2020-05-25

「韓国が嫌いな日本人」を世界はどう見ているのか(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)

「韓国が嫌いな日本人」を世界はどう見ているのか(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)


「韓国が嫌いな日本人」を世界はどう見ているのか冷静に考えるべきときが来ている

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いろいろな事情が相まって、日本人の「嫌韓ムード」がかつてなく高まっている。むろん、日本なりの言い分はある。だが、それがどこまで他国の人々に理解されているのかといえば、はなはだ怪しいのだ。
「韓国に親しみない」が7割

年の瀬が迫った'19年12月24日、実に1年3ヵ月ぶりとなる日韓首脳会談を前に、ヤフーニュースで配信された「きょう『日中韓』『日韓』首脳会談」(TBSニュース)という記事は、「嫌韓」コメントであっという間に埋め尽くされた。

〈今更隔たりを埋める必要などない。もっと距離を拡げて断韓する方向で良い〉

〈嘘つきと話してもな……〉

韓国関連の記事に辛辣なコメントばかりが書き連ねられ、それを読んだ人々からたくさんの「いいね!」がつく。最近は見慣れた光景だ。

こうした「韓国が嫌い」という日本人の感情は、内閣府が年末に公表した「外交に関する世論調査」の結果にも如実に現れている。


韓国に「親しみを感じない」と答えた人は前年比13.5ポイント増の71.5%に上った。これは、'78年の調査開始以来、最悪の数字だ。

振り返れば、昨年は、長期にわたりくすぶっていた日韓の対立が一気に噴出し、激化した一年だった。

従軍慰安婦や徴用工などの歴史問題が経済にまで波及し、韓国側が日韓間のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の一方的な破棄を通告。
Photo by GettyImages

結局、アメリカの介入により破棄は失効直前で回避されたものの、両国政府間のギクシャクした関係が、民間レベルにも大きな影響を与えている。

「'65年の『日韓請求権協定』ですでに解決済みとなった事柄をいちいち蒸し返して、謝罪と賠償を要求してくる。いくらなんでもやり過ぎで、付き合いきれない」

こんな、日本人が韓国に抱いている不満は、世界からどのように見られているのだろうか。

日本人の気持ちもわかるが

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韓国の主張は「無理筋」だけど

イタリア人でロンドン大学キングス・カレッジの日本プログラム部長、アレッシオ・パタラーノ氏は、「ここしばらくの韓国政府の動きを見ると、日本人の間で反感が高まるのも無理からぬことだ」と語る。

「'15年に日本政府は韓国政府と慰安婦問題について『不可逆的な』という文言が入った合意に達している。韓国政府はこうした国家間の約束を、もっと重く受け止めなくてはいけません。

しかし、文在寅政権はそれらをなかったことにし、さらなる謝罪を要求している。しかもその内容には具体性がありません。日本の人々が『我々はいったいどうしたらいいのか』と途方にくれるのは仕方がないことです。

くわえて国際政治の観点から言えば、この2年間、韓国政府は多くのアンフェアな言動を重ねてきました。GSOMIAの一方的な破棄宣言だけではなく、'18年末には、韓国海軍が日本の自衛隊に対して射撃用の火器管制レーダーを照射するという事件もありました。

また、竹島の周辺で大規模な軍事演習も行っています。こうした態度は同盟国に対するものとしては、とうてい理解しがたい部分があります」

かつて『歴史の終わり』などが世界的なベストセラーになった日系アメリカ人学者、フランシス・フクヤマ氏も同様の指摘をする。

「右派の朴槿恵前政権時代に合意に至った状況が、大きく左派に傾いた文政権になると、すべて覆された。

そのうえ、まるで中国とアメリカの間のような輸出入をめぐる小競り合いが起きてしまった。韓国の内政の振れ幅の大きさ、一貫性のなさは、極めて難しい問題です」

昨今の文政権の主張が「無理筋」であること、そしてそれが日本人の感情を逆なでしていることについては、世界の識者たちの見解も一致するところなのだ。

アメリカは「どっちもどっち」




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日本人にも同意できない

ならば、彼ら海外の知識人たちがみな「韓国嫌いな日本人」の心情に全面的に同意しているかというと、ことはそう簡単ではない。

前出のパタラーノ氏は、「日韓関係をウォッチしている欧米メディアは、両国の問題に対して『どちらが正しい』と肩入れするような見方はしていない」と語る。
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「たとえば、比較的左寄りの『ニューヨーク・タイムズ』は、韓国側の目線にやや同情的です。

対して、『ワシントンポスト』は韓国政府の頑固なところにフォーカスしがちで、日本に対して同情的とは言わないまでも、日本国民に韓国へのフラストレーションがたまってきていることを客観的に報じています。

しかし、それはあくまで各メディアの政治的スタンスが反映されているだけのことであって、両国民の考え方に対しては極めてフラットな見方がなされています」


日本では「悪いのは韓国」という論調がすっかり定着し、「同盟国・アメリカも同じ意見だ」という言い方がしばしばなされる。しかし、実際のところは、「どっちもどっち」という見方をされているのだ。




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「ドイツに学んだら?」

慰安婦問題に、徴用工賠償問題、そして突然のGSOMIA破棄騒動――。日本人からすると、韓国の主張でここまでいろいろなことが重なっても「どっちもどっちの扱いなのか」と、いささか心外に感じる向きはあるかもしれない。

