売国奴
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売国奴(ばいこくど)とは、売国の行為を行う者に対する侮蔑語である[1]。国賊(こくぞく)についても当項目で解説する。
目次
1概説
2売国
3「売国奴」という語の使用例
4日本における「売国」「売国奴」
5国賊
5.1日本での使用例
5.2フランスでの使用例
5.3中国での使用例
6脚注
7関連項目
概説[編集]
「国賊」が「自国の独立や尊厳、利益を故意(または過失)により傷つける者」、「非国民」が「思想・信条その他において異質であり国民の統一や一体性を乱すもの」という意味合い・ニュアンスであるのに対して、「売国奴」という言葉は「母国を外国に売って私益を図る者」を指している。定義は「その国民の価値観とイデオロギーに基づく部分が大きい」という点である。ある者から見てとれる「売国的行為」が、別の思想信条の為に奉仕する者の主観では「平和的行為」である場合は珍しくない。
例えば、ある国家が敵対国家の意向に遜ることは、ハト派の人にとっては「戦争を避け他国や自国の平和・安全を維持するための平和的行為」であっても、他方の人にとっては「自国に敵対的な国外勢力(軍産複合体、共産主義国、社会主義国家、母国を上回る国力の同盟国など)の意向に奉仕し、外患誘致を目的とする売国的行為」または「平和を騙る売国的行為」となる場合も多々ある。この場合、「敵対国家」がどこを指すかも立場により異なることが多く、現代日本を例にとると、日米安全保障条約や日米地位協定等により、日本の軍事的独立を損ない、米国軍人に特別な地位を保障する現状は、反米保守や一部左派から見ればアメリカに従属する「売国」以外の何物でもないが、保守本流から見れば「戦争を避け他国や自国の平和・安全を維持するための平和的行為」や「東アジアのパワー・バランスを保つ行為」となる。
売国[編集]
売国(ばいこく)とは、祖国に対するスパイ、国民に対する背信行為など、自国を害し敵国を利する利敵行為をおこない、私利私欲を満たし満足感を得ることを指す。
英語では、「Traitor」という訳語が充てられるが、原義は「反逆者」「非国民」である。ナチス・ドイツで反英プロパガンダ放送に従事したアイルランド人ホーホー卿(ウィリアム・ジョイス)は第二次世界大戦後、大逆罪に問われ処刑された。ナチスの占領地域では対独協力者(コラボラシオン)が戦後になって売国行為を行ったとして反逆罪などに問われた。中でもノルウェーのヴィドクン・クヴィスリングは売国奴の代名詞として著名であり、「quisling(英語版)」は売国奴を意味する単語として辞書に掲載されている。
同じく、東京で対連合国軍向けプロパガンダ放送のアナウンサーであった東京ローズ(アイヴァ・ダキノ)も戦後、反逆者を着せられ米国の市民権を剥奪された。韓国では日本統治時代に大日本帝国に同調する行為を行なった者たちは「親日反民族行為者」の一覧に掲載され、韓国併合は正しかったと主張して日本を弁護したりする人は親日派と呼ばれ差別されている。
現在の日本においては、外国と通謀して武力を行使させた者に適用される外患罪・外患誘致罪は死刑を科すという、日本の刑法でもっとも重い罪である。
「売国奴」という語の使用例[編集]
アメリカ合衆国の黒人差別における「アンクル・トム」のような存在から「自分は本来体制側にいるべき人物である」という思想(あるいはイデオロギー)を持って発せられることも多い。
戦前・戦中の日本では軍部も盛んに使ったが、政党政治家や共産主義者、社会主義者も政敵に対しこの言葉をしばしば使った。国家が民主主義体制、国民主義体制、全体主義体制、軍国主義体制にあるとき、この体制を崩し内乱や暴力革命を扇動する者に対して発せられることも多い。
第二次世界大戦後の日本においても、中曽根税制改革による法人税収・所得税収の激減による政府の債務膨張(「中曽根税制改革による税収毀損」)を「経団連の賄賂になびいて国庫を売り税金逃れを幇助した」と非難したり、聖域なき構造改革による日本の経済のアメリカナイゼーション、団塊世代の60歳年金生活入りによる経団連の人件費削減への協力が、「経団連から年金へ人件費負担がなすり付けられることに加担した構造改革利権」売国行為として批判されることがある。保守派が他方の政治家や団体、マスコミやその関係者に対して、しばしばこの語を用いる。
日本における「売国」「売国奴」[編集]
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言葉の純粋な意味としては、「国益」に反する行為を非難糾弾する場合に使われる。また、何をもって「国益」あるいは「売国」と定義するかは、その国の国民の価値観とイデオロギーに基づく。
幕末期、大老井伊直弼は、急進的な尊王攘夷論と開化を唱え始めた一橋慶喜派と、長州藩の吉田松陰、福井藩の橋本左内らを売国勢力と位置付けて処罰した(安政の大獄)。
明治時代、「征韓論」をめぐって政府が割れ、江藤新平、西郷隆盛らは政府を売国と位置付け兵をあげた(西南戦争)。そのため一部の佐幕派・大名、公家や幕臣からは元勲(薩長土肥)を売国奴として位置付けたり、幕臣や旗本、御家人でありながら明治政府に出仕して爵位を貰う勝海舟や榎本武揚らを二君に仕えた売国奴として糾弾する動きもあった(痩我慢の説、栗本鋤雲)。
日本での使用例[編集]
日本では、「反日・反国家・反国体」的な行為について「国賊」と見なす事がある。また、国体を否定する天皇や皇室への冒涜とされる行為も「国賊」と見なされる事がある。
また、その国の民衆や政治家が自身の見解やイデオロギーと異なる言動を行ったものに対して用いる場合もある。
フランスでの使用例[編集]
フランスではラ・マルセイエーズの4番に「国賊」が使われている。この曲はフランス革命期に作られたため、フランスでは反革命派が国賊と見なされる事があり、5番においては反革命・王党派であったフランソワ・クロード・ド・ブイエ将軍を名指しした歌詞があり、実質現在においても「国賊」扱いされている。ナチス・ドイツによるフランス占領期にはヴィシー政権をはじめとする多くの対独協力者が生まれた(コラボラトゥール)。連合軍によるフランス解放後、彼らは処罰や迫害を受けた(エピュラシオン)。
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