湾師範大学、オックスフォード大学、ベルン大学、ウェスタンシドニー大学の各大学の客員教授。メリーランド大学カレッジパーク校客員研究員。
研究[編集]
日米放送史の研究、近年とりわけアメリカの占領政策と日本のマスメディアの関係を明らかにする研究を行う。論文[2]を別の論文の冒頭で[3]、「日本へのテレビ導入は、(中略)アメリカ合衆国上院外交委員会、アメリカ対日協議会、アメリカ南西太平洋陸軍心理戦局[4]の支援のもとに行われた」と総括している。
第二次世界大戦後、被爆国としての体験から原子力利用への拒否感が根強かった日本へ、原子力産業の売り込みをはかるべく展開された「原子力の平和利用」を実現するための「親米」的世論形成の仕組みをはじめ、今日まで尾を引くことになる、原子力発電の導入に至る経緯など、戦中~戦後にまたがる歴史の舞台裏について「再検証」を進め、これまで語られてきた通説を覆す研究を行っている[5]。
こうした対日戦略の実態について調査するため、夏休み等を利用し海外渡航し、ワシントンのアメリカ国立公文書記録管理局、ロンドンのイギリス国立公文書館などに出向き、精力的に歴史資料の発掘作業を行っている。長年にわたる一連の研究により、従前の戦後史・外交史では、ほぼ手つかずであった外交とメディアの知られざる関係史を起点に、戦後の『裏面史』に光を当てる発見がなされている[6][7]。
著書[編集]
単著[編集]
- 『テレビの夢から覚めるまで ―アメリカ1950年代テレビ文化社会史―』国文社、1997年
- 『デジタルメディアは何をもたらすのか ―パラダイムシフトによるコペルニクス的転回―』国文社、1999年
- 『ディズニー千年王国の始まり ―メディア制覇の野望―』NTT出版、2001年
- 『ディズニーとは何か』NTT出版、2001年
- 『ディズニーランド物語 ―LA-フロリダ-東京-パリ―』日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年
- 改訂版『ディズニー ―五つの王国物語―』宝島社新書、2009年/宝島社文庫、2009年
- 『ディズニー「夢の工場」物語』日経ビジネス人文庫、2003年
- 『ディズニーの魔法』新潮新書、2003年
- 『ディズニーとライバルたち ―アメリカのカートゥン・メディア史―』フィルムアート社、2004年
- 『中傷と陰謀 ―アメリカ大統領選狂騒史―』新潮新書、2004年
- 『日本テレビとCIA[8] ―発掘された「正力ファイル」―』新潮社、2006年/宝島社文庫、2011年
- 『世界のしくみが見える「メディア論」 ―有馬哲夫教授の早大講義録―』宝島社新書、2007年
- 『原発・正力・CIA ―機密文書で読む昭和裏面史―』新潮新書、2008年
- 『昭和史を動かしたアメリカ情報機関』平凡社新書、2009年
- 『アレン・ダレス ―原爆・天皇制・終戦をめぐる暗闘―』講談社、2009年
- 『CIAと戦後日本 ―保守合同・北方領土・再軍備―』平凡社新書、2010年
- 『大本営参謀は戦後何と戦ったのか』新潮新書、2010年
- 『ディズニーランドの秘密』新潮新書、2011年
- 『原爆と原発 ―「日・米・英」核武装の暗闘―』文春新書、2012年
- 『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』文春新書、2013年
- 『こうしてテレビは始まった ―占領・冷戦・再軍備のはざまで―』ミネルヴァ書房、2013年
- 『1949年の大東亜共栄圏 ―自主防衛への終わらざる戦い―』新潮新書、2014年
- 『「スイス諜報網」の日米終戦工作 ―ポツダム宣言はなぜ受けいれられたか―』新潮選書、2015年
- 『歴史とプロパガンダ ―日米開戦から占領政策、尖閣問題まで―』PHP研究所、2015年
- 『歴史問題の正解』新潮新書、2016年。上記を改訂(一部入れ替え)
- 『こうして歴史問題は捏造される』新潮新書、2017年
- 『原爆 ―私たちは何も知らなかった―』新潮新書、2018年
- 『NHK解体新書 ―朝日より酷いメディアとの「我が闘争」―』ワック・新書判、2019年
- 『日本人はなぜ自虐的になったのか ―占領とWGIP―』新潮新書、2020年
- 『一次資料で正す現代史のフェイク』扶桑社新書、2021年
- 『「慰安婦」はみな合意契約をしていた ―ラムザイヤー論文の衝撃―』ワック・新書判、2021年
訳書[編集]
- クリストファー・ノリス『脱構築的転回――哲学の修辞学』(野家啓一共訳、国文社、1995年)
- ジャネット・マリー(Janet Murray)『デジタル・ストーリーテリング――電脳空間におけるナラティヴの未来形』(国文社、2000年)
- エリック・マクルーハン、フランク・ジングローン編 『エッセンシャル・マクルーハン――メディア論の古典を読む』(NTT出版、2007年)
関連項目[編集]
脚注[編集]
- ^ 早稲田塾
- ^ 早稲田社会科学総合研究から 冷戦のメディア、日本テレビ放送網―正力マイクロウェーブ網をめぐる米国反共産主義外交・情報政策
- ^ ソシオサイエンス Vol,14 2008年3月 かくてテレビは台湾にもたらされた一知られざる日米合作-
- ^ 1953年1月30日、『対日心理戦略計画』をまとめた。本文28ページ、補遺も入れて50ページ。心理戦局文書所収。原題: "Psychological Strategy Plan for Japan"
- ^ 『特集ワイド:「国策民営」 日本の原子力、戦後史のツケ』 毎日新聞 2011年4月20日夕刊
- ^ 「今週の本棚・本と人:『昭和史を動かしたアメリカ情報機関』 著者・有馬哲夫さん」 毎日新聞 2009年4月5日
- ^ 『吉田茂側近がCIAに情報を提供 早大教授が米公文書発見』 共同通信社 2009年10月3日
- ^ 正力マイクロ波事件を指す
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