だが、英エコノミスト誌の元編集長、ビル・エモット氏は「日本の人々が、国家間の取り決めを壊す韓国の行動に対して怒りを感じるのは短期的にはよくわかります」としながらも、「長期的に見ると、やはり日本は日韓関係の緊張に、自分たちが考えているよりもっと大きな責任を担っていることを理解しなければいけない」と諭す。

「英国とアイルランドの間には、『英国人は決して覚えておらず、アイルランド人は決して忘れていない』という言葉があります。

支配していた国と支配を受けていた国の間には、超えられない溝が生まれるのです。そうして考えると、韓国が日本の支配から解放されてからの75年という長さは、記憶を薄めるのに長い時間とは決して言えません」

長年ドイツに住む作家の川口マーン惠美氏も続ける。

「侵略した側とされた側という日韓の関係は、ヨーロッパで言えばドイツとポーランドの関係によく似ています。

しかし、現在の両国間の関係は、日韓のそれとは似て非なる友好的なものになっている。ドイツはポーランドに対して、今でも戦争に対する罪と反省を忘れず、両国間で公式の会合がもたれる時には、かならずそのことへの反省について、何かしらの形で言及します。

歴史に対する反省を低姿勢に積み重ねてきたおかげで、ポーランド人がドイツに対して大規模なデモを行うような光景は見られません」

マーン氏の言う通り、'70年に西ドイツのブラント首相(当時)はポーランドを訪問し、ユダヤ人ゲットー記念碑の前で跪いて謝罪している。
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また、ドイツの教科書は戦争の歴史的事実を「いまを生きる自分たちの問題」として、繰り返し詳述している。




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「解決済みだから」は通用しない

前出のエモット氏も「日本の保守エリートは何十年にもわたり、日韓関係の緊張を解くことに失敗してきた」と言う。

「日本はドイツがポーランドにしたのと同じように、戦後に持続的な関係を築こうと努力するべきでした。

確かに日本は外交において幾度もの謝罪を重ねてきたかもしれません。しかし、いっぽうで長年政権を担ってきた与党・自由民主党の支持層には、古い考え方を持つパワフルな団体がいる。彼らの中には歴史問題に関して過去を書き換えようとしている人々もいます。

日本国内の見方は別として、海外からはそうした動きは不誠実なものとして捉えられています。日本の人々は自分たちの想像以上に旧植民地との関係は複雑で、センシティブな問題であることを自覚しなければいけないのです」

未来にわたって、永く謝罪を続けなければ和解することはできない――。欧米の標準から見れば、「解決済みだ」という理屈をもとに韓国に対して反感を抱く日本人の感情は「お門違い」ということになるのかもしれない。

だが、一度大きなうねりとなった日本人の嫌韓感情はとどまるところを知らない。それを象徴するように、雑誌の表紙には過激なタイトルが目立つようになった。

「韓国が消えても誰も困らない」(『WiLL』'19年11月号)

「韓国なんて要らない」(『週刊ポスト』'19年9月13日号)

こうした嫌悪には、もはや理屈を超えた執念さえ感じられる。韓国の「恨の文化」とはまた違った部類の、独特の感情だ。

米のシンクタンク、カーネギー・カウンシルの上級研究員、デビン・スチュワート氏がこの状況を嘆く。

「日韓を見ていて非常に悲しいのは、それぞれのリーダーが歴史的な問題を利用して愛国心をかきたて、国内問題から目をそらさせていることです。

一部のメディアもまた、これに加担して人々が喜ぶ記事を書こうとしている。お互いに、そんな記事で国民の偏見を助長しているのです。これは極めて悪いスパイラルだと言わざるを得ない。




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「大人」になるべきとき

こうした状況をふまえたうえで、米シンクタンクのCSIS(戦略国際問題研究所)環太平洋支部理事のブラッド・グロッサーマン氏は「日本人はこれ以上、感情面で韓国と同じテーブルにつかないほうがいい」と言う。

「日本人は韓国人にこれ以上敵として、嫌悪感を抱いてはいけません。韓国は国内の統治に問題が起きるとその憤懣が日本に向けて噴出しやすい国です。しかし、同時に日本と多くの利益と目的を共有するパートナーでもある。

相手と同じ行動をとるのではなく、『共通の基盤』を見出せるまで、辛抱強く超然とした態度をとるべきでしょう。攻撃的な言動をされたからといって、同じ行動をそのまま返すという安易な態度は慎むべきです」
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元米国防次官補のジョセフ・ナイ氏は「日本の人々は『嫌い』という感情に基づいて行動している場合ではない」と警鐘を鳴らす。

「これまでは、日韓の歴史的な論争が再燃するたびに、同盟国であるアメリカが水面下で状況を鎮静化し、緊張を緩和するために動いてきました。


しかし、最近両国間で起こった数々の衝突については、トランプ政権は自国のことにかかりっきりでうまく処理できていない。これは、極めて危機的な状況です。

なぜなら、若い独裁者が核兵器やミサイルを追求している北朝鮮と、政治経済の両面で台頭し続けている中国というスーパーパワーに対処するには、日米韓が協調し行動する以外に道はないからです。

いまこそ、過去を見るのではなく、未来にフォーカスしなければいけない。両国の国民は『大人』にならなければいけません」

世界の知性たちは、日韓の対立と、互いを嫌い合う感情の行く末を、極めて冷静に見つめている。

「週刊現代」2020年1月11日・18日合併号より




